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Posted by ブクログ
ISは一見、信者からすると目から鱗のような新しいことを言っているのだと思っていたが「新しい思想を提示することへの無関心こそがイスラーム国の特徴」とあって、今まで知らなかった事実を本書に教えられた。
ムスリムが一般的に信じているか、あるいは強く反対はできない基本的な教義体系から要素を援用している。
ISの特徴はメディア戦略。ビデオにおいてはハリウッド並みの技術を持つ。映像における構成もしっかりしており、人々が目をそらさず、思わず見てしまうような演技、演出をしている。
表立って欧米人を使うことで話題性を作っている。組織が大きく見えがち、噂されがちのため、本当の実態はもっと小さい可能性がある。
Posted by ブクログ
2014年6月以降、イラクとシリアの広範な領域を実効支配し、単なる「テロ組織」を超越した存在になろうとしているイスラーム国について、わかりやすく、論旨明快に叙述。
イスラーム国の来歴(アル=カーイダ「ブランド」からの発展)、思想(ジハード論=イスラームの基本的教義の援用。異教徒や、ジハードを阻害するイスラーム支配者との戦闘を、一般的義務とし、高い価値を見出す)、台頭の理由(「アラブの春」による辺境統治の弛緩、イラク国内における中央政府(シーア派)とスンナ派勢力の関係悪化、シリアの混乱、巧みなメディア戦略etc.)、今後の展望(イスラーム国を模倣したカリフ国宣言や近代国家の分裂の可能性、イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト等の地域大国による解決の可能性)…等々、様々な視点からの分析がなされている。
イスラーム国とは何か?何が問題なのか?をよく知ることのできる名著。
Posted by ブクログ
うちの両親はカトリックで、毎週必ずではないにしても日曜日は教会でミサを受けるのが幼少期の常識だった。長じて、科学的思考に親和性を持ち、SFなんか読みふけっていた少年にとって信仰の相対化はたやすいことであったが、それに先だって子供心にまず疑問に思ったのは、ミサのあとの集会で「布教しましょう」とか言っているのに、両親がちっとも布教しないことだった。
教義を守ってねえじゃねえか。ということだが、では厳格に守るとどういうことになるのか、というと、原理主義となるのである。
本書によると、「イスラーム国」は何ら新しいコンセプトは出しておらず、ムハンマド時代に確定された教義、つまり世界のイスラム教徒の常識に基づいた主張をしているのだという。それもものすごいこじつけ解釈というわけではなく、イスラム教徒なら誰でも知っているような、あるいは正面切って反論できないような教義に基づいて自己の行動を正当化しているだそうだ。この辺はイスラーム教に明るくない平均的な日本人にはピンとこないところだろう。
例えば、「カエサルのものはカエサルへ」と一応は政教を分けるキリスト教、異教徒による支配を諦めているかの感があるユダヤ教と異なり、イスラームはムハンマドが多神教徒を武力で倒してイスラーム法の国を作ったということが教義の中心にある。「アッラーの道のために」という目的にかなった戦争がジハードであり、それへの参加がイスラーム教徒一般に課せられた義務である、というのはイスラーム法学上、揺るぎない定説である。よって、イスラームの民が異教徒に支配されているとか、イスラーム教が危機にあるという認識があれば、ジハードに身を投じなければならないというのが、アル=カーイダから「イスラーム国」までの論理である。
イスラーム教ではムハンマドの正統的な後継者がカリフである。「イスラーム国」の指導者バグダーディーがカリフを宣言するのもまたイスラームの常識に則って世界中のイスラーム教徒の盟主であると宣言しているわけである。もちろんそれに同意するイスラーム教徒は少ないが、イスラーム統一国家への夢をかきたてるという意味で支持する者が出てくるのだ。
しかも「イスラーム国」ではやはり聖典のハディースによって、世界の信仰者と不信仰者の全面対決が起こるという終末論的な教えを唱えている。いまこのようなテロ集団が生じたことは、オスマン帝国崩壊後のアラブ世界の分割やイスラエルの建国など欧米の勝手な振る舞いに端を発するという批判は正しくとも、非信仰者であるわれわれ日本人は「イスラーム国」に滅ぼされるべき敵であるということも認識しておかなければならない。
よって筆者は「神の啓示による絶対的な規範の優位性を主張する宗教的政治思想の唱導」を日本の法執行機関と市民社会がどこまで許すか許さないか、確固とした基準を示さねばならないと述べる。
こうしてみていくとイスラーム思想は大変危険な思想ではないかと思う。上記の思想は過激派の思想というわけではなく、穏健なイスラーム教徒も広く受け入れている教義だからである。もちろん危険視は西欧的価値観のもとにある日本の思想的な現状からみた限りのことかも知れない。しかし結局われわれは何かに価値観の基盤をおかねばならない。そのとき最大公約数的に受け入れやすいのは、民主主義や自由主義のイデーしかないだろう。われわれがイスラーム法を受け入れるわけがないからであり、「イスラーム国」が奴隷制を復活するのを許すわけにはいかないからである。
そこで筆者は「イスラーム国」が呈示する過激思想を世界のイスラーム法学者が反論できるような宗教改革をしなければならないのではないかと述べる。
本書の論点は「イスラーム国」成立に至る思想的・政治的な流れ、その実情、今後の中東情勢の見通しなど多岐にわたり、たいへん勉強になった。ただ、中東の今後の見通しを読むだに弱者が踏みにじられていくのだろうと思わざるを得ない。
Posted by ブクログ
2014年に日本人がシリアで拉致されて斬首され、その衝撃的な映像で存在を世界に知らしめた「イスラム国」の正体を書いた本。
欧州では、イスラム国の存在は日本にいるよりずっと身近であるが、日本に住む著者がここまで書くのはすごいと思う。
アルカイダと何が違うのか、など謎の部分を丁寧に簡潔な文章で説明してある。中東情勢を知るのに一番分かりやすい本ではないだろうか。
まとめると、イスラム国は2011年の「アラブの春」により中東諸国の政治基盤が緩んだ環境で、ジハードを呼びかける過激派が、シリアとイラクの無統治地区で勢力を広げて発生したものらしい。また、代表者がメディアで宣伝をしたアルカイダと違い、地下組織的なネットワークで個人単位で活動しているケースも多い。
斬首映像がいかに心理的効果を考えて工夫して作られているかや、オレンジの囚人服が意味するものなど、本書で初めて知った。読んでよかった。
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ビジネス・実用
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