あらすじ
一九三二年の初演時「世界に誇りうる英国演劇の傑作」「イプセン以後最大の作品」と評された『報いられたもの』。自分が心からしたいことのみをしようと、ある日突然、仕事も家庭も捨てた男が巻き起こす喜劇を描く『働き手』。第一次大戦後のイギリス社会の矛盾と人間の本質を衝き、興行成績を度外視して「自らの魂の満足のため」に書いた、円熟期モームの四大問題劇中の名作二篇。
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Posted by ブクログ
再びモーム。「月と六ペンス」、「聖火」、「ジゴロとジゴレット」に続き四作品目。円熟期に、“自らの魂の満足のために”書いた四大問題劇のなかの二篇、という位置付けらしい。
原題はそれぞれ、「報いられたもの」=For the services rendered と、「働き手」=The breadwinner。
いずれの作品も、自己犠牲は幸せに通じていない、という点で共通している。前者は、戦争で国家に、三姉妹の長女が視力障害者となった兄に、後者では、父親が家族に、献身的に尽くすが、誰も幸せではない。
かといって、身勝手に生きることが推奨されているわけでもない。
寺地はるなさんの「架空の犬と嘘をつく猫」のなかのおばあちゃんの次のセリフを思い出した。
「自分の人生を生きなさい。」
わたしも雪乃もあんたよりずっとはやく死ぬ。
山吹、自分以外の人間のために生きたらいかん。
「誰かを助けるために、守るために、って言うたら、聞こえはよかよ。でも、人生に失敗した時、行き詰まった時。あんたは絶対、それをその誰かのせいにする。その誰かを憎むようになる。そんなのは、よくない」