池内恵のレビュー一覧
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9.11アメリカ同時多発テロ以降、各メディアで言われるように
なったイスラム過激派またはイスラム原理主義者という言葉。
世界各地で起きたテロのニュースを見ながらも、どこかで日本
には無関係だと思っていなかっただろうか。過去には日本人が
人質になったこともあった。殺害された日本人もいた。
だが、日本も無関係ではなくなったのがイスラム国による
邦人ふたりの拘束・殺害事件だったのではないか。
あの事件以降、イスラム国に関する書籍がいくつか出されて
いる。既にジャーナリストの常岡浩介氏の著作を読んでは
いるのだが、もう少し歴史的背景から知りたいと思って
選んだのが本書である。
感情を廃し、実に -
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イスラーム国の背景、来歴、特徴をイスラーム政治思想史と政治学の視覚から分析。イスラーム国について知るのに最適の一冊。
イスラーム国の衝撃のポイントして、全イスラーム教徒の政治的指導者になることを志向していることを示すカリフ制を宣言したこと、領域支配を行っていることを挙げている。
イスラーム国の成立・発展の背景として、思想的要因(グローバル・ジハード、アル・カイーダのフランチャイズ化)、政治的要因(アラブの春)を指摘している。
そして、イスラーム国には、独自のイスラーム思想を打ち出しているわけではないところに特徴があり、一定のイスラーム教徒から支持される可能性があるとしている。
日本とイスラーム -
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新しい職場であるNGOの先輩に薦められた本。現在のシリア難民の経緯を紐解く一助になる、サイクス=ピコ協定の経緯と詳細、そしてこの協定がいかに現在の中東情勢に影を落としているかを簡単に説明した本。セーブル条約による細かい民族や宗派へのトルコ領の割譲とローザンヌ条約によるトルコ国民主義を反映した国境線の策定を経て現在の中東があるが、情勢不安を抑制する手は果たしてあるのか。協定の話以外にも気になる三文字団体、PKK・PYD・YPG・KNCなどが簡単に説明されており助かった。領土を広げたいロシア、クルド独立を抑制するためシリア情勢を混沌のままにしておきたいトルコ、ISを抑えるために「テロ集団」を支援す
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トルコ・シリアを中心に、第一次大戦から現在までの中東情勢を「サイクス・ピコ協定」「露土戦争」「東方問題」「難民」等を切り口に読み解いていく。時系列に事情を追うよりもかえって個々の事象の連関をクリアに浮かび上がらせることに成功しており、地図の豊富さとも相まって理解しやすい。イスラエル史を思い切って切り捨てたのも奏功していると思う。何より140頁程度と短いのが良。
著者はサイクス・ピコ協定以前と現代の情勢の異同について、西欧のアラブ諸国に対する相対的優位性の低下を指摘しているが、現代では西欧側が様々な不都合を押し込めておいた中東という「壁」が決壊したとの表現は言い得て妙。人権保護が不十分と批判し -
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いゃぁ、難しい。いろんなことが複雑に絡み合って今があり、ISILを生み出したことはわかった。しかし、結びにも書いてあった通り、ISILは根絶することはできない。世界はこれから彼らとどのように共生していくんだろうか。
しかし、知りたいのはISILはどうしたいんだろうか?ほっといてくれ、なのか世界征服なのか?後者であれば抗戦すべきだし、前者であれば本当にほっといた方がいいんじゃ無い?とはいえ、ここまでグローバル化している世界で、全く付き合いを断つことは困難だろうね。
理解できないことを理解することをこれからの世界はできるんだろうか?
疑問しか思いつかない…
そして、結局のところISILの正体は書 -
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ISILにもそれなりの理屈があり、やっている行為は
到底私たちには容認出来ないものであるにしろ、
ある一定のイスラム教徒の人や、他宗教の新しい
政治原理やパワーバランスを求める人を惹きつけている
という事実は、今も変わっていない。
その、それなりの理屈とはどんなものなのか。
めまぐるしく変化するニュースの情報は、
センセーショナルな事象だけが残って
何がどんなふうに変化しているのか
誰がどうなっているのか
諸外国がどう噛んでいるのかが整理できないまま
置いて行かれる。
この本は出版されてから時間が経っているが
出版された時点までの、こういう疑問を明確に
してくれる。
イスラム教徒の人たち -
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昨年は日本人人質を殺害するなど話題になり、最近では報道の量も減ってきたが、いまだに中東の一角で猛威を振るっているいわゆる「イスラーム国」(この呼称にも議論はあるが、ここでは書名にもあるこの呼称で統一)について書かれた新書。「イスラーム国」に限らず、広く中東問題全般については、何度報道を見てもどうにも理解できない印象が強く、関聯する書物を繰り返し読んでおかなければとかねてから思っていたところ、第59回毎日出版文化賞特別賞受賞や「新書大賞2016」第3位の報が折よく聞こえてきたため、今回は本作をチョイスしてみた。読んでみるとなかなかわかりやすく、なるほどその高評価も頷けるわけであるが、とりわけよか
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出口治明氏の著作の中で勧められていたことから興味を持ち、読んでみた。
アラブ社会の根っこにある思想を、アラブ世界の著作物等を読み解く中で明らかにしていく。
イスラーム主義=楽観的(理想的社会と現実のギャップを埋める必要性を認めない)で排外的(イスラーム的なものと外来的なものを区別し、後者にアラブ世界の問題点を一方的に帰責する)なもの。
これらは、『コーラン』や『ハディース集』自体には、社会や制度に関する規範が具体的に示されていない一方、イスラーム教徒は、「イスラーム=教徒の全生活を規定する包括的システム」であると信じており、多様な要素を「イスラーム的」なものとして構想できることから生じてい -
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70億もの人間がいれば、一般人には理解できない異常な行動をとる人がいても不思議はないし、広い世界ではそういう人たちが組織化することもあるだろう。イスラーム国についてなんとなくそう思っていたが、事実はそんな単純な話ではない。
2011年の『アラブの春』から、2001年の9.11から、1991年の湾岸戦争から、さらには1919年の第一次世界大戦後からもその萌芽を見ることができる、連綿と続く中東の歴史問題の一面が、イスラーム国の登場だ。
大戦終結後、多くのアラブ諸国は不安定な王政からクーデターにより安定した軍制へ移行した。しかし、当然のように腐敗した軍制国家の一方は、資金の確保のため親米派となり、 -
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著者の池内さんは、長年、中東地域の政治や、
イスラームの政治思想を研究をされていて、、
なんて風に書くと、一見とっつきにくい感じですが、
非常にわかりやすく、丁寧にまとめられています。
当初、池袋のジュンク堂で探していたのですが、
新書にしては珍しく売り切れていて、地元で発見しました。
そういった意味では、ちょうど時節に合致しているのかなと。
その内容は、第1次大戦後の秩序形成からイラン革命、
湾岸戦争、9.11テロ、そして「アラブの春」。
この辺りをざっと俯瞰しながら、
イスラーム社会の質の変容をまとめられています。
キーワードは“グローバル・ジハード”、
明確な指導者を持たない -
Posted by ブクログ
アラブ社会の現代史を簡単にまとめながら、二つに分かれていった思想の潮流を読み解く。
非常に読みやすく、わかりやすかった。
こうして二つに分かれた思想は理どちらも行き詰まり、終末論や陰謀史観が出現する。
終末思想が人々の心をとらえたり、求められたりするようになった、要因を思想史として見る上でわかりやすく、興味深かった。
しかし、この閉塞感や袋小路に陥った理由を思想の問題で言い表すのは、限界があるように思えてならない。
閉塞的になる原因は、エジプト庶民の多くが感じている経済的事情にあるように思える。つまり一向に良くならない雇用問題や貧富の格差の増大などである。
それらはこの本が出てから10年たった