あらすじ
ホフマンは友人のコンテッサとフケーを誘い、それぞれ1編ずつ短編を創作し、『子どものメルヘン』として1816年のクリスマスに刊行、翌17年にはその第2巻を刊行した。なかでもホフマンの「クルミ割り人形とネズミの王さま」が代表作で、今は翻案のバレエがクリスマスの定番となるほど親しまれているが、刊行当時は子どもには複雑すぎて理解できないとされた。本書には1巻と2巻を集約、他に森の精霊に翻弄される話(コンテッサ「別れの宴」)、怪しい風体の男の甘言に乗せられて怖い目に遭う子どもの話(フケー「覗き箱」)など全6編を収録。/【目次】K・W・ザリーツェ=コンテッサ「別れの宴(うたげ)」/フリードリヒ・ド・ラ・モット・フケー「小さい人たち」/E・T・A・ホフマン「クルミ割り人形とネズミの王さま」/E・T・A・ホフマン「見知らぬ子」/K・W・ザリーツェ=コンテッサ「剣と蛇 八章からなるメルヘン」/フリードリヒ・ド・ラ・モット・フケー「覗き箱」/訳者あとがき
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Posted by ブクログ
ホフマンが同じドイツロマン派のコンテッサ、フケーを誘い、「子どものメルヘン」として創作した短篇を作家ごとに二編ずつ収録したアンソロジー。子どもの頃クリスマスに、人形劇版をテレビで見て以来大好きな「クルミ割り人形」。去年はそのシーズンに再読しようと思っていたところにこのアンソロジーに出会い、翻訳違いでまた新しいクルミ割りに出会えて嬉しかった。
もうひとつ収録された、ホフマン作「見知らぬ子」もああ、ホフマンの世界だと感じられるクラシカルさと、少し怖くてドキドキしながらも先が気になるミステリーめいた展開の面白さがあり、大好きなお話がまたひとつ増えた。面白いポイントのひとつは長い章タイトル。
<子どもたちが森で出会った子どもについてブラーケル夫妻が言ったことと、その後その子に何が起きたか>長い。クマのプーさん以来に長い!目次に細かな章タイトルが掲載されていないので良かったけれど、章タイトルが目次にあったとしたらなかなかのネタバレを読んでしまうところもなんだか鷹揚な気もして嫌いじゃないというか、無邪気な呑気さに好ましさすら感じてしまう。でもクマのプーさんのネタバレ章タイトルはもっとくっきりとしたネタバレで爽快さすらあるので、気になる方は是非。
話は戻って「見知らぬ子」。ある兄妹と見知らぬ子が仲良くなった後に訪れる、命すら危険と思われるピンチを迎える場面で見知らぬ子は、「かわいそうな子どもたち__もうここには来られない。さようなら!どうか元気でいてね!」と去って行ってしまう。ええ!メロスでもウダウダ葛藤しながらがんばったのに諦めが早すぎるよ!がんばれよ!と心の声が木霊する中、結びの章で「ああ、そんなに嘆かないで、大事な友だち!いっしょに楽しく遊んだことを忘れたとでも思うの?もう気にかけてないとでも?」としれっと兄妹に呼びかける見知らぬ子。もうこちらは棒読みで台詞を読んでしまいましたよと思い乍ら、童話に突っ込みは無粋。(さんざん言った?)
でも安心してください、このあと1ページというところで幸せの超展開が待っています。そう、童話ですもの、幸せに暮らしました。ドントハレ!いや、お気に入りのお話です、本当に。突っ込みどころ満載なのも含めてお薦めです。伝わらないですか?…笑。
気を取り直して、大好きな「ウンディーネ」の作者フケーの「覗き箱」。もう最高!「ハーメルンの笛吹き」を上手く取り入れた作品で、「笛」に変わって物語へと誘導していくのは、アリストテレスが原理を考察していたとされる、小さな穴などを通して外部の光を取り込み、暗い壁などに反転した映像を映す「覗き箱(カメラ・オブスクラ)」。そしてその箱を操るのは、赤い靴のおじさん。赤い靴のおじさんと坊やの会話は「狼と七匹の子山羊」を彷彿させ、読み手を警戒させながらぐいぐいと物語に惹き込んでいく、流石のフケー。
ああもっとフケーの物語が読みたい!再読から初読まで、童話から感じる原点の面白さが詰まったアンソロジー、おすすめです!本当に。
Posted by ブクログ
ホフマンが友人のコンテッサとフケーを誘い、クリスマスに合わせて出版した二巻の物語集をまとめて文庫化した本。クリスマスに合わせて出版されたといっても、クリスマスが題材になっている物語はホフマンの『クルミ割り人形とネズミの王さま』(pp85-206)だけであり、私がこの文庫本を読んだ時期がたまたまクリスマスシーズンだったからなのか、ホフマンがすごいのか、サンリオが一九七九年に人形劇映画にしたものを観ていて馴染みがあったからなのかわからないけれど、やっぱり一番『クルミ割り人形と〜』がすごい。残りの五篇は騎士道物語(あるいはその影響を受けているメルヘン)であり、出版当時でも、時代とずれていたんではなかろうか。