モームのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
これまで読んで一番面白かった小説を一つ挙げて、と言われたら、有力候補の一つとしてこの本が挙がってくると思う。それくらい面白い。魅力的な本。
本書のクライマックスは、やはりストリックランドがタヒチに行ったのちに命をかけて最高傑作をかけ上げていくシーンなのかもしれない。ただ個人的には、前半のパリでの出来事や、あのいかれていると思われるほど、お人好しの彼の切ない感じが大好き。
自分にはストリックランドのような圧倒的な才能も、なぜだか女性を惹きつけてしまう野生的、セク書なるな魅力もないと自覚しているので、それに圧倒されつつも惹かれてしまう彼や彼の奥さんの気持ちがなんとなくわかる気がするのだ(もちろ -
Posted by ブクログ
ネタバレ「月と六ペンス」以来のモーム作品。こちらは戯曲。
推理小説ではないのだけれど、その要素もあって、ほぼ一気読み。
半身不随のモーリスは何故死んだのか、事故か、自殺か、他殺か。次々と明らかになる新事実。妻かその愛人が犯人で決まりかと思いきや、さにあらず、驚きの真犯人とその動機たるや。
作品内では、死は内密に処理され、誰も法の裁きを受けることはなく大団円を迎えるのだが、如何に動機が善であったとしても、これが裁かれなくて良いのか、という点では、意見が分かれるのではないだろうか。少なくとも、現代の基準では、これを安楽死と認定することは出来ないだろうと思う。かといって、有罪とするのも気の毒ではあり、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ月と六ペンス読みました。
終盤のところが1番印象的で好きでした。
生まれる場所を誤る人がいる、とゆう一文から始まる文章のところや、タヒチでのストリックランドの様子。
物語中盤にストリックランドがブランチのことを、支配欲は激烈で魂の支配までする、ただ自分のものにしたかっただけだ、と言い放っていましたが、タヒチのアタは自分をほっといてくれるからこれ以上は望まないといい、最期をそこで過ごす。このふたりの対比は痛々しく、ブランチに同情してしまう私は似たものをどこかで持っているからなのかなと思ったり。
世間はどうでもいいストリックランドと、ブランチの夫の他者に執着にも感じるような介入をしたがる様子との対 -
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40代に入ってからすべてを捨てて絵を書き始め、後に伝説となった画家の生き様を若き作家を語り手として描く。
天才と狂気を感じるストリックランドの絵描きとしての人生、傍若無人な彼が関わる3人の女性との関係、パリとタヒチという文化と自然の対比など、重層的な構造をもつ小説。単純に、若い作家視点で語られるストリックランドのエピソードは、ミステリアスで引き込まれるし、恋愛小説としても読みごたえがある。しかし人生について、どの世代の人にとっても非常に考えさせられる要素が散りばめられており、何度も読み返す価値のある味わい深い作品でもある。本当に幸せな人生とは……人生に何を見い出すか……。ストリックランドだけ -
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ネタバレ『存在のすべてを』の登場人物が読んでいた本というのでどんな本か読んでみた。『存在の~』はいまいちだったけど、この本は最高だった!
空想上(ゴーギャンがモチーフになってるとかなってないとか?)の芸術家を追って一人の作家がまとめた物語という設定なんだけど、ただただ原田マハさんのようにきれいに積み重ねられた物語だけでなく、モームの哲学を楽しむことができた。いつものことながら文章表現も豊かで巧みであるので行間もなく延々と文字が連ねられていても全く負担にならず面白いようにページが進んでしまう。
このタイトルも意味深で、ついついwikiでその意味まで調べてしまうと、ああ、なるほど深いわぁってなる。ストリッ -
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有名な『月と六ペンス』。思わせぶりなタイトルなので、どういう意味だろうと何十年か気になったままだったので読んでみた。
答えは本篇にはなく、解説にあった。
P406
題名『月と六ペンス』は、前作『人間の絆』についての書評が「タイムズ文芸付録」に掲載されたときの文句をモームが使ったもの。その書評には、「ほかの多くの青年と同様、主人公フィリップは『月』に憧れつづけ、その結果、足もとにある『六ペンス』銀貨には気づかなかった」と書かれていた。これを読んだモームが、「月」は理想を、「六ペンス」は現実をあらわす比喩として、『月と六ペンス』のストリックランドに応用できると考えたものと思われる。
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