池内恵のレビュー一覧
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購入済み
読んで下さい
メディアの皆様に是非とも読んでいただきたい一冊です。特に報道にたずさわっている方は是非是非読んで下さい。お願いします!これを読んでからというものニュースを見るたびにハラハラしております。
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Posted by ブクログ
ウクライナ戦争についてのジャーナリスト的な本はたくさんでていて、どれも役にたつものだが、これは一味違った視点を与えてくれるものであった。
東京大学出版会からの本で、主として東大の教授などが中心となって執筆した論文集。
ロシアの侵攻に対する国よって異なる考えがあることがさまざまな地域の専門家が冷静に分析してある。
複数の視点をもつこと、価値観を共有することが難しい多極的な世界をどう理解するか、どう捉えるか。
と言っても、価値ニュートラルな相対主義的な世界にとどまることは、今回の戦争は倫理的に許されないという感覚がある。
そのあたりをしっかり考えるのに役にたつ。 -
Posted by ブクログ
イスラム国等、中東情勢の混迷は続いている今日ですが、これは何も今始まった出来事ではなく、過去から続く問題が同じような形のまま現れているに過ぎないということを理解すること。それによらなければ、今日の状況を理解することが出来ません。その状況に「サイクス=ピコ協定」がどんな役割をはたしているのか。それを理解するためには、負の側面だけではなく、これが上手く利用され、この地域の混迷を一時凍結したことも知る必要があります。本書では、中東地域に渡る複雑な情勢について、ポイントとなる点を章ごとに詳しくまとめられています。一つ一つを丁寧に整理することにより、何が起こっているのかの見取り図が、かなり明るく見渡せる
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Posted by ブクログ
イスラーム国の衝撃というタイトルにあるように、何が衝撃だったかといえば、以下の部分に端的に描かれている。
「『カリフ制が復活し自分がカリフである』と主張し、その主張が周囲から認められる人物が出現したこと、イラクとシリアの地方・辺境地帯に限定されるとはいえ、一定の支配地域を確保していることは衝撃的だった」(14頁)。
さらに、「既存の国境を有名無実化して自由に往来することを可能にした点も、印象を強めた。既存の近代国家に挑戦し、一定の実効性を備えていると見られたからである」(14頁)とあるように彼らは「挑戦」をしたのだと、つまり新しい展望を切り開くかのように見えたこと。
そのように見えたことが重要 -
Posted by ブクログ
高校世界史で「帝国主義列強の理不尽の象徴」として学ぶサイクス・ピコ協定。旧オスマン帝国の領土を、そこに住む民族に全く配慮せず英仏(露)で線引きして植民地化。しかし著者はその捉え方は(間違っていないとしても)一面的と考える。
まず以って、サイクス・ピコ協定はそのままの状態ではほとんど発効していない。著者は、むしろそのあとのローザンヌ条約、セーヴル条約への短期間の変遷の意味に着目する。詳細は略するが、要は列強も(自らのエゴは当然ありつつも)何はともあれ「つかの間の平穏」をのぞんだのであり、その時々に優勢だった勢力の主張を追認する形で次から次へと条約を改定していったのだ(次々と支配権を確立した少数 -
Posted by ブクログ
サイクス=ピコ協定を銘打って、池内先生が書かれているので、面白そうと思い手に取りました。
冒頭で池内先生が指摘されているように、サイクス=ピコ協定は大国による密約で悪でしかないもの、と私も思っていました。悪ではないわけではないですが、オスマン帝国崩壊に際して、1つの「解決策」として考えられたものだという視点を本書によって得られました。
皮肉なことにアラブの春によって、再び中東が混迷する中、欧米が手をこまねいている間にロシアが進出してくるという、100年前と同じような構図ができている、というのもなるほど、というお話でした。
国民国家を前提とした国境の線引き、というのはかなり破綻した考え方だと最近 -
Posted by ブクログ
「オスマン帝国なんてぶっ潰して、あいつらの領土を山分けしよう
ぜ」とイギリスが持ち掛けて、「そりゃいい考えですな、旦那」と
フランスが合意したのが1916年のサイクス=ピコ協定である。
その協定の詳細な解説かと思いきや違った。私も現在の中東の
混迷を考える時、この協定を頭に置いているのだが、著者はこの
協定だけが本当に中央混迷の根源なのだろうかと疑問を提示し、
中東の歴史や地政学、複雑に交錯した民族模様や国家間の関係
を解説した書だった。
サイクス=ピコ協定単独ではなく、セーブル条約・ローザンヌ条約
の3つをセットとして考えなければならぬと著者は説く。もうここで
躓きま