麻田雅文のレビュー一覧
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1945年8月15日、日本はポツダム宣言を受諾し、敗戦を認め、日本の戦争は終わった。という、常識は正確ではない。日本はまだ戦争中だった。なぜなら、ソ連が8月8日に日本へ宣戦布告し、満州や北方では日ソ戦争が続いていたからだ。戦争は半月で終わったとはいえ、これはこれで間違いなく戦争だ。しかも、その結果として日本は多くの国民をシベリアで抑留され、北方領土を失う。
なぜ、ソ連は敗戦濃厚な日本へ宣戦布告したのか。なぜ、敗戦を受け入れた日本へさらに戦争を続けたのか。そして、日ソ戦争を経て、日ソ両国とアメリカ、中国が得たもの、失ったものを本書は分析する。
突然のソ連参戦で油断していた日本は無抵抗に、蹂躙 -
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八月十五日正午の玉音放送で、戦争が終わり、日本が負けた。これでもう空襲に怯えないで済む。ところが、満洲、朝鮮半島、樺太、千島列島にとってはそうではなかったことが初めて分かった。本当に、ソ連が八月八日に対日参戦したことは歴史で習った。しかし、八月十五日を過ぎても戦闘が行われ、住民が奪われ、強姦されたことは習わなかったのではないだろうか。
本書の最後に年表があり、最後の項目は九月十七日、ソ連軍、北緯38度線以上の朝鮮半島の占領を完了。
このあと、武装解除された関東軍は、もう日本人住民を守ることができず、満洲や樺太などに住んでいた日本人は(今まで圧政を敷かれていた)朝鮮の人やソ連兵の暴力にさらされ -
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第二次世界大戦終結間際に起きた日ソ戦争の全貌を描く本。あとがきに「日ソ戦争で流された血や涙はまだ乾いていない」とあるように、悲惨な実態であったにもかかわらず、その詳細はまだ明らかでない。結論から言うと、終戦間際の日本が弱ったところにソ連がハイエナのように食いつき、領土や資源、あげくに抑留という形で労働力まで奪っていった悪辣な戦争と言える。まあ日本もとやかく言えるような戦い方をしていないが、強姦や虐殺が当たり前だったソ連軍の非道はそれを上回る。著者の指摘するように、日ソ戦争は日本だけでなく、朝鮮半島の分断や中華人民共和国の誕生など東アジアの戦後史に大きな影響を与えた。その意味でも、日ソ戦争の全体
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太平洋戦争の最末期、突然開かれたソ連との戦端。参戦のタイミングを測るソ連。一方でアメリカの原爆投下で戦争は終結に向かう。終戦後の日本統治、北海道統治は慌ただしく決められ,北方領土四島の領有もきちんと話し合われた形跡がない。
この日ソ戦争に関してソ連側の軍規の緩さ、軍の残虐さ、横暴さは今も変わらないと思う。略奪品を一旦ソ連軍に集めはするが、安く兵士に払い下げるなど,常識が通用しない行動をとる。その最たるものがシベリア抑留。ソ連側のロジックとしては、独ソ戦で多数の死傷者を出したため、復興に必要な人手を捕虜にやらせた、ということだろうが、国際法上は全く根拠のない違反行為である。
本書は、「全体の -
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・「8月15日で戦争は終わった」って、ずっとそういうふうに思ってた。でもこの本を読むと、終わったどころか、むしろそこから始まった戦いもあったんだなと。
・ソ連が満洲とか樺太とか千島に一気に攻めてきたのは知識としては知ってたけど、ここまで本格的だったとは思ってなかった。
しかも、民間人がすごく巻き込まれていたということにびっくりした。開拓団の話はきつい。
・8月15日以降の日本って「平和になった」っていうイメージだったけど、実際には現地では停戦がうまく伝わらず、むしろ攻撃が激しくなってたりする。
終わるはずの戦争が、別のかたちで続いてる感じ。
・シベリア抑留につながる話も出てくる。捕虜とし -
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むがー!
どうする?どうしたらいい?
はい、『独ソ戦』に続いて今度は、その反対側で行われた『日ソ戦』について学びます
しかも今回は日本が絡んできますので、より身近
それにしてもソ連軍非道いわ
いや日本軍だってまぁまぁ非道いんだが、あいつらほんまにエグい
無条件降伏しとるのにがんがん攻めてくるし
民間人殺しまくりだし
女性は強姦されまくりだし
あるものみんなとってくし
どさくさに紛れて千島列島占領しちゃうし
どんどんシベリアとか送るし
スターリンが非道いのか
ソ連軍が非道いのか
ロシア人て基本そんな奴なのか
戦争でおかしくなってたのか
その全部なのか
わかりません
分かりませんけど -
Posted by ブクログ
知らなかった歴史を知ることができ、興味深く読みました。
尼港事件については本書で初めてその内容を知り、言葉を失いました。
情報の取り扱い、意思決定のルート、様々な立場の人たちの思惑がからんだ先に起きてくる様々な事象に、これは過去のことと割り切ってしまってはいけないと、身が引き締まる思いでした。
また、戦争を終わらせることの困難さが、意思決定に携わる要人たち各々の人柄とともに伝わってきました。死者が増えてゆくほど引き返せなくなってゆく、その場にいる人にしかわからない苦しさ。「どうやって終わらせるのか」の判断の厳しさも思いました。
歴史に疎い私にもイメージが浮かぶほど、わかりやすく書かれてお -
Posted by ブクログ
本年はちょうど終戦から80年。だからというわけではないが、第28回司馬遼太郎賞を受賞するなど評価が高い本作を読んでみた。本作は表題のとおり、第2次世界大戦末期に行われた「日ソ戦争」について描いた作品である。原爆投下後ソヴィエト聯邦が大日本帝国に対して参戦して、「ポツダム宣言」受諾後も戦争が継続されたことはもちろん歴史の授業でも習うため智識として知ってはいたが、本作ではじめて知るような内容も多かった。たとえば、日本がソ聯と開戦するまさにその直前まで、聯合国との媾和の仲介をソ聯に依頼していたとは知らなかった。たしかに「日ソ中立条約」を結んでいたとはいえ、おなじ枢軸国であるドイツと大激戦を繰り広げた