サービスの提供価格を抑えつつもビジネスとして事業を継続して提供することを目指し、
共済型・非施設型の病児保育のサービス、また母子家庭等一人親のためのさらに価格を抑えた
病児保育サービスを行う、NPO法人フローレンスの代表である駒崎弘樹さんの本。
31歳の駒崎さん。
ある日ベビーシッターをしていた実家のお母さんから突然の電話。
お気に入りのお客さん(双子のママ)から、
もう今日でシッターを終わりにしたいと突然言われたとか。
驚いたお母さんは「私が何か悪い事をしてしまいましたでしょうか?」と
恐る恐る聞いたところ「いえいえ、駒崎さんには本当に感謝しています。
私が会社をクビになってしまったので、もうシッターをお願いする必要がなくなったんです。」
とお客さんに言われた、と。
お母さんが理由を尋ねると双子のママは
「先日子どもたちが熱を出してしまいまして、
保育園では 37度5分以上出ると預かってくれないので、
会社を休んで看病したのです。
双子だったのでお互い移し合ったりして結果的に長い期間休まざるをえませんでした。
そうしましたら会社が激怒し、解雇ということになったんです。」と。
子どもが熱を出すというのは当たり前。
それを親が看病するのも当たり前。
私たちは当たり前のことをして職を失う社会に住んでいるー。
これが駒崎さんが感じた社会への違和感です。
そして大学卒業後病児保育のビジネスを立ち上げることにしました。
けれども、病児保育の世界は厳しく保育園の数と比べると病児保育施設は2%。
地域的にみると全く使えないところもあります。
なぜそんなに少ないかというと経済的になりたたないからです。
世の中では必要が増えているのに、国の補助金等をもらったとしても
やれば必ず赤字という仕組み。誰も進んで参入しません。
いろいろ考えたあげく、昔近所にいた「松永のおばあちゃん」のことを思い出します。
血のつながりも何もないけれど、近所で子どもを預かってみてくれていたおばあちゃん。
そういう人にお願いすれば施設を構える必要もありません。
あとは松永のおばあちゃんみたいな人が、いざという時は
近所の病院や医師に助けを求められるバックアップ体制をつくり、
サービスの提供料は1ヶ月いくらという定額制の共済型掛け捨てにして、
この定額料金でひと月に1回は無料で利用できるというサービスにしたのです。
子どもが小さい時にこのサービスを利用した人が、
いつか子どもが大きくなれば今度はみてくれる側になるかもしれない。
そんな可能性もあるサイクルです。
サービスをはじめると大手企業が社員のために入会してくれるケースもあり、
やがて評判が広まって厚労省が見学に訪れます。
そして二ヶ月後には「施設を持たない病児保育を国が行います」という新聞記事となり、
つまり駒崎さんのアクションが国をも動かしたのです。
駒崎さんはこの後、病児保育を利用したくてもさらに利用できない一人親が
現在の世の中にどれだけ多くいるのかということに直面することになります。
その多くは非正規労働者でその半数は雇用保険に加入していません。
失業しても半数は失業保険を受けられないのです。
会社を休めば職を失ってしまう、だから子どもに
「熱が出たらお母さん会社にいけなくなっちゃうよ」とどやしつけるところまで
追いつめられてしまう、逆に子どもは自分が熱を出したらお母さんが職を失ってしまうと
子どもながらに罪悪感を精一杯感じて頑張ってしまう。
家の中に緊張感が張りつめている状態ー。
そんな思いがあり新たに始動した「ひとり親パック」。
サービス提供料を抑える分の財源を通常サービスの収益を充当するカタチでなく、
こっちのプログラムは新たに単独で寄付等の財源を獲得することとなり、
まさに現在の日本のファンドレイジング(資金調達)部門の第一線をいく
ファンドレイジング協会の鵜尾さんに、駒崎さんも相談します。
個 人のサポート隊員制度、クリック募金への参加、
やがて企業の寄付を得るまでになり、ひとり親パックも動き始めるのです。
ひとり親パックを利用したあるお母さんから、
サービスを利用し始めるやいなや子どもが高熱を出したんですという手紙が届きます。
「子どもが、疲れた時にやっと熱を出せるようになりまし た。」
そんな駒崎さんのNPO「フローレンス」の経験談を中心にしながら、
日本における寄付文化醸成の必要性、また私たちが個人としてで きること、
行政職員だったらできること、特別の技術や専門知識を持っていたらできること、
教師だったらできること、マスコミの世界にいたらできること、
学生だったらできること、大企業に勤めていたらできること、
議員だったらできること、有名人だったらできること、
子どもを持つ親だったらできること、
これからの社会への関わり方を様々に説いてくれます。
ところどころに挟まれる数々の先人たちのコトバも素晴らしいー。
企業は顧客への販売によって金を手にする。
政府は税金を取る。しかし、非営利組織は、寄附金を募らなければならない。
ー P.F.ドラッカー「非営利組織の経営」
世界のどこかで、だれかが被っている不正を、
心の底から深く悲しむことのできる人間になりなさい。
それこそが革命家としての、いちばん美しい資質なのだから。
ー チェ・ゲバラ「娘への最後の手紙」
国があなたのために何ができるかではなく、あなたが国のために何ができるか、
問いかけてください。
ー J.F.ケネディ
未来なんて、ちょっとしたはずみでどんどん変わるから。
ー 藤子・F・不二雄「ドラえもん」
あなたが見たいと思う変革に、あなた自身がなりなさい。
ー マハトマ・ガンジー
発展した末の多様な社会にあるニーズもまた多様で、
NPOなどはその多様さにピンポイントで応えられる可能性があります。
NPOはボランティア団体でなく、 非営利組織の「非営利」は
収益を株式会社などのように株主に分配するのでなく、
自らの公益活動の継続に必要なために使います。
だから継続させられるように人件費も当然にいれば、
新たな事業展開への投資も必要です。
「寄付」というと、ひとむかし前はどこかに頼まれて断れずにするような、
強制的でうさんくさいようなイメージもありましたが、
これからの寄付は駒崎さんの言うように、
自分がこういう社会にしたいという社会像への投票や投資として、
私たちの方から積極的に社会を作る参加の方法となると思います。
とはいえ難しく考えなくても、
自分が思っていないところで寄付している可能性もあります。
たとえば年賀状を書くときに絵を考えるのがめんどくさいから
最初から絵入りの「寄附金付年賀状」にするだけで、
50円+アルファの部分は様々な社会貢献事業や福祉事業を行う団体に
助成金としてまわっています。
それを知っていれば、年賀状であえて「寄附金付年賀状」を買うという選択もアリです。
そうそう、宝くじをしても競馬をしても一応遠回しで寄付していることになります(笑)
また最近は企業のあらゆる商品の販促と兼ねて、
買えば どこかに利益の一部が企業から寄付に回される商品というのがたくさんあります。
これをコーズブランドといい、たとえばちょっと前だとアサヒスーパードライを買うと
それぞれの地域の売上げに応じて、売上げのいくらかが
地元の環境問題を解決するNPOに寄付として回っていました。
こういうキャンペーンのときに、どうせ毎日買う日用のものなら、
寄付金がついているものを買う、というのも選択です。
自分たちさえ良ければいいという儲け方の企業や仕組みが、
脆く壊れていくのは既に幾度か目にしたところです。
大きな変化はあの時やあの時に、始まっていたんだなあと思います。