あらすじ
2007年、初音ミクの誕生で3度目の「サマー・オブ・ラブ」が始まった。気鋭の音楽ジャーナリストが綿密な取材を元にその全貌を描ききる、渾身の一作!キャラクター文化やオタク文化、ネット文化、新たなビジネスモデルの象徴……。様々な側面から語られてきた“初音ミク”の存在を初めて音楽の歴史に位置づけ、21世紀の新しい音楽のあり方を指し示す画期的な論考である。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「初音ミク」が出始めの頃にパソコンの前で興奮した当時のことを、それから共に音楽や楽器を楽しんだ時間を、その時代背景や制作者側の意図と重ねながら読み進められました。
分量はだいぶ多かったですが、驚きと納得、共感など様々な感情を抱きながら読めたので、飽きることはなかったです。
すごくまとまりがあって、かつ分野に富んだ1冊だったと思います。
Posted by ブクログ
Webの記事でも読めますがじっくり見たかったので紙媒体で購入しました。
こういったジャンルは結果論でしかないですが、共通性やより深いジャンルを探す際に重宝すると思います。
Posted by ブクログ
ボカロの文化が「なんとなくニガテ」な人は読むべき。捉え方が変わります。元ロキノン編集者の著者が、まさにそういった層の偏見を想定しているかのようにあのいわゆる熱のある文体で、洋邦楽の音楽史の系譜としてボカロ文化を捉え、語らっています。どの音楽ジャンル嗜好者も、かならず知ってる固有名詞や単語が出てくると思います。いかにボカロ文化に対して無知だったのか、自分の中のちいさなスノビズムが簡単にぶっ壊せるのでおすすめです。
Posted by ブクログ
従来よくあるキャラクター論、アイドル論ではなく音楽史からボカロを論じたもの。今までの音楽史とボカロ史を対比しながら、ボカロが流行ったワケ、そしてブームは落ち着きこれからのボカロの行く末を近年の事例と共に論じている。「ブーム」としてのボカロが終わった今、改めてボカロを振り返ってみるのをおすすめする。
Posted by ブクログ
初音ミク現象を第三の「サマー・オブ・ラブ(音楽を中心に文化・政治的な主張を伴った社会現象)」に見立て、様々な「目立つ」当事者及び関係者との対話と著者のポジティブな想いを熱っぽくドキュメンタリーに仕立てたエッセイ。
私も聞く側+aとして真っ只中にいた。内部のドロっっっっっドロ抗争にはなるべく蓋をし(カラオケあたりやryoさんの歌詞にちらっとだけ見えるが、もっと目もあてられない状態だ)賛美的に脚色された、厚さのわりにすらすら読める楽しい文章だった。
サマー・オブ・ラブと呼ぶには現象に政治思想があるかどうか…個人的には著作権・創作の分野に一石を投じて欲しいと願い、本の中にもあるように実際動いている方もいらっしゃるが、現象全体の思想の『主流ではなかった(内部のドロドロに一役かうほど)』とも感じている。
明るい未来を感じて欲しい「初音ミクに興味を持った一般の方」にオススメしたい夢のある本だ。
Posted by ブクログ
序章「僕らはサード・サマー・オブ・ラブの時代を生きていた」一章「初音ミクが生まれるまで」二章「ヒッピーたちの見果ての夢」の流れだけでも初音ミクが生まれた背景から技術の進化とヒッピーカルチャーとコンピューターを繋いだ男、そしてアメリカ西海岸というインターネット文化の始まりから今へとわかりやすく書かれている。
一九六七年のアメリカ、一九八七年のイギリス、二〇〇七年の日本、二十年おきのサマー・オブ・ラブには「新しい遊び場」と誰でも参加可能なコミュニティと中心に音楽があった。そう歴史が繋がれている。
ゼロ年代以降に分断されたものを柴さんが意識的に意欲的に自分が関わってきたジャンルできちんと接合しようとしている感じが読んでてする。
上の世代と今の若い世代の狭間で分断されてしまった歴史をきちんとこういう流れがあって初音ミクに繋がるんだよって。すごくそういうの大事だと思う。この書籍はできれば初音ミクとかが普通にあって聴いてきた若い世代が読む事で自分たちの親世代とか上の世代に起きた事やそれが脈々と繋がっている、歴史という時代の果てにあるんだよってことを知ることができると思うし断絶したものを繋げれる一冊になっている。
人形浄瑠璃などの文化がある日本で初音ミクが生まれて育つというかユーザーの間で育ち世界に放たれていったなどの話も興味深いがクリプトン社の伊藤社長にしている最後のインタビューは文化がいかに育って行くのか、一発屋みたいなヒットカルチャーから豊穣で次世代に繋がって行くものに育て行くかについての姿勢と新しいものは奇跡的なタイミングと出会いによって生まれてくるものだとわかる。
ボカロPたちもただ楽しむために始めたものが広がっていった。初音ミクを開発していた人たちのバックグランドにあったものが与えた影響など本書に書かれていることは「初音ミク」を巡るゼロ年の景色のドキュメンタリーだがこの十年に定番になって音楽シーンを賑やかなものにしている。
柴さんにはぜひ二十年後に起こりうるであろう「フォース・サマー・オブ・ラブ」について書いてほしい。その時二十年前に起きた「初音ミク」からの影響や類似点を挙げてもらってとなると音楽の歴史書のようになるのかもしれない。
Posted by ブクログ
ボーカロイド『初音ミク』が音楽業界、また世界に与えた影響に関して書かれた本。
初音ミクを題材にしたただのイロモノ本としてではなく、丁寧に取材を重ねた新世代の音楽を見つめた本。音楽業界を変えた大きな流れ『サマー・オブ・ラブ』の第三の波として電子音楽の歌姫『初音ミク』を位置づける。2000年代から本格化したインターネットの普及による、情報革命と音楽業界の関係性やアマチュアクリエイターの勃興など、新しい時代の音楽に関しても触れている。過去のヒッピー文化やテクノ音楽が音楽の新たな『遊び場』を人々に提供しブームなり、それが文化になった背景を丁寧に解説する。そして、そのブームと文化の現象と初音ミクの関連性に触れる。著者独自の視点から初音ミクを捉えていて、とても面白かった。
Posted by ブクログ
筆者が音楽ライターなのであまり高尚な期待をしてはいけないが、総じてミクへの偏見を取り払ってくれた良書(「ニコ動を占拠する鬱陶しいアレ」→「既存の音楽潮流を受け継いだ近年日本にまれに見るシリコンバレー的開発現象」)。道産子必読。
Posted by ブクログ
初音ミクを、萌えコンテンツとしてではなく、もっと純粋に、60年代からの音楽シーンの流れに位置づける試みとして論が展開されてます。
音楽詳しくないのでいちいち知らないことばかりですが……
ツール自体の価値よりも、ネット上で人々(の創作)に相互作用をもたらすハブとしての価値に注目しているのが面白く、なるほどと思いました。2007年という年の偶然の凄さも。
「あ、これ読むなら今じゃないと鮮度落ちる」と思いました。
Posted by ブクログ
ネギを振る少女がフランスでオペラをするようになったという壮大な出世物語……なんですが、確かに、初音ミクって最初はオタク向けのネタキャラかと思っていた。けれども、初音ミクはみんなの創りたいという気持ちにマッチしたツールであり、それを生かすニコニコ動画やYoutubeなどの土壌があって花開いたのだなぁとしみじみ。初音ミクの曲が聴きたくなる。
にしても、帰ってきたヨッパライが根に有るとは知らなかった(笑)
Posted by ブクログ
今や日本を代表する歌姫となった、初音ミク。
彼女はどのようにして生まれ、どこに行こうとしているのか。
この本はその初音ミクを、音楽的側面から見た初の本と言える。
ボーカロイドが開発されたその経緯や、ニコ動でのブレイクしていく様子。
それをきっかけにして様々な作曲家が生まれ、ついにはパリでオペラ公演をするに至るまで、非常に多くの人々にインタヴューが載せられている。
一読して感じたのは、この初音ミクという現象・・・日本のあらゆる物に神がやどるという思想や、日本の先端的音楽技術、様々なキャラクターを生み出し育てるという文化的土壌が背景にあったことが、単なる流行りではない、一つの新しい世界を生み出したことが分かる。
おそらくは日本以外ではこんなことは起こりえなかっただろう。
ネットでの音楽配信やダウンロード時代の到来は、音楽の衰退を招くどころか、新しい可能性を切り開いたと著者は説明する。
ミクをきっかけにして多くの才能が生まれ出でた事実の記述に自分は驚嘆した。
このような流れは今後も続くだろう。
グーグルやトヨタなど様々な企業とコラボし、海外でのライブは熱狂をもって迎え入れられた。
世界へと羽ばたく初音ミクの広がりは、とどまることを知らない。
彼女が繰り広げるこの舞台は、まだ序章が始まったばかりのようだ。
Posted by ブクログ
「世界を変えた」のが前提で、それがなぜかと問う本。僕のあずかり知らぬところで、たしかに世界は変わっていた。
誰が音楽を殺すのか。DTMとインターネットで音楽は死ぬかと思われたが、死ななかった、というより新たな生命を手に入れた。オタク論でもボーカロイドの技術の話でもなく、ミュージックシーンに起こったムーブメントを、ボカロ誕生どころか、ヒッピー時代から辿っていく本。
ネギを振らせて遊んでいるうちに、とてつもないことになっていた。三回目のサマー・オブ・ラブ。ボカロPは必ずしも過去のミュージックシーンを気にしていない人も多いだろうけれど、こうしてつなげてみるときっとつながっている気がする。とはいえ僕は今、No Music,Yes Lifeだからなあ。Music方面よりも、やっぱり産業側でない人たちが起こした変化の歴史、として楽しもう、と思いつつ、割とボカロ欲しくなった。