モームのレビュー一覧
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明かすのも恥ずかしいが、途中まで実話だと思って読んでた。実在した画家と記者の話かと。もちろん、そうではないんだけど。
まあ、それぐらいリアリティのある、描写豊かで人間臭さのある文章だということで、自分を慰めておこう。
モームの本は初めて。
主人公の記者は傍から見ればかなりのひねくれ者。実際、人はこれぐらい当たり前にひねくれ者だけど。対象の画家は、これまたビックリするほどの変わり者。いや、本当は羨ましい。こんなに自分に正直な人がいるのか?と疑ってしまう程に。
日本では特に他人様に迷惑をかけないように言い聞かされて育つことが多いように感じるが、実際のところ何が迷惑なのかは分からない。自分だったら不 -
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ネタバレ語り手に一番共感した。若い人の感性はわからないしきっと素晴らしい物があるんだろうけど、きっと自分はそれが評価されなくなっても古い物にこだわり続けてる。それに絵のセンスも自分と全く一緒……。その辺通して、勝手にモームとお話出来たら絶対楽しいんだろうなあって想像してた!!
ストルーブとその妻の話が一番面白かった。どうして妻がストリックランドを好いたのか最初全然わかんなかったし、むしろストルーブみたいな人と私も結婚出来たらなあって思ってたけれど、妊娠していた話を聞いて印象が一変。でもストルーブみたいな可哀想なくらい滑稽な人、確かにこういう人どこかに居るよね……ってなる、本当に描くの上手い。ストリック -
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ゴーギャンをモデルにしてるとは言え、ゴーギャンはこんなに傲慢であったのかしら?どこまでをモデルにしたのかわからなかった。最後の癩病も調べたけどゴーギャンの死因が癩だと書かれてあるものは見つけられなかった。
読みやすさは◎。光文社の古典リメイクはだいたい読みやすくていいと思う。新潮や角川ののバキバキに硬い翻訳もアレあれで味があるけど、なかなか取っ付きづらさもあったりして。
因みに、最後の解説にあった「本書は同性愛小説である」には、納得出来ない。
2018.11.10再読
初読時に比べて内容は分かっていたので読むのが楽だった。今回初めて解説を読んだら、「ゴーギャンがモデル」というのは適切では -
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話が激しく展開していくのとは裏腹に、読みながらゆったりまどろむような気持ちになって、まるで童話のようだった。
男女の機微が随分ミステリアスに描かれていてかわいいなあ、と思っていたのですが最後の解説を見て腑に落ちました。まあそんなの抜きにしてもオトコとオンナのことは第三者が見てわけわかんないくらいの方が素敵だと思います。恋や愛を言葉で説明したってしょうがないや。
しかしこの登場人物と読み手の間の絶妙な距離感はなんだろう。冗談でも「あーわかるわかる」なんて言えない彼らのシンプルな神々しさは。
どの登場人物をとっても「このひとはきっとどこで何しててもこういう風にしか生きられなかったろうな」と思 -
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ここ最近まとめてモームを読んでいての感想。
他の出版社から出ている同じ短編を読んでいるが、訳の違いで随分印象が変わっている。この古典新約文庫は柔らかい翻訳、ハンマーで棘棘していた日本語をならしている感じがした。例えば「ジェイン」なんかは、他の文庫では印象的な言葉だった単語が言い換えられていたりして、インパクトは減っている。流れをとるかパンチ力を取るかというところだった。こっちの方が後から読んでしまったというのもあるけれど、もう少し、尖っててもよいと思う。語り手の距離感が微妙に近くなり、個人的にいくつかの、良さが消えている気がした。
内容は文句なく面白いです。 -
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「人間の不可解さを浮き彫りにする珠玉の6編」とあるように、まともだなぁと思っていた登場人物が話の進展に伴い黒い面を見せてくれる。個人的に良かったのは、「雨」「掘り出しもの」だろうか。今までミステリは避けて通ってきたが、これだけ面白いなら手を出してみようかな、と思う。思うだけでもある。
人間の醜く卑しい面を見せつけつつも、どこか笑い飛ばせるような読後感。「雨」のデイヴィッドソンなど、どんなオチで締められるのかと思ったら、まさかそこまで堕ちるとは・・・聖人なんていないよね、と思ってしまう。
人間と絆、月と六ペンスを読んだ際に感想を書くのを忘れてしまったのが悔やまれる。もう一度読み直してみよう -
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物語の展開が、ものすごくドラマチックな小説だと思った。
この小説のストーリーテリングの巧みさは、最初から最後まで見事だった。そもそも、「月と六ペンス」というタイトルの付け方からしてスゴい。
モームは、現代であれば名うての構成作家になるような人だったのだと思う。
自伝的小説でありながら、本人の手による記録ではなく、それを観察する「私」の視点からの描写になっていることで、とても客観的にストリックランドという人物の特異性が浮かび上がるようになっている。
「私」の考え方は、常識的で、大衆的で、大きく偏ったところがほとんどない。いわば、当時のヨーロッパの社会通念そのものを代表する立場として、ホームズを -
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再びモーム。「月と六ペンス」、「聖火」、「ジゴロとジゴレット」に続き四作品目。円熟期に、“自らの魂の満足のために”書いた四大問題劇のなかの二篇、という位置付けらしい。
原題はそれぞれ、「報いられたもの」=For the services rendered と、「働き手」=The breadwinner。
いずれの作品も、自己犠牲は幸せに通じていない、という点で共通している。前者は、戦争で国家に、三姉妹の長女が視力障害者となった兄に、後者では、父親が家族に、献身的に尽くすが、誰も幸せではない。
かといって、身勝手に生きることが推奨されているわけでもない。
寺地はるなさんの「架空の犬と嘘を -
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ミルドレッドに失恋した主人公フィリップは、新しい恋も始まり立ち直りつつあったが、そんな彼の前に恋人に捨てられたと言ってミルドレッドが現れる。彼女を見てフィリップの感情はまた揺さぶらるのだが、果たして二人の間はどうなるのか、といったところから下巻は始まる。
そして、フィリップが親しく付き合い、その言動に目を見張ったり、才能に憧れたりした友人たちが、ある者は病に倒れ、また別のある者は夢をあきらめたりして、かつての親密な関係が失われていく一方、医局員として研修をしていた病院で知り合ったことがきっかけで、アセルニー一家との交際が始まり、フィリップは人生の新たな一面に目覚めていく。
そんな中、フ