芸人になる夢を捨て、郷里の温泉街で働く隼斗のもとに、元マネージャーの時田が現れた。
隼人に向かって「迎えに来た」と言った彼は、隼人に新しくできる劇場の専属の漫才作家になってほしいという。
隼斗はその申し出を、一度は捨てた夢だから、と即答で断るけれど、時田はそんな隼斗を諦められないと言い、温泉街
...続きを読むにとどまった。
そのことから、隼斗が必死になって封じてきた、お笑いへの熱い思いも、時田への密かな想いが溢れ出してしまう……
という話でした。
隼人は一度は、ちっとも売れなかった芸人への想いも、本心を最後まで告げてこなかった時田への想いも割り切ったつもりでいたけれど、実のところ、お笑い番組も今までの自分のネタ帳も見ることができないくらい、未練があって。
それを必死に覆い隠して、自分はこの温泉街の人間なのだから、と言い聞かせるようにして日々を送っていた。
そこに突如再び、時田が現れて。
あろうことか、隼斗の都合も聞かずに「迎えに来た」と言い出した。
もちろん、隼人は大混乱。
挙句、断腸の思いで切り捨てたはずの過去を突きつけられて、思わず、時田に対して怒鳴ってしまう。
それでも、私情も含めて、隼斗を連れて帰ろうとする時田は、隼斗の実家である旅館に泊まり、隼斗を説得しようと試みてくる。
で、まぁ、結局は隼人はその時田の説得に折れて――というか、自分の気持ちに正直になって、再び芸人の世界に戻ることになる。
それが一つ目の話。
それから、少しずつ時間が進んだ二つの話が入ってました。
二つ目の話は、実家での後始末を終えて、東京に出てきた隼人が仕事で時田とぶつかり、自分の仕事のやり方はこれでいいのか、と思い悩む話。
それともう一つは、そこから更に一年が経ち、関係が落ち着いた二人の間のちょっとした嫉妬の話。
普通の恋愛小説みたいな綺麗なハッピーエンドじゃなくて、ちょっと泥臭かったりする話でしたが、だからこそ、互いが恋人同士として続いていくんだろうな……と思うような最後で、とても面白かったです。
甘くはないけれど、素敵なBLを読みたい方にはオススメします!