千野帽子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「共感」について考える中で派生的テーマとして「物語」について関心を持っているときに見かけて購入した本。
ストーリーとしての「物語」が持つ構造的な類型や構造がストーリー受容の仕方にどのように影響し得るか、という辺りを考えたかったのだが、結論としてはその辺りの考えはあまり深められなかった。
物語の構造論としては
(平衡状態→)非常事態→あらたな平衡状態
というごくベーシックなものについての解説がなされているぐらい。
後半は、「物語」が私たちの認知スタイルに大きな影響を持っていることや、それがときにマイナスの影響を持ってしまうことに話の中心が移っていく。移っていく、というか元々著者はそうしたライブストーリーとしての物語のあり方について述べることが主題だったのかと思いますが。
物語論について述べる本だからなのか、本書全体の論理構造やリサーチクエスチョンの在り処をあまり明示せずに進んでいくため(元がWebメディアでの連載記事のようなのでそもそも全体を貫く筋がないことが主たる原因かもしれませんが)、著者の主張を掴むのがなかなか難しく感じる本だが、一貫性が無いように感じるのはむしろ個人的には良かったようにも感じる。
各章では、物語論自体について、文学論や各種の小説、認知心理学、社会心理学、発達心理学、神経科学、道徳や宗教など多様なテーマに触れられており、関連する書籍からの引用も豊富であるため、著者の主張の行き来にあまり引っ張られずに(特段違和感のある主張がなされている訳でもないが)、あれこれと思考を飛ばしたり、自身の関心に近そうなテーマを知る機会になった。
文末の読書案内を含めて考えがいのあるテーマのリストとして読むには良い本だと感じる。
特に、個人的にはライフストーリーの受容や編集というテーマについては、対人支援やキャリア論との関連で考えを深めたいことではあったのでとっかかりを得られたのは良かった。
元々は「共感」や「物語」に関心を持ったのはマーケティングやファンドレイジングに関わるテーマとしてだったが、自分自身の世界観構築や日常生活やその中でのコミュニケーション、それらにおける認知のあり方まで「物語」というテーマで考えることのできる範囲が広いことを改めて感じた。 -
Posted by ブクログ
『物語は人生を救うのか』思ってたよりめちゃ面白かった。プリマー新書だしタイトルからしてライトな自己啓発系かと思ってたけど、意外にしっかりした物語論が展開されてて発見が多かったし取り上げられた本ぜんぶ読んでみたい。自己啓発でもあるけれど学術的入門書としてもとても良い本だった。
ものごとの前後関係はイコール因果関係ではない、「努力したから報われた」というストーリーでは報われなかった人は努力しなかったのかという話になるが決してそういうわけでもない、けれどこの文脈に囚われて自分の首が絞まる人もいる。ストーリーとはある特定の視点から見た物事の一側面でしかない。
この人の前作も読んでみようかな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりの新書。
もしかしたら養老孟司さんの『バカの壁』以来か。
一体何年前だよっヾ(--;)
『人はなぜ物語を求めるのか』
新聞の書評欄で紹介されていてこのタイトルが気になり、書店を数件巡ったが置いておらずネット書店で購入。
最近、「なんか世の中って‘物語’だらけじゃないか」と思い、息苦しさを感じていたのでジャストタイミングだった。
自分の頭の中まで‘物語’だらけだもの。
本書を読んで思い返したのは軽い認知症の祖母のこと。
「あれをしてくれないから私のことなどどうとも思ってない」と言ったり、不都合や不具合があると自分勝手に家族を責めたりする。
私の不幸=家族のせい
という強固な‘物語’が頭の中に鎮座しているのかな。
それで自分を苦しめているのかなと思った。
これも私自身が勝手に解釈した‘物語’に違いないけど。
中身は私にはちょっと難しいところもあり、時折「は?」と二度三度文章を読み返したりしながら読んだ。
でも『自分のぼんやりした考えを、豊富な文献と読みやすい文章で形にしてくれた!グッジョブ!』と思ったり、考えが私には思いもかけぬ方向に着地したりして読み物として楽しかった。
まあ『わかった』と『分かった気になる』と区別がつかない
そうなので自分がどこまで分かったのかわからない。
他のひとからみれば「あいつ、わかってないなー」なのかも(* ̄∇ ̄*)
それに千野さんのハナシに納得したのも『彼の提示する物語』と『私の思う物語』が合致しただけかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ印象的な箇所のまとめ
・世界にたいする何故とその回答が物語の物語らしさを生む。
・人は生きる意味を求める。生きている原因より意味(目的)を知りたがる。
・人生に期待すると失望する。期待しなければ希望がもてる
・人生に期待するのでなく誰かの人生の期待に責任を持ってこたえる自覚を持つ。
・物語の前後の因果関係は運命だと言える。物語とは運命を認識する方法。
・自分達が現実たと思っていることの多くは、自分達が無自覚なまま構成させられてしまった物語である。
・無根拠で不適切な一般論から脱する。
・べき論、コントロール願望を捨てる。
・感情行為直結説(こう感じているからこう行動する)から行為選択可能説(行為は自由に選べる)へ。
・人は知らないことを自分の解釈の格子で埋めていく。
・自分が知らないということを知る。
・正しい私は報われるべきだ、評価されるべきだという被害者意識の物語は極めて無責任。他責的ストーリー。
・人間はストーリーを不可避に合成してしまう。 -
Posted by ブクログ
ストーリーは人間の認知に組み込まれたひとつのフォーマット(認知形式)
状態と出来事=地と図
筋に逆らってまで隣接連合によって叙述の密度を高めるものを「リアリズム」的な要素と考える(ロマン・ヤコブソン)
世界に対する「なぜ」という問と、それへの回答(原因や理由)とが、ストーリーのストーリーらしい滑らかさを生むのです
因果関係が明示されると、なぜ物語としてなめらかな感じがするのか?それは、できごとが「わかる」気がするからです。どうやら僕たちは、できごとの因果関係を「わかりたい」らしいのです
わけがわかると、ストーリーが滑らかに感じられ、「わかった」という感情が芽生える
人間は時間の中で前後関係にあるふたつのことがらを、因果関係で結びつけたがる習性を持っている(ヒューム「人間関係論」)
前後関係の誤謬をいわば体系的に濫用するのが「物語」(ロラン・バルト「物語の構造分析序説」)
わかる、というのは秩序を生む心の働き。秩序が生まれると、心はわかった、という信号を出してくれる。つまり、わかったという感情。その信号が出ると、心に快感、落ち着きが生まれる。(「わかる」とはどういうことか 山鳥重)
ストーリーは個別の問題(存在命題)ですが、それぞれの理由や「因果関係」が「わかった」気がするときは、その背後には実は一般論(普遍的な話題、全称命題)が存在している
一般論は「類」
説明付きのストーリー(プロット)は類の一例、「種」
一般論=人は、悲しみのあまりみずから死期を早めてしまうことがある
ストーリー=あるとき、ある女王が悲しみのあまり死んだ
一般論とストーリーの関係は、「タイプ(人間一般に関すること」と「トークン(物語の登場人物である特定のこと)」の関係にある
ことわざや格言は、「一般論」
読者が物語に求めるものは、ひとつはしかるべき論理一貫性、そしてもう一つは「なぜと問う」必要をなくしてくれる権威である
「自分が不愉快な状況にあるのは、☓☓だからだ」というストーリー的な説明が起こるのは、人間が「なぜ自分は不本意な状況にあるのか?」と問うて、その問に答えようとするから
人はAのあとにBが起こると、AのせいでBが起こったと思う傾向がある(前後即因果の誤謬)
前後関係だけでなく、因果関係が加わると、ストーリーが滑らかになる
人は個別の事例から一般論を帰納し、その一般論から演繹して新たな事例の原因・理由を説明したがる
不本意な状況に置かれると「なぜ私が?」という実在的な間が起こり、ストーリーがそれに無理やり答えようとする -
Posted by ブクログ
物語について、言葉について考えてみたかったので購入。
それぞれの話題や考え方には共感できるものも多かったのだけど、若干読み進め難く感じた。
恐らく文章の筋道、特に結論がどこにあるのかが分かりにくかったのかも?
人は物事を物語としてとらえがちで、特に非常時や不安を覚えた時、その力を使って安心を得ようとする。
そこに事実としての正確さは来められないし、時にとても感情的で攻撃的なふるまいにもなり得る、ということかと思った。
世界的な争いと、出口の見えない経済不安に見舞われている今、SNS上で不安を煽ったり、他人の信条を認めず攻撃しているシーンをたくさん見かける。
自分が納得しやすい理由だけを、感情的に、強い言葉でくりかえし主張する。
そうした振る舞いの根底には、物語で安心を得たいという人間の癖が関係しているのかも。
…と、こうして物語っている私もまた、物語のくびきから逃れられずにいるひとりなんだろう -
Posted by ブクログ
ネタバレ個人的には読みにくく、内容もタイトルで期待したほどではなかったけど、第4章で書かれていた内容についてはSNS社会の中で思うところが日常的にあり共感した。
人はそれぞれに違う人生のストーリーを持って生きており、それが歪んでしまっている人もいる。他人に自分のストーリーを押し付けたり、攻撃したり。
社会の中で生きて行くことは大変だし、人間関係も面倒なことは多い。自分にとってうまいことばかりではない世の中だけれど、自分の選択だけは、自分で下すことができる。
自分はどうありたいか、どんなストーリーを描いていきたいか。考え直すきっかけにもなった。