柴那典のレビュー一覧
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脱稿があと2か月遅ければ,「ピコ太郎のPPAPや恋ダンスがヒットした背景も書き加えられたのに~」という著者の嘆きが聞こえてきそうではあるが,全体的に2010年代における日本の音楽市場が,その10年前と比較して変容しているプロセスは理解できた。
前半の第1章~第3章は,ある程度予想できた内容の展開だった。とはいえ,改めて1990年代という時代を振り返ってみると,日本経済全体においてはバブル崩壊から構造不況期に突入し,「失われた20年」の前半期に位置するが,こと国内の音楽産業に関しては,むしろバブル絶頂期を迎えていたため,現代日本経済史の世界においては,往時の「内需」にもたらすサービス業の意義に対して,再考を促しても良いかもしれない。
これに対して,第4章~第6章は,音楽ジャーナリストである著者ならではの見解。とくに,小室哲哉,いきものがかり・水野良樹をはじめ,アーティストや制作現場に携わる人々の声を取材で採り入れた点は,興味深く感じられた。その反面,結論部分は,音楽業界に対する彼ら自身の展望に委ねてしまい,著者としての主張は,残念ながら,伝わりにくい。
編集や校正に対する見解を述べておくと,著者は「結果,」という言葉を冒頭で述べる癖を有する。話し言葉ではよく用いられるものの,書き言葉の接続詞としては,やはり違和感を覚えざるをえない。また,近年の音楽シーンを表す用語として,「バズる」や「ボーカロイド(ボカロ)」をキーワードとして表しているが,まさに近年の音楽に縁のない読者にとっては,言葉のソースが理解できないかもしれない。読者のターゲットとして「歌謡曲全盛世代」をも意識しているのであれば,もう少し丁寧な語句説明があっても然るべきだったのではないだろうか? -
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ボーカロイド『初音ミク』が音楽業界、また世界に与えた影響に関して書かれた本。
初音ミクを題材にしたただのイロモノ本としてではなく、丁寧に取材を重ねた新世代の音楽を見つめた本。音楽業界を変えた大きな流れ『サマー・オブ・ラブ』の第三の波として電子音楽の歌姫『初音ミク』を位置づける。2000年代から本格化したインターネットの普及による、情報革命と音楽業界の関係性やアマチュアクリエイターの勃興など、新しい時代の音楽に関しても触れている。過去のヒッピー文化やテクノ音楽が音楽の新たな『遊び場』を人々に提供しブームなり、それが文化になった背景を丁寧に解説する。そして、そのブームと文化の現象と初音ミクの関連性に触れる。著者独自の視点から初音ミクを捉えていて、とても面白かった。 -
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今や日本を代表する歌姫となった、初音ミク。
彼女はどのようにして生まれ、どこに行こうとしているのか。
この本はその初音ミクを、音楽的側面から見た初の本と言える。
ボーカロイドが開発されたその経緯や、ニコ動でのブレイクしていく様子。
それをきっかけにして様々な作曲家が生まれ、ついにはパリでオペラ公演をするに至るまで、非常に多くの人々にインタヴューが載せられている。
一読して感じたのは、この初音ミクという現象・・・日本のあらゆる物に神がやどるという思想や、日本の先端的音楽技術、様々なキャラクターを生み出し育てるという文化的土壌が背景にあったことが、単なる流行りではない、一つの新しい世界を生み出したことが分かる。
おそらくは日本以外ではこんなことは起こりえなかっただろう。
ネットでの音楽配信やダウンロード時代の到来は、音楽の衰退を招くどころか、新しい可能性を切り開いたと著者は説明する。
ミクをきっかけにして多くの才能が生まれ出でた事実の記述に自分は驚嘆した。
このような流れは今後も続くだろう。
グーグルやトヨタなど様々な企業とコラボし、海外でのライブは熱狂をもって迎え入れられた。
世界へと羽ばたく初音ミクの広がりは、とどまることを知らない。
彼女が繰り広げるこの舞台は、まだ序章が始まったばかりのようだ。 -
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「世界を変えた」のが前提で、それがなぜかと問う本。僕のあずかり知らぬところで、たしかに世界は変わっていた。
誰が音楽を殺すのか。DTMとインターネットで音楽は死ぬかと思われたが、死ななかった、というより新たな生命を手に入れた。オタク論でもボーカロイドの技術の話でもなく、ミュージックシーンに起こったムーブメントを、ボカロ誕生どころか、ヒッピー時代から辿っていく本。
ネギを振らせて遊んでいるうちに、とてつもないことになっていた。三回目のサマー・オブ・ラブ。ボカロPは必ずしも過去のミュージックシーンを気にしていない人も多いだろうけれど、こうしてつなげてみるときっとつながっている気がする。とはいえ僕は今、No Music,Yes Lifeだからなあ。Music方面よりも、やっぱり産業側でない人たちが起こした変化の歴史、として楽しもう、と思いつつ、割とボカロ欲しくなった。 -
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話題になったところを見逃さず、持続させることで波を大きくしていく。
いっとき、曲におけるヒットチャートと認知度が一致しないことがあった。 崩壊したかに見えたヒットという概念は、その後再び復活していく。 本書は、2016〜2025年までの音楽業界の流れと、なぜヒットという概念が復権してきたかを読み解いていく。
大きな要素はやはりSNSで、どこかで突如注目度が上がったときに、それをどう持続させ盛り上げるか、そこに対応したアーティストが大きな波に乗ってるのが、ここ最近の流れだと実感した。
著者も言うように、この先も同じ流れでいけるかは読めないけど、2016年のように、後からあれが、というものが見つかるのかもしれない。 -
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CDの売り上げ=ヒットという時代が終わり、ヒット曲が見えづらくなったことを描いた本。取り上げられている時代は1990年代から、本書の発行された2016年まで。
全部で6章ある中で、「ヒットの崩壊」を描いた、第1章と第2章がうまく描けている。
書かれていることを一言でいえば、CDが売れなくなり、ライブで稼ぐ時代になっているということである。これは、1990年代のJ-POP黄金時代を経験した音楽ファンであれば、みな肌で感じていることだろう。この時代を知る音楽愛好家であれば、あえて書かれなくても、既に知っていることなので、新しい発見はない。
1990年代を経験していない世代は勉強にはなるだろうが、実感が伴わないので面白味は感じにくいだろう。
1990年代を経験した世代で、「なぜCDが売れなくなったのか知りたい」という人がいちばん楽しめるのではないだろうか。 -
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平成の30年間を各年を象徴する曲を取り上げ、平成とはどんな時代だったのかが語られている。
この曲、昭和の曲かと思っていた、なんてものがあり、30年という時間の長さを感じた。
私は基本的には国内外の音楽に興味があるわけではなく、たまに気に入った音楽を聴くぐらいだった。
しかし、この歳になって初めて大好きなミュージシャンが現れた、いわゆる"推し"だ。
そこで他のミュージシャンにも、曲にも少し関心が向くようになり、この本を読むきっかけにもなった。
30年間の音楽業界の変遷は凄まじい。
レコードだった昭和は遥か彼方で私でさえダウンロードした曲をスマホで聞いている。
音楽も時代の流れと無縁ではなく、その時その時の世相をも反映していることがわかる。
それは意図したものであったり、結果的にそうなったものもあるのだろう。
興味深く読んだ。