千野帽子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
人間が物語、ストーリーの枠組みで世界を解釈しがちである、ということ自体はわかっていたつもりであったが、具体的にどのように、ということについて解像度が上がった気がする。
特に、公正世界の誤謬(中村文則作品で結構出てくる気がする)というフレームワークはまさにそうだな、と。自分が良いことをすれば、良いこととして自分に返ってくるはずである、悪いことをすれば悪いこととして返ってくる。そういう基本的な因果認識。
それがあるから逆に、悪いことが起こった時に、「自分が何か悪いことをしたのが原因なのだ」というストーリーの捏造をしてしまい、自分を苦しめる。
また逆に、一生懸命努力した自分には良い未来がくるはず、と -
Posted by ブクログ
近頃の僕が漠然と考えていた疑問に答えてくれる内容で、付箋貼りまくりでした。
なかなか簡単にまとめられないのですが、人間には出来事を「物語」として把握する能力があり、独立した前後の出来事を因果関係で結びつけてしまうと。
むしろ「物語」として把握するために個人的な出来事にも理由や意味を求める(「なぜ」このような悲劇的な出来事が「私」の身に起きたのか)。
嘘でもいいから説明が欲しい(因果応報)。
そして何らかの決着をつけて新しい平衡状態に辿り着きたい。
現実世界の理解もフィクションも物語化の構造は同じ。
著者が引用、言及する分野が幅広くて、その圧倒的な読書量に感銘を受けました。