中山市朗のレビュー一覧
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客観という恐怖
この本に集められた怪談はやたらと恐怖を煽る有象無象の怪談とは一線を画している。語り手の主観を排し淡々と事実だけを記録している怪談は、おどろおどろしい脚色が及びもつかない不気味さを醸し出している。
そんな客観的な恐怖を体現している、普通の怪談と比べるとかなり異色な話がこの新耳袋第一巻にある。
それが「第十七話:千日前のタクシー」だ。これは、いわゆる「幽霊を乗せてしまったタクシー運転手」の話である。しかし視点の位置が普通じゃない。語り手が目撃したのは「火災のあったビル前で、なぜか止まったタクシーが、誰もいないところでドアをあけ、誰も乗っていないのにも関わらずメーターを倒して走りだ -
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サイキック青年団をリアタイしていて、そこで初めて山の牧場の話を聞きました。聞いたの もう何十年も前で、radikoとかは当時まだなくて深夜にリアタイしていたんだけど、ものすごく奇妙なお話だったからいまだに覚えてて。
だけど、思い出補正がかかってる部分もあるかもしれないと思い、こちらの本をお迎えしてみました。
私が当時ラジオで聞いていた内容以上のものが載っていて…
興味深く読ませて貰いました。
中山さん発信だったんだ、知らなかった。あと、こちらには、サイキックで語られる以前の情報と放送後の情報も結構詳細に載っていて、山の牧場の変容を知ることができたもの良かったです。
怪談狩りっていうタイトル -
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ネタバレ『怪談狩り』シリーズは毎回楽しみに読んでおり、今回も興味深く読みました。
表題作「逆さ煙突」は、雄別の逆さ煙突の話。「今度、Мさんから俺の怪談、聞いてください」の言葉が怖くてよかったです。
肝試しに行く友人に警告しつつ付いてきてくれる友人の話である「友人の警告」、訳アリ物件に住んでいる本人がおもしろ怖い「訳アリ物件」、空き家で奇妙な葬式に遭遇する「アッちゃんのお葬式」、近所の社長宅の異変を語る「庭の祠」、不思議な店員のいる「納得のいかないラーメン屋」、お盆に会社の指示である島に出張し奇妙な風習を目にする「島の奇習」などが印象に残っています。
その他あわせて55話くらいあるので、好みの話がいくつ -
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「カワタロウ」「タザキさん」「友人の警告」「子守歌」「新耳袋」「逆さ煙突」「無線」「矮鶏」「湖畔の女」「おばあちゃん」「島の奇習」。怖さが残った11編。
「カワタロウ」は、増水した川に近づくなと言う警鐘の口伝だとは思うけど、それだけでは説明できない怪異があるという要素が怖いです。ちょっと前にSNSで話題になっていたんだよね。ひだる神はハンガーノックで云々だけど、それでも説明できない事例が怪異なんだろうな、という。理解・解明できれば科学、そうでなければオカルトだとは思っているけど、どこまで科学が進歩しても解明しきれない部分はあるし、増えてゆくと思うので、どちらの界隈も盛り上がって欲しいです。相 -
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★3.5
それは「呪い」と呼ぶには、生々しすぎた。
感情の残滓。粘つく執着。何かの、なれの果て。
怪異蒐集家・中山市朗による、実話怪談。双子の姉妹が織りなす、凄まじいまでの執着と嫉妬。そしてそれがもたらす怨念の連鎖。
「なまなり」とは、恨みが骨の髄まで染み、鬼と化す寸前を指す。怨みが言葉を持たず、しかし確かに形になろうとする、その発火点。
本書は怪異譚という枠を超えて、人間の怨念の深淵と、その不気味なリアリティを映し出す。読後の静寂は、決して安堵ではない。むしろ、底知れぬ闇が確かにそこにあることを、実感する時間なのだ。
人を呪わば穴二つ。
呪いは姿を変え、名を捨て、ただ影として這い寄り、 -
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著者自身がYouTubeで話していたのを半分ほど聞いていましたが、後半は予想を上回る恐ろしい展開にゾッとした。脚色無しの実話ということを踏まえると、語り手が述べているように読者も「呪い」の類を信じる信じないの二元論ではなく、事実として受け入れざるを得ないとなってくる。最も解釈は自由ではある。読み終えて、頭に過ぎったことは被害者?家族に起こった長きにわたる不幸は、呪をかけた一人がもたらしたものなのか、その家系にまつわる過去の怨念的なものなのか、誰も明確な説明をしないので分からなかった。事実はミステリー小説のようにすっきりとは終わらない、このようなものだろうと考えれば余計にこの本で語られたことが恐