柴那典のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本の聞き手・構成である柴 那典の講演会を聞きに行き、本書の存在を知りました。その前にNHKの新・プロジェクトXの『情熱の連鎖が生んだ音楽革命 〜初音ミク 誕生秘話〜』を見たことがその講演会に行ったきっかけでした。今年、2007年に「初音ミク」が発売されてから18年、ボーカロイドという存在が日本の生み出したクリエイティブとして知らぬ人はいない、という状態に入ったのかもしれません。そういえば米津玄師の「KICK BACK」がアメリカで日本語詞曲史上初のプラチナに認定されたというニュースも3日ほど前のもの。彼やYOASOBI、AdoなどボカロPやボーカロイドが生み出した仕組みから登場したアーティストの世界的な活躍をもってして「初音ミク」の物語もデジタルの世界から一斉に出てきたのかもしれません。今となっては無いことなど想像のできない「初音ミク」の0→1を丁寧に一歩一歩を語り起こしているのが本書です。新・プロジェクトXのドラマチックなナレーションでエピソードを語るのと違って、伊藤博之のやさしい言葉で、出来事というより彼の信じてきたことを紡いでいく、このスタイルは違った感動を与えてくれました。まさに『創作のミライ』を信じさせてくれる本でした。今、インターネットやデジタルの負の側面がからられることが増えてきましたが、インターネットができたた頃のポジティブでありサニーサイドな気分を思い出しました。いま自分がいる場所が決していい場所では無い、と思っている人に手にとって欲しいです。
-
Posted by ブクログ
ここでいう「ヒット」とは、音楽(業界)における「ヒット」のこと。
最近の音楽業界のことはよくわかりませんが、なぜ、よくわからなくなったのかが、よくわかりました。
CDのような「モノ」から、ライブのような「コト」(経験)に、消費者の関心やニーズが移っている、というのは、データからも正しそうです。
このことは、この本の中にある、いきものがかりの水野良樹のコメント「歌は、聞かれることよりも、歌われることに、より意味がある」にも符合していると思いますし。
音楽のあり方は変わっても、自分にとって価値のある音楽は存在していますし、また、他の人にとって価値のある音楽も存在していますので、そのような音楽が存在する限り、音楽業界は、形を変えながらも、意味のある存在であり続けるのだと思います。 -
Posted by ブクログ
人々の価値観の抜本的な変化によってヒット曲が生まれにくくなった。
「モノ」から「体験」へと、消費の軸足が移り変わっていったこと…SNSの普及により流行が局所的に生じるようになったこと…などにより過去のヒットの方程式が使えなくなっている。
音楽ビジネスを中心に話が展開していくが、人々を取り巻く環境の変化や嗜好の変化、消費動向の行く末など、こと音楽に限った話ではない。
人がモノを消費するという行為、その消費を介したムーブメント、グローバルな流れなど、どんな業界においても参考になる「ヒット」論である。
様々な角度からの考察、その視点および解釈についてもよくできている。
良書である。 -
購入済み
ヒットを正体
ヒットの崩壊という、センセーショナルなたいとるですが、ヒット正体を実感できる濃い内容でした。
音楽に携わる方はもちろん、何かを生み出し世に問うという方は是非読んでほしい一冊。 -
Posted by ブクログ
初音ミク現象を第三の「サマー・オブ・ラブ(音楽を中心に文化・政治的な主張を伴った社会現象)」に見立て、様々な「目立つ」当事者及び関係者との対話と著者のポジティブな想いを熱っぽくドキュメンタリーに仕立てたエッセイ。
私も聞く側+aとして真っ只中にいた。内部のドロっっっっっドロ抗争にはなるべく蓋をし(カラオケあたりやryoさんの歌詞にちらっとだけ見えるが、もっと目もあてられない状態だ)賛美的に脚色された、厚さのわりにすらすら読める楽しい文章だった。
サマー・オブ・ラブと呼ぶには現象に政治思想があるかどうか…個人的には著作権・創作の分野に一石を投じて欲しいと願い、本の中にもあるように実際動いている方もいらっしゃるが、現象全体の思想の『主流ではなかった(内部のドロドロに一役かうほど)』とも感じている。
明るい未来を感じて欲しい「初音ミクに興味を持った一般の方」にオススメしたい夢のある本だ。 -
Posted by ブクログ
序章「僕らはサード・サマー・オブ・ラブの時代を生きていた」一章「初音ミクが生まれるまで」二章「ヒッピーたちの見果ての夢」の流れだけでも初音ミクが生まれた背景から技術の進化とヒッピーカルチャーとコンピューターを繋いだ男、そしてアメリカ西海岸というインターネット文化の始まりから今へとわかりやすく書かれている。
一九六七年のアメリカ、一九八七年のイギリス、二〇〇七年の日本、二十年おきのサマー・オブ・ラブには「新しい遊び場」と誰でも参加可能なコミュニティと中心に音楽があった。そう歴史が繋がれている。
ゼロ年代以降に分断されたものを柴さんが意識的に意欲的に自分が関わってきたジャンルできちんと接合しようとしている感じが読んでてする。
上の世代と今の若い世代の狭間で分断されてしまった歴史をきちんとこういう流れがあって初音ミクに繋がるんだよって。すごくそういうの大事だと思う。この書籍はできれば初音ミクとかが普通にあって聴いてきた若い世代が読む事で自分たちの親世代とか上の世代に起きた事やそれが脈々と繋がっている、歴史という時代の果てにあるんだよってことを知ることができると思うし断絶したものを繋げれる一冊になっている。
人形浄瑠璃などの文化がある日本で初音ミクが生まれて育つというかユーザーの間で育ち世界に放たれていったなどの話も興味深いがクリプトン社の伊藤社長にしている最後のインタビューは文化がいかに育って行くのか、一発屋みたいなヒットカルチャーから豊穣で次世代に繋がって行くものに育て行くかについての姿勢と新しいものは奇跡的なタイミングと出会いによって生まれてくるものだとわかる。
ボカロPたちもただ楽しむために始めたものが広がっていった。初音ミクを開発していた人たちのバックグランドにあったものが与えた影響など本書に書かれていることは「初音ミク」を巡るゼロ年の景色のドキュメンタリーだがこの十年に定番になって音楽シーンを賑やかなものにしている。
柴さんにはぜひ二十年後に起こりうるであろう「フォース・サマー・オブ・ラブ」について書いてほしい。その時二十年前に起きた「初音ミク」からの影響や類似点を挙げてもらってとなると音楽の歴史書のようになるのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
・現在の国内の音楽産業の状況をレポートした本。この活況に至る、およそ10年位前からの状況から丁寧に語っている。
・主にメジャーなフィールド、ジャンルの状況なので、自分の普段聴いている所とは違うのだけれど、それでもかなり正確な分析だと分かるし、興味深かった。
・本当、正確という言葉が合う。それは扱っている人選、データは勿論の事、本の構成すら、この話であればこの順番で語るべきなのだと感じられる。
・「自分がやるべき仕事」をやっている感じが伝わってきて、何故か読後感に爽やかさを感じた。
・読み易さもあったから?そこにも著者の意思や意地を感じた。 -
Posted by ブクログ
書店で気になったもの。最近、やっとサブスクを結構使うようになり、その界隈が気になったのも大きい。そのせいか、本書はずいぶん参考になったし楽しめた。なにより、特に2000年代後半くらいから2010年代にかけ、音楽シーンに思うところ大アリだったのが、根拠とともに言語化されているのが素敵。CDセールスがファンの証みたいな現象が起きて、買えば買うほど権利がもらえるみたいな、売り上げしか考えてない戦略の横行に辟易していたんだな。音楽の良しあし、関係ないじゃん、みたいな。ランキング見てもげんなりするばかりだったのが、最近になって状況が変わってきて、改めて音楽性が評価される時代になっている、って見解には激しく首肯。著者の他作品にも目を通したくなった。