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Posted by ブクログ
私の中の『ハイジ』のイメージは長いブランコ、ヨーロヨーロヨーロレイヒ♪というアニメ主題歌、家庭教師のト○イくらいしかなくて、よく考えたら全然知らないな、ということで本書を手にとってみました。
読書中常に眼前に拡がっていたのはアルムの山の素晴らしい景色。スイスには行った事なんて無いですが、日に照り映える山々、美しく輝く草花や雪原、周りを歩き回るかわいい山羊の群れ。とにもかくにも風景描写が素晴らしくて素晴らしくて、読み終えてからアルムの景色を画像検索してみたらイメージ通り、いや、ひょっとしたら本書で描かれる風景の方が勝っているかもしれない、それくらいに素敵な描写が沢山なので心身が洗われるような読書体験でした。デトックス読書。
一方で、ハイジがフランクフルトの〈ゼーゼマン〉邸に逗留しているタームではアルムの自然を見ること・感じることが叶わないハイジの辛さが痛いほどに伝わってきて、まさかゼーゼマンがこんなにも重要な役割を果たすなんて微塵も思っていなかった私は彼に最大限の賛辞を送りたいと思います。ブラボー!(ちなみにですが、読む前までクララの父親がゼーゼマンという事すら知りませんでした…)
同じく、そのきっかけを作ってくれたハイジの父代わりにして後に友人となるお医者さん〈クラッセン先生〉も間違いなくMVPでしょう。ハイジとの語らいのシーンは間違いなく名場面。「山はいいもんだな。体も魂も癒されて、また元気に生きていこうという気持ちになれる」(p416)は本作を貫徹する象徴的な台詞。
また、意外だったのは山羊番〈ペーター〉の描写。気のいい純朴な少年でハイジの相棒というイメージだったが、作中では家が貧しく偏狭で思慮が浅い、排他的な気質の癖がある人物として描かれている。これが物語に深さを与えており、彼の改心と成長というのも見所のひとつだと思う。キリスト教的な救済の意味合いもあるのだろう。
祈り、救われる。
都合よく王子様が現れたりする類の物語ではない、敬虔さと清廉さを備えた紛れもない名作ではないかと思いました。
1刷
2024.10.11
Posted by ブクログ
古典新訳文庫の刊行作品はほぼ購入しているのだが、うれしいことの一つはいわゆる有名児童文学作品を新訳で出してくれていること。本書ハイジについても、児童書で読んだこともなければアニメ版も見ていないので、今回読んでやっとあらすじが分かった。
第一部は「ハイジの修業時代と遍歴時代」と題され(ゲーテの作品名が連想される)、母親と死に別れ母の姉の世話を受けてきたハイジが、周りから偏屈との評判を受けている祖父に預けられるところから始まる。素直で、山や花々の自然を愛し、山羊とも仲良くなるハイジは、おじいさんと心を通じ合わせ、また山羊番のペーターやそのおばあさんとも親しくなっていく。
アルプスの大自然の中で伸び伸びと育つハイジであったが、叔母の仲介で車椅子生活をしているお嬢様の遊び相手としてフランクフルトのお屋敷に行くことになる。そのお嬢様がクララ、父親がゼーゼマン氏。慣れないお屋敷生活にいろいろな失敗をしていたハイジであったが、空も花も見ることのできない窮屈な生活に圧し潰されていく。心配したゼーゼマン氏によりアルプスに送り返されたハイジは、元の生活に戻って健康を取り戻し、みんなと明るい生活を送ることができるようになった。ここまでが第一部。
第二部は「ハイジは習ったことを役立てる」。今度は、フランクフルトからゼーゼマン氏の友人のお医者さん、クララとおばあさん、そしてゼーゼマン氏と、ハイジのところを訪れる。その間には、ハイジを取られたように嫉妬心を感じたペーターの悪事などもあるが、クライマックス的にはクララが自分で歩けるようになった出来事を経て、ハッピーエンドへ。
アルプスとフランクフルトが対比的に描かれていて、それだけアルプスの下での生活がハイジにとって自然であったことが強調される。
また、ペーターのおばあさん、そしてクララのおばあさんとの会話により、ハイジが神様を理解し、感謝するところなどは、たぶん作者にとっては大きなテーマだったのだろうなと感じさせられた。
本書では、ルドルフ・ミュンガーの挿絵が多数収録されているが、アニメ版の丸っこくていかにも”かわいい”ハイジの顔かたちとの違いを見ることも面白いと思う。
Posted by ブクログ
【アニメにはない宗教的なメッセージ】
多くの方に親しまれているアニメ版のハイジは素晴らしい作品です。しかしながら、原作から削られてしまった部分にも、素晴らしい要素が盛り込まれています。それが宗教的な教えの部分です。
原作では、アニメ版以上にクララのおばあさんが重要な役割を果たしています。アルムへ帰りたいハイジに対し、クララのおばあさんが「神さまに何もかもお話しすること」を教えます。
それ以後、神さまに家へ帰れるようにお祈りするハイジですが、祈りはかなわず、お祈りすることをやめてしまいます。そんなハイジに、おばあさんは再び語りかけます。
神さまは、わたしたちが願ったことでも、ためにならないことであれば叶えてくださらない。どんなときでも祈り続ければ、やがてわたしたちにとって一番良いようにしてくださる。
このおばあさんのメッセージを受けたハイジは、再び祈るようになります。そして、ハイジの思想に大きな影響を与えることになります。
後にクララがアルプスを訪れ、歩けるようになった際、自分が長い間アルプスへ帰れなかったからこそ、クララがアルプスを訪れ、歩けるようになったことのだと考えます。つまり、ハイジの「家へ帰りたい」という願いを神さまがすぐに叶えてくださらなかったからこそ、一番良いようになったと悟ったのです。
ハイジやクララだけでなく、ペーターや、おじいさん、お医者さんたちもこの思想によって救われていきます。
この削られてしまった部分こそ、原作の最大のメッセージのように思います。
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