雪舟えまのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一行目から心掴まれる文章で、内容も作品の雰囲気も優しくてとても自分好みだった。
建物の気持ちを読み取れて「家読み」という仕事をしているシガは、その仕事中にナガノという行き倒れたクローンを助ける。
この二人の話と、リョクとキン、サバとシールというそれぞれのふたりの話が詰まった短編集。
いずれのペアも年齢も性別もときには種別も超えて、互いが互いのことをいちばんに思いやっていて、相手のためになにかしてあげたいという気持ち、自分のことや欲よりも相手を尊重する気持ちが強くて、人が惨く死ぬ作品ばかり目にしていた自分にとっては珍しく、角砂糖と清涼剤を一息に飲んだような愛に溢れた作品に出会えて良かった。
続編も出ているようなので、是非読みたい。 -
Posted by ブクログ
優しいけれど、現代テーマがさり気なく散りばめられた大人の童話を読んでいる気分でした。
地球ではないどこかの星の話で、パートナー同士の心の通わせ方が、自然で、無理やり過ぎず交わっていく形が心地良く読める。
家読みという面白い設定のシガとクローンのナガノの関係が、愛とか自由とはどんなことなのか、人生って考え方一つで変わるという哲学的結末も素晴らしかった。
未来のどこかの惑星とあって、オリジナル用語かたくさん出てくるのが面白く、想像力の豊かな作家さんだと感じた。
個人的に傑作!何回か読めば更に深い読書体験出来そうです。
寝る前に読むにもおすすめです。 -
Posted by ブクログ
とんでもなく素敵な作品に出会ってしまった……
どこか遠い未来を描いたような物語。
冷たい静けさに支配される惑星のなかで、
いちばん強く感じられるのは、
「誰かと一緒に生きる」ことのあたたかさだ。
あまりにも好きな世界観すぎて、
読み終えてすぐに続編の『辺境恋愛詩』を注文しました…!
『凍土二人行黒スープ付き』雪舟えま
家と会話することができる「家読み」のシガと、
日本人の青年の姿をしたクローンのナガノ。
シガはあることをきっかけに
ナガノと行動をともにするようになり、
やがて二人で生きることを選んでいく。
もうね、なんだかどうでもよくなるほどの「愛」なのだ。
男×男とか、人間×クローンとか、
そういう言葉で整理するのが無粋に思えてしまうくらいの愛。
あらゆる固定観念や性差に縛られず、
自由に生きるシガとナガノの関係が
なんとも心地よい。
✧
二人は惑星を静かに旅していく。
シガは「家読み」として、ナガノはその助手として。
SF小説なのに、
不思議とノスタルジーを感じる懐かしさがあって、
少しだけきゅっと胸が締めつけられるような切なさもある。
そんな「好き」がこの本には詰まっている。
シガとナガノの物語だけではなく、
公務員サバと、歳の離れた学生シールの出会い、
少年リョクと、不思議な生き物キンの関係も描かれる。
そう、誰に何と言われようと自由でいいのだ。
お互いを必要としている。
それだけで、もう十分なのだと思う。
✧
宇宙そのものの色をした切なさが私のすみずみまで浸透する。
そうだよナガノ、私はそれでも君のための人間になったんだ。
(P262)
歌人でもある雪舟えまさんの表現の、
なんと美しいことよ…… -
Posted by ブクログ
そこはここよりも(たぶん)ずっとずっと遠い惑星。家と対話する「家読み」の仕事をしている〈私〉は、仕事先の家侵入していた子どもっぽさの残る若者と出会う。彼は日本コロニー製のナガノ型のクローン。外せば手首の吹っ飛ぶという手枷を付けたナガノは、つらい労働環境から逃げてきたらしい――。
たとえば不思議な季節の流れがあったり、不思議な生物がいたり、聞き馴染みのない職業があったり……初めて見聞きするその世界を構築する存在たちが、どこか懐かしさを持って胸にしみてくる。言葉によって編み上げられた世界の魅力を改めて感じるような作品集でした。きっと折りに触れて、タイトルや表紙を見るたびに、こんな素敵な世界があったなぁ、と思い出して嬉しくなるんだろうな、と思わせる、とても余韻の良い一冊です。 -
Posted by ブクログ
大変申し訳ない話なのだが、作家さんを知らずに、この本を購入した。理由は…個人的には毎度お馴染みとなるジャケ買い。表紙が見て分かる人には分かる人気漫画家さんのイラストだったからだ。この漫画家さんが好きで、他にもジャケ買いで小説を買ったりしている。
なのでビジュアルばかりに気を取られ(なんか歌詞っぽくなった)、内容や作家さんについては失礼ながら特に気にしていなかった。
でも、それを後悔する日がついに来ようとは…。
物語は、誰にもに愛されずに育った少年・緑が、誰からにでも愛されて育った少年・楯に恋をするお話。
一言で言ってしまえば、BL小説。
けれど、その一言で語っていいのか、私には躊躇われる作品だった。
“物心付いつたときから腐っていた”と公言している私でも、だ。
とにかく色んなことがぶっ飛んでいる。ほとんど現代劇なのに、設定は2050年の近未来。なぜか道具たちだけがSFチックで、人の感覚はそれほど変わっていない。そして機械の名前が独特過ぎる。たった30年後で、そんな言葉の連ねになるのか?といった不思議さに溢れている。
ちなみにこのSFチックな物達は、なんら物語に影響を与えていない。近未来である意味は特に感じられなかった。それが逆に凄い。
そして、主人公・緑の性格よ。陰キャなのか、ヤバいやつなのか、判断に難しい感性をお持ちでいらっしゃる。設定のぶっ飛び✕主人公のぶっ飛びで、とんでもない世界観に満たされていた。
愛されたことのない少年が愛することを知って、世界が一転したのだ。
その恋とか愛とかの華やかさが、ぶっ飛んだ表現なのである。
正直、ずっとぶっ飛んでいるので途中で胃もたれを起こした。最後まで読むか諦めるか、悩むほどだった。
でも腐女子のプライドがそれを許さなかった。
そして程なく、それが序章だったと気づかされる。ぶっ飛んだ世界がまたも一転し、華やいだ文章は急に途切れた。
あー、あのぶっ飛び具合は、落差だったのか。
そう感じたとき、同仕様もなく面白い作品だと思った。
読後に知ったことだが、作者は歌人だった。独特な表現は歌だったのだ。
私も、後半の主人公と同じ経験をしている。なので逆になぜそこまで落ちるのか理解できなかったが、たぶん私はもう、その時には家族を諦めていたのだろう。主人公みたいに決まってる結果に抗う気持ちなど一切なかった。
挟まれる子どもほど、辛いものはないんだろうな、と経験から思う。
私はそこから逃れて楽になる方を選んだに過ぎない。よくドラマや小説で『喧嘩しててもいいから一緒にいてほしい』と懇願する子どもを見るが、あれは本当なのだろうか。どこかにそんな考えの人がいるのだろうか。今のところ会ったことはない。
そういえば、高校生の時。親の離婚が原因で荒れて、金髪にした生徒会長がいたな。
私も茶髪にしたり、真っ青にしたりしてたけど、許して貰えなかった。生徒会長にもなったけど。
その辺はキャラの問題らしい。何だそれ。
最後にこの話には、同性による性交渉シーンがあるので、面白そう!と思っても苦手な方はご注意を。
ただ「背中だけ汗をかく」など、表現が素晴らしく良いので、個人的には苦手を差し引いて読むことをオススメする。 -
Posted by ブクログ
アンソロジー「短編宇宙」に収録の、二人が主人公の話が気に入ったので、読んでみた。
いやこれは参りました。
設定は近未来だけど、要は学園ラブコメというか青春グラフィティというか、家庭の事情とBL(そこに葛藤はないので、同棲であることが問題にならなくなった未来という時代設定と思われる)という要素は絡むものの、恋愛メインの割とシンプルな内容。
そういう話はあまり興味ないのに、これはグッときまくって、参りました。
文庫の帯には「宇宙一ピュアで切ない恋の軌跡」と陳腐なこと書いてるけど、いや、判る。そうかもしれない。
嬉しい楽しいの感情はハイテンション(あくまで内心)な一方、辛いことは淡々と状況だけを語り、でもその状況が本人にとってキツイことは確実に伝わり、ふとしたキッカケで泣き出して止まらなくなる主人公にグッとくる人は多いだろう。
ストレートに言葉にしない感情を、想像させるのがとてもうまい。
仮名遣いというか、普通は漢字で書くところち平仮名多用されてるのは何か意味あるのか、ちょっと不思議だけど。
あと、萩原の失神は結局何だったのか、明らかにされないのは気になるかな。