高階秀爾のレビュー一覧
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西洋近代社会の例に見られるように、文化は、聖から俗へ、富裕層から庶民層へと広まっていきます。
日本でいえば、太平洋戦争後の焼け野原から奇跡の復興を図っていく1960年代の高度経済成長期以降、クラシック音楽も美術鑑賞も庶民層に広がっていったそうです。
そして、その当時から美術鑑賞の指南役となっていたのが、本書の著者である高階秀爾先生だったということです。
わたしが、高階先生を知ったのは、NHK教育テレビ(今のEテレね)の「日曜美術館」という番組でした。
丁寧に作品の解説をしていらっしゃいました。
その語り口はエレガントで、時にはお洒落な冗談もおっしゃる。
子どものくせに、知的なも -
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ネタバレ2024年に新しくエラスムスの本が出た事実を嬉しく思う。
●エラスムスと孤独とふるさとについて
「我、何者にも譲らず」というエラスムスの態度をあらためて格好良いなとおもう。
その一方で、私生児としてうまれ早くに両親をなくし結婚もせず、最後には新旧両派から敵視され友は遠ざかっていった様は、どうしても胸がくるしい気持ちになる。
ラテン語を自在にあやつりヨーロッパ各地を転々としたコスモポリタンとしての彼が最後にのこしたことばが「Lieve god」(愛する神よ)という故郷オランダの言葉だったことは、非常に示唆的である。
私生児として生まれた彼は、「デシデリウス・エラスムス」という名前さえ自分で -
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第I巻の15作品は、1434年のヤン・ファン・アイクの作品から1863年のエドゥアール・マネまでの約400年を駆け抜けてきたのに対し、第II巻の14作品は、印象派のモネから始まって造形主義や抽象画に大きく移り変わっていく、わずか100年足らずの絵画の変遷を追っています。
現代人の多くにとって魅力的で絵画として「完成」しているように感じる印象主義が、絵画としてどのような限界を抱えているのか、そして画家たちがそこからどう脱却して(あるいはそれを極めて)いったのかが分かりやすく解説されています。以前、国立西洋美術館で開催されていた「キュビズム展」と扱われている時代が同じで、おさらいする気分で読むこと -
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「西洋美術史入門」の本というにはあまりにも高度で深い解説。取り上げられている15点の絵画は有名なものばかりですが、絵画の技法のみならず、神話、歴史、哲学、宗教や音楽に至るまで様々な視点から論じられていて、まさに「絵画とは全人間的な精神活動(あとがきより)」と感じさせられます。絵について論じる著者のことばの選び方と表現力には舌を巻いて感嘆するばかりでした。絵画の知識を得るだけでなく、文学作品のように読みごたえもある1冊です。
―「オランピア」には、今にも崩れ去ろうとする壮麗な建築を最後の一点で辛うじて支えているような緊張感と不安感とがある。