森泉岳土のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルが「佐々々奈々の究明」とあるにもかかわらず、妹である流々が動いて事件の情報を集めるところに若干違和感があったが、読んでいくうちに『安楽椅子探偵』という言葉がシックリと来る作品であった。
トリックに関しては他作品で使い込まれている内容で派手さに欠けるのと、事件を説明するあまり、遊びのコマが少ない印象があるが、事件関係者(主人公姉妹含む)の人間関係の歪さとやり取りが見所。
事件をきっかけに奈々と流々が普通の姉妹に戻っていこうとする様子や一部の事件関係者達が和解していく終わり方に光が見えた。
機会があったらこの姉妹の活躍をまた読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレついにジョージ・オーウェルの1984を読んだ。いや、厳密には読んでいないが、森泉岳土による漫画版「オーウェルの一九八四年」を読んだ(オーウェルの、と付くところが良い)。
救いがないとは聞いていたが、本当に。
でも何より救いがないのは、読み終わったときに「ああ良かった、怖い話は終わった、"あんなんとは無縁の"現実へ戻ろう」と心から思えないところだ。
あとは備忘メモ。(ネタバレもあり)
・舞台はロンドン、ただしイギリスではなく「オセアニア」という国。オセアニアを率いるイングソック党の党首ビッグブラザー(BB)がすべてを監視し、好ましくない兆候があれば「思想警察」に連行される。党は人々の行動、音声、表情ばかりでなく、心臓の鼓動まで把握している。(エマワトソンとトムハンクスの映画の原作の)「ザ・サークル」と同じだ…と開始3ページでざわつく私。サークルという会社に入社したメイは、入社オリエンテーションのなかで、これが私たちの誇る新しい社員健康管理の方法なのよ、とアプリ?の仕込まれたスムージーみたいなものを飲まされていた(といってもあの輝かしいサークルの一員になれたことが嬉しいメイは喜んで飲むんだけど)。私事ながら、「端末の利用状況を送信する」のチェックを外させることにはうるさいくせに、人の身長体重歩数をほぼ強制的に送らせる"ヘルスケア"施策、ほんと嫌悪。
・党のやり口。景気が回復していると喧伝する(人々は剃刀の刃一枚、穴の空いていない靴下ひとつ都合できない生活だが、チョコレートの配給が増えたとかで喜んで、BBの手腕を褒め称えている)。
・そのときどきのBBの発言に合わせて、記録局は出回っているあらゆる文書を修正する(訂正版であるという印などもちろん付けない。「いわば」「すなわち」「するなかにおいて」といった文言を散らしておけば、ありもしなかった演説を捏造するのは容易い、と記録局務めの主人公ウィンストンは言う)。
・「二重思考(ダブルシンク)」によって人々の記憶までも改竄させる(矛盾している二つの事柄を両方とも頭から信じ、忘れなければならないことは忘れ、必要があればふたたび思い出す)。
・「新言語(ニュースピーク)」という新しい公用語を制定する(実際のところは、言葉の破壊なのである。「良い」で十分なので「素晴らしい」「申し分ない」は削除、「悪い」という曖昧な言葉も無くし「反良い」とする、など。言葉が削られれば思考も縮小される。それが狙いである)。
・隣国への憎悪を植え付け、戦争を正当化する。(敵国は「ユーラシア」であったり「イースタシア」であったり、そのときどきによって変わる。この三大国は戦争状態を維持し続けることによって、富の増加による階級社会の不安定化や崩壊を防ぎ、各国の支配階級が永遠に権力を持ち続けることができるという仕組みをもって結託している。この秘密については漫画では描かれておらず、さっきWikipediaで読んで知ったことだ)。
・このような社会で教育を受けた子どもは、戦争好きに育つ。無邪気に「人民の敵!」などと叫ぶ。ウィンストンの隣人パーソンズはのちに自分の七歳の娘に告発されて思想警察に連れ去られる。このような一般市民によるスパイ行為は英雄的ということで大いに賛美される。
・この社会の仕組みに違和感を覚え、ひそかに日記をつけ続けていたウィンストンは、小道具屋チャリントン、党の高級官僚オブライエンなど、このモヤモヤを共有できるかも?と思える人々との接触を通して、社会転覆の希望をわずかに持って生活しているが、実は体制側の人間であった彼らに裏切られ、恋人ジュリアと共に思想警察に連行される。そして「治療」という名の壮絶な拷問を受け、受け、受け、……党を愛する従順な一市民になるのだった。信念打ち砕かれる瞬間の1ページの表現が、つらかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「文藝」で春樹やカフカを漫画化していた人。
僕が好きな安永知澄も参加する同人誌「ランバーロール」の人。
柴崎友香「寝ても覚めても」の表紙絵の人。
と、ニアミスを続けてきたが、初めて漫画を手にした。
ら、手法も内容もすごい!
「祈りと署名」〔イリーナ〕シリーズ。スヴェトラーナお嬢様をご主人に擁した屋敷。に恋人として入り込んだイリーナは首絞めセックスを。上の階には婿養子がいて、イリーナはそいつを。そして犬を。
「惜しまず与えよ」〔イリーナ〕シリーズ。スヴェトラーナの妊娠、父は? 執事? 庭師? 首絞めの指の跡=署名。
「灯は消えてイリーナは」〔イリーナ〕シリーズ。スヴェトラーナは去り、残されたイリーナは男たちに。
この連作、もはや澁澤龍彦が愛したサド、コクトー、マンディアルグ、クロソウスキー、バタイユ、レアージュ、ユイスマンスに、悠然と迫っている!
「ハルはきにけり」アルゼンチン→ナイゼンチン。
「トロイエ」影絵。
「夜は昵懇しく 中原中也「湖上」による」
検索してみたところ、大林信彦長女と結婚しているとか。10歳くらい年上だとか。
顔を描くかどうかで逡巡して顔を描くことに踏み切ったとあとがきにあるが、影絵でも顔は見えている。顔は見えていても影が見える。
この作家には付き従いたい。 -
購入済み
イマイチ
これは面白そうだと期待して読んだんですが、正直ちょっと肩透かしでした。
絵柄と演出に強烈な作者さんだけの個性を感じましたが、それだけでした。
肝心のストーリーがイマイチ。 -
購入済み
つまらなくも面白くもない
試し読みを読んで、一気に上下巻買ってしまいました。
つまらなくはなかったですが、期待したほどには面白くもなかったなという印象の作品です。 -
Posted by ブクログ
1984年にポイントを置いて、1984年を予言的に描いたジョージオーウェルの1984。そして奇しくも同じ1984年に刊行され、ノルウェーの森につながっていく短編の蛍。これをなぜか結びつけて、漫画で描くという企画。確かに、愛がテーマになっていて、超監視社会の中で、自由を求めた主人公を描く1984、そして本作をモジュールにパラレルワールドを舞台にした愛を主とし1Q84を描いた村上春樹。根源は、何を考えているのかわからない不思議な女性、退廃的でもなく、ただ不思議で、つかんでも掴みきれず、ふわっと消えてしまった話。
そして、1984は、ビッグブラザーに支配され、自由を求めていた中で、愛を見つけてしまう。禁止されている、監視から逃れた愛、そして、その自由を求めて出会った人は、監視側の人間で、拷問に次ぐ拷問、そして最後に、相手を売って、身代わりにしてくれと言葉にしてしまう。心の中にまで入ることはできない、そしてそれこそが、思考こそが自由である。しかし、監視社会では、その心の中にまで入ってきて、全てを破壊し、消すことができてしまう。拷問というわかりやすい事象で説明するが、もっと恐ろしいのは、いつの間にかコントロールされていることに気がつかかないこと、愛を失うことだ。ほんで読むものとは情報量が違うが、エッセンスを凝縮して、わかりやすく表現されている。タッチもすごく心にグッと刺して来るような、影と光を影から描くような感じ。