南木佳士のレビュー一覧

  • 阿弥陀堂だより

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    行き詰まりを感じている作家、孝夫。その妻、美智子は医師。妻が心の病を得たことで、故郷の信州に戻ることにした二人。そこで出会う「阿弥陀堂」に暮らす、おうめ婆さん。難病とたたかっている、小百合ちゃん。

    4人の人物それぞれに、目の前に迫ってくるようでした。心に染み渡る文章そのものの魅力とあいまって、忘れがたい作品になりました。(感動する部分が多く、付箋多し!)私たちは、生きているというよりも、生かされているのだという、背筋が伸びるような、そんな気持ちになりました。

    作者は医師ですが、医療従事者でなければここまでの描写はできないだろうと感じました。真っ直ぐに医療と向き合っている、嘘偽りなく生きてい

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    2025年02月03日
  • 阿弥陀堂だより

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    孝夫が育った街にある阿弥陀堂で生活するのは、身寄りのないおうめ婆さん。中学に上がるは春に家を出た父からの連絡を受けて自らも東京に出て行き、そこで将来の妻となる美智子と出会う。医師になった美智子は授かった子どもを胎児で失ったことをきっかけに、それまでの東京でのハードな仕事もたたってか、精神を崩してしまう。孝夫が移住した谷中村にっ戻り、そこでおうめ婆さんや村の診療所、そしておうめ婆さんの話を聞き取って「阿弥陀だより」を書く小百合ちゃんらと出会い、少しずつ彼女の気持ちも回復に向かっていく。

    立脚点―この小説を読んで、そんな言葉を思い出した。自分はどこに立っているのだろうか。都会での生活は、自分がど

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    2024年06月09日
  • ダイヤモンドダスト

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    表題作のダイヤモンドダストについて。

    主人公の和夫と今この文章を書いてい僕とでは、「死」との距離感がずいぶん違っているよなと思う。僕にとって「死」はまだ遠い存在で、祖父母を除けば自分とごく近しい人の「死」というものを経験したことがない。母方の祖母は「死」というものを理解できていないような時に亡くなってしまったし、2人の祖父の死はあまりにあっけなく、見送りもあまりに静かで、この世で長年生きたとしても最期は結局こんなものかという虚しさだけが残った。「生」の一番端っこにある「死」が虚しいのだとしたら、いったい「生」に何の意味があるというのか。「死」そのものよりも、「死」の前に流れる「生」の時間がか

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    2024年05月04日
  • ダイヤモンドダスト

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    芥川賞とった頃に読んでいたと思っていたが、初めて読んだようだ。北軽井沢あたりを設定した病院のやもめの看護士の眼線で人の死をみつめた非常に静謐な冬の高原での人の見送りを書いています。四歳くらい南木先生の文章は丁寧で惹かれます。

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    2024年02月11日
  • ダイヤモンドダスト

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    4編の短編からなる短編集。ダイヤモンドダストは芥川賞受賞作。

    前半の3編は、タイでのカンボジア難民の医療支援に関連した物語。最後の1編は、脳卒中で倒れた父との晩年の物語。
    死ぬまで運転士だった松吉と、ベトナム戦争にパイロットとして従軍したマイクの同じ病室での繋がりが印象的だった。

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    2022年12月18日
  • 医学生

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    ネタバレ

    解剖学実験=価値観が変わる死体の解剖
    ポリクリ=病院実習
    モルヒネ=安楽死剤

    飾らない小説で、現実を見れた気がする。
    医者は、命を救う側ではなく命を看取る側だと悟ったときの苦悩を知れた。

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    2022年11月11日
  • 阿弥陀堂だより

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    ネタバレ

    「映画は小説とは全く別のものですから」

    南木さんはそれだけ言い、小泉監督に映画化を快く了承したそう。

    両方好きな僕には言い方が引っかかる。

    寺尾聰を追いかけて、映画→原作と進んだ10数年前とは逆に、今回は、原作→映画と進んでみた。

    たしかに、南木さんの言い方もわかる。

    でもそれは、映画(映像)と文字(連想)の表現方法の違いかも。

    この映画がすごいのは、原作そのままの描写•セリフを点と点にして、その間を、原作を損なわないギリギリの演出で繋ぐ。

    原作の延長線上に、キャラクターを創出していたりもする。

    これは原作に惚れ込んだ人(監督)にしか成し得ない業。

    原作も映画も極上。

    でも

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    2022年09月17日
  • 阿弥陀堂だより

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    ネタバレ

    面白いのが、なんといっても阿弥陀堂に住むおうめ婆さんの存在。
    主人公はおうめ婆さんのことを社会からあぶれた生活保護受給者のように見ていて、弱い者、守ってやるべきものとして捉えているふしがあるんだけど、阿弥陀堂に通うにつれ、おうめ婆さんにホトケのような神々しさが見えるようになってくる。
    「方丈記」や「歎異抄」が作中に出てくるけど、このおうめ婆さんこそが、鴨長明であり、親鸞なのだ。
    1年間の山里生活を経て主人公は、その地にどっしりと根をはり今を淡々と生きる人の強さを理解し、心の礎のようなものを得る。
    踵を地につけることの「確かさ」を実感できる本でした。

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    2022年02月13日
  • ダイヤモンドダスト

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    医師でもある筆者の目を通して描かれる医療の現場の状況はとても迫力があると感じました。
    いろんな立場の人のいろんな視点での見方があり、正解がどれかを自分自身考えさせられるようなところもありました。
    また、難民医療について、現場は機器も揃わないような過酷な環境であり、そうした生々しさというか綺麗事ではない部分も丁寧に描写されていました。
    一気に読んじゃいました。

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    2021年10月13日
  • ダイヤモンドダスト

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    ネタバレ

    第100回芥川賞受賞作。
    「冬への順応」は浪人時代のぼくと千絵子の関係を描く。浪人時代から医学生時代、そして現在と、ぼくと千絵子の関係性が移ろうが、死期が迫ったからこその関係性が美しく描かれていた。死を目前にぼくに再開した千絵子は「生きてた」と思える最期を果たして送れたのだろうか。
    「長い影」はカンボジア難民医療団時代のメンバーであった、ぼくとフランス語を話す看護婦(原文ママ)の女の物語。「役人」的な治療をしたぼくと、周りからたしなめられるほど難民に肩入れをしていた女とでは、人道的には女の方が善であるように見える。しかし、それらの出来事は事実として地の文に淡々と描き、善悪の視点は女のセリフに感

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    2021年03月19日
  • 阿弥陀堂だより

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    心を病んだエリート医者の妻と作家兼ほぼ主夫の主人公。田舎っていいな。闇雲に頑張り続けることだけが人生ではないと思った。

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    2021年01月03日
  • 阿弥陀堂だより

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    ネタバレ

    人生の折り返しに差し掛かり、故郷の集落に戻った夫婦の生活を描いた物語。

    おうめさんの飾らない、それでいて核心をつく言葉が深く心に染み入って、何度か涙を拭った。
    季節が巡り生命が芽吹きまた枯れていく、それをあるがままに受け入れることの美しさを感じた。
    心に柔らかな温もりが灯るような一冊。

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    2020年03月14日
  • ダイヤモンドダスト

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    芥川賞受賞作映画で、私のベスト10に入る「阿弥陀堂だより」を書いた人。
    映画の中の美しい風景と、暖かい物語が何時までも忘れられない。br />
    それなのに、随分前に話題になったこの本を読んでなかった。
    100回記念の時の芥川賞受賞作。。
    メモが長くなってしまった。

    1989年の著者の近影があった、ひげを取ったら私の主治医の先生に良く似ていて驚いた。うちの先生も佐久の総合病院で研修生時代を過ごしたそうだ。今頃になって同じ病院かどうか聞けないけれど。そのうち切っ掛けを見つけてと思っている。


    日常勤務している信州の病院が舞台で、4つの短編に別れている。短編といってもただのショートストーリ

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    2020年01月30日
  • ダイヤモンドダスト

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    ネタバレ

    医療に携わる人々をテーマにした短編4本。

    重い内容で気が進まなかったが、読後は不思議と心を鷲掴みにされていた。
    何も対話だけが心を通わせる手段ではなく、また、それだけに価値があるわけでもない。皆あるがままに生きて死んでいくのだと腑に落ちるような感覚になる。
    物語の中に浮かび上がる生と死が、命の煌めきとして昇華されていくようだった。
    表題作はみるみる引き込まれて一気読み。

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    2020年01月14日
  • 医学生

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    再読。
    何度読んでも、改めて心動かされる。

    確か、南木佳士さんはこの本を読んで知って、当時刊行されていた本は、ほぼ全て読んだ。
    この本以外はちょっと暗いというか、辛いというか、そこまで好きになれなかった記憶がある。

    この本のあとがきには、「この本は大衆小説、本当に書きたいのは純文学」というような記載があった。
    僕はもしかしたら、大衆小説派なのかもしれない。

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    2019年09月29日
  • 山行記

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    ネタバレ

    2016/5/19 メトロ書店御影クラッセ店にて購入。
    2018/4/9〜4/11

    初めて読む作家さん。本屋で発見して購入。歳をとってからの登山。年甲斐もなく重いテントを背負っての長距離山行など、あなたは私か、っていうくらい重なった。機会があれば、小説も読んでみたい。

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    2018年04月11日
  • 医学生

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    誰しも必ず死と隣り合わせで、必死で生きてるんだなと思わせてくれた小説だった。人生、経験を通して、何を大事と思うかで生き様が変わってくるのだろう。

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    2016年05月13日
  • 阿弥陀堂だより

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    新人賞だけは取れたがそれ以降鳴かず飛ばずの作家。将来を嘱望される女医。2人はいろいろありながらも寄り添い夫婦として生きて来た。40歳を超え、妻が心を病んだ事をきっかけに生まれ故郷の長野の寒村に移住を決めた。

    自分ではどうしようも出来ない心の病と対峙するのではなく、心休まる風景や人々の中で自分を取り戻していく妻の姿にこちらも次第に心の奥がほぐれてきます。実際とっても心が広くて優しくていい女です。緑の山に囲まれていきいきとして来る姿がとってもチャーミングです。
    阿弥陀堂のおうめ婆ちゃんが可愛らしく、一度も村を出た事が無く、数十年阿弥陀堂の周辺だけで生きているのに、毎日の生活を大事に生きている姿に

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    2016年01月31日
  • 阿弥陀堂だより

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    読後感がとてもさわやかだった。
    救いのあるストーリーで、物語が見事にまとまっている。
    間違いなく名作、誰にでもお勧めできる。
    この作品に出会えたことに感謝。

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    2015年04月20日
  • 医学生

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     この年代特有の揺れ動く心が見事に描かれています。自分の学生時代を思い返しながら読みました。医学生ではありませんでしたが、共感できることがたくさんありました。

     医学生特有の生死に関わる問題に真剣に向き合う姿にも感動しました。名作中の名作です。

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    2017年08月15日