池内恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
イスラーム国の衝撃
著:池内 恵
出版社:文藝春秋
文春新書 1013
中東って、どうしてこうも複雑なのだろうと思ってしまう。
中東問題の遠因は、第一次世界大戦後の、サイクス=ピコ協定である。オスマン帝国をロシア、イギリス、フランスの3国で分割統治をするという密約である
年表がついていないので、行ったり来たりしなければならない。
■略年表
1919 サイクス=ピコ条約
1919-1922 トルコ独立戦争
1920 セーヴル条約 連合国とトルコとの講和条約、トルコは大幅な領土を失った
1922 アンカラ条約 トルコ・フランス間の条約 シリア国境をトルコに有利なように引き戻した
1923 ローザンヌ条約 新生トルコの領土確定、旧領の放棄、これにより、クルド自治区の構想は断念
1939 トルコ、フランスから、シリアのエイスケンデルンを割譲、領土回復
1952 エジプト ナセルのクーデター
1979 イランで、イスラーム革命で王政が打倒される
1979-1989 ソ連、アフガニスタン侵攻、アフガンのイスラム革命を武力弾圧
1991 湾岸戦争 冷戦の終結、米国の覇権へ
1989-2001 アフガニスタン政権崩壊、内戦化、タリバン台頭
2001-2021 米のタリバン打倒
2001 9.11事件、対テロ戦始まる
2011 アラブの春
2014 イスラム国(ISIS,ISIL)、シリア中央部を制覇
イスラム国を生み出した経緯はこうだ
ソ連のアフガン侵攻で義勇軍の中から現れたのがタリバンで、その中からでてきたのが、アルカイダ、そして、イスラーム国である
イスラム圏は、米ソの影響を排除すべく、ジハード(聖戦)を行っているのである
■イスラーム国の特徴
・カリフの復活、正統派カリフの後継者として、預言者ムハマンドの血族である、クライシュ族であることの証、ニスバ(由来名)にクラシーを名乗っている。正当な後継者である、イマームであることを自ら名乗っている。
・ムハマンドに従ってヒジュラに移民した者を「ムハージルーン」、そのための協力者「アンサール」
そのジハード論を展開している
・グローバル・ジハード:インターネットを駆使した布教活動を行っている
・正統アルカイダ、アルカイダ星雲(周辺の協力組織)、勝手にアルカイダ(共鳴者・組織)の3階層からなる
アルカイダの構造を継承している
・イスラムの終末論 ハーディスに記載されている終末論、その滅びが始まる町、ダービクを、終末の前兆として機関紙に掲げている
■イスラーム国台頭の背景
アラブの春の帰着と、オバマ政権の中東からの撤退による間隙
中央政府の揺らぎ
辺境地域における「統治されない空間」の拡大
イスラーム主義穏健派の退潮と過激派の台頭
紛争の宗派主義化、地域への波及、代理戦争化
トルコ、イラク、アフガニスタン、シリア、エジプト、それぞれの国情によって状況は複雑である
ユダヤ対アラブ、スンニ対シーア、親米対反米、クルド人の扱い等
イスラーム国は、国家として領土はうしなったものの、過激派としての組織は顕在であり、テロ活動は継続して実施されています。
アフリカを中心に、国際テロネットワークとして今も活動は続いています。
目次
1 イスラーム国の衝撃
2 イスラーム国の来歴
3 甦るイラクのアル=カーイダ
4 「アラブの春」で開かれた戦線
5 イラクとシリアに現れた聖域―「国家」への道
6 ジハード戦士の結集
7 思想とシンボル―メディア戦略
8 中東秩序の行方
むすびに
参考文献
ISBN:9784166610136
出版社:文藝春秋
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:780円(本体)
2015年01月20日 第1刷発行
2015年01月25日 第2刷発行 -
Posted by ブクログ
イスラムと言えばこの人、池内恵さんの著書。
シーア派とスンニ派の違いが何度見ても覚えられなくて手に取った。宗派の成り立ちから丁寧に書かれていてとても分かりやすかった。
国を越えて宗派の違いで集まり、中東の国や欧米も自国の有利な政権を確立させる為に手を出すのでなかなか平和が訪れない。
誰しも平和が良いと思うのだけど、主義主張が異なると仲良くという訳にもいかないのだろうか。出口が見えなくて暗澹とした気持ちにもなった。
今までイスラム世界の事は他人事だったのだがこれから移民として日本にもイスラムがやってくるのかなと思う。もう少しイスラム世界について解像度をあげたい。 -
Posted by ブクログ
ISは一見、信者からすると目から鱗のような新しいことを言っているのだと思っていたが「新しい思想を提示することへの無関心こそがイスラーム国の特徴」とあって、今まで知らなかった事実を本書に教えられた。
ムスリムが一般的に信じているか、あるいは強く反対はできない基本的な教義体系から要素を援用している。
ISの特徴はメディア戦略。ビデオにおいてはハリウッド並みの技術を持つ。映像における構成もしっかりしており、人々が目をそらさず、思わず見てしまうような演技、演出をしている。
表立って欧米人を使うことで話題性を作っている。組織が大きく見えがち、噂されがちのため、本当の実態はもっと小さい可能性がある。 -
Posted by ブクログ
現在もシリアを中心とした中東エリアは戦火と混乱の中にあり、悲惨な状況が終わる気配を見せていない。
この地域の争いの大元の原因は、オスマン帝国の衰退と解体に見いだせるが、そのときのサイクスピコ協定が諸悪の根源であるとの世の評判は的確ではない、と作者は述べている。
その理由をその後の歴史をたどりながら紹介説明していて、本書の題名だとそこが主眼に思えるが、実はその後の地域の状況や現在の考察が主体になっている。そして、現在の様相はオスマン帝国が崩壊した頃に状況が似てきたのではないかと心配し、大国の影響力など大きな違いもあるが、今後の激変を予想というか懸念している。
本書は、なんで中東はいつも戦争しているのか?と感心ある人向けのいい入門書になっていると思う。 -
Posted by ブクログ
[解決策にして病巣]合意の形成から百年を迎え、日本の一部メディアでも改めて取りあげられることがあったサイクス=ピコ協定。外部から中東地図を描いたとして批判されることが多々あるこの協定の形成経緯やその他の条約に触れながら、現在の中東政治を高所から俯瞰した作品です。著者は、中東研究の第一人者と評しても過言ではなくなってきた池内恵。
「複雑だ」と評される中東政治を、その複雑さをそのままにゴロンと読者に突きつけてきた作品。決して読みやすい読み物ではないですが、中東政治や幅広く国際政治に興味のある方にはぜひオススメ。明快かつ安易な解決策など、現在の中東には存在しないということが痛感できる一冊です。
〜当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題でもある。〜
一気に通読できる分量も☆5つ -
Posted by ブクログ
2014年6月以降、イラクとシリアの広範な領域を実効支配し、単なる「テロ組織」を超越した存在になろうとしているイスラーム国について、わかりやすく、論旨明快に叙述。
イスラーム国の来歴(アル=カーイダ「ブランド」からの発展)、思想(ジハード論=イスラームの基本的教義の援用。異教徒や、ジハードを阻害するイスラーム支配者との戦闘を、一般的義務とし、高い価値を見出す)、台頭の理由(「アラブの春」による辺境統治の弛緩、イラク国内における中央政府(シーア派)とスンナ派勢力の関係悪化、シリアの混乱、巧みなメディア戦略etc.)、今後の展望(イスラーム国を模倣したカリフ国宣言や近代国家の分裂の可能性、イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト等の地域大国による解決の可能性)…等々、様々な視点からの分析がなされている。
イスラーム国とは何か?何が問題なのか?をよく知ることのできる名著。