南木佳士のレビュー一覧

  • 阿弥陀堂だより

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    私が南木さんを読み始めるきっかけとなった作品。SNS「やっぱり本を読む人々」の100冊文庫企画に推薦するために再読しました。

    特筆すべきは96歳の老婆・おうめが小百合に答える言葉の数々でしょう。それを語らせるために、この物語は書かれたのではないかと思います。
    『目先のことにとらわれるなと世間では言われていますが、春になればナス、インゲン、キュウリなど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふうに目先のことばかり考えていたら知らぬ間に96歳になっていました。目先しか見えなかったので、よそ見をして心配事を増やさなかったのがよかったのでしょうか。それが長寿のひけつかも知れません。』

    そして、最

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    2016年08月05日
  • 医学生

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    四人の医学生は「自分で未来を選んでいる」ように見えて、実際には環境や時代、出身の制約に強く左右され、逃げ切れない状況の中で自分の形を作らざるを得ない。その過程で「大人」や「医者」に変わっていき、まるで流れに押されるように進んでいく「受動性の青春」を強く感じた。事情が人を変える、人は事情を変えられない—青春の熱気や混沌は、あとから振り返ると「避けられない通過儀礼」になってしまう。「青春=自由の象徴」ではなく、「青春=環境に形成される過程」である。

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    2025年09月22日
  • 阿弥陀堂だより

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    パニック障害の描写がリアルだなと思ったら、南木先生自身がそれを理由に病棟をお辞めになられていたのか。テーマは重いが、変に感傷的なトーンがなくて良かった。

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    2025年04月20日
  • 医学生

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    医療・青春小説。

    新しく設立された秋田大学医学部を舞台に、四人の医学生たちの苦悩と成長が描かれていた。

    著者は、実際に医師として活動。
    その体験をもとにこの作品を執筆されている。

    この物語では、医療現場で直面するさまざまな難題や、命の重みが心に響く。

    挫折や不安を抱えながら秋田大学医学部に集まった和丸、京子、雄二、修三の四人の学生が、解剖実習や外来実習などを通じて成長し、自分の生き方を見つけていく姿が描かれている。
    彼らは医者を目指しながら、失恋や妊娠、患者の死といった様々な経験に向き合い、友情を深めていく…

    物語の後半では、彼らが15年後にどのように成長しているのかも描かれている。

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    2024年08月28日
  • 阿弥陀堂だより

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    ネタバレ

    売れない作家の孝夫は、心の病に罹った妻の美智子の療養も兼ねて、故郷の信州に戻ることにした。
    不器用ながら田舎暮らしをしていくうちに、挫折を知らないエリート医師だった妻の、病以降の屈託がほどけてゆく。

    集落のはずれで村人の霊を祀るおうめ婆さん。
    山の上にある小さな阿弥陀堂に住み、ほぼ自給自足で暮らしている。
    役場の若い事務員、小百合がおうめ婆さんに取材しまとめたものが、村の広報誌の中のコラム『阿弥陀堂だより』だ。

    おうめ婆さんから、余分な力を抜いて自然体で生きることを教わる孝夫と美智子。
    病気の再発で再び死と向かい合う小百合。
    小百合の治療をすることで、医師としての自信と責任を取り戻す美智子

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    2024年03月18日
  • 医学生

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    すごく人間味あふれる本だと思いました。
    悪い意味ではなくただ淡々とリアルな人間生活が描かれており興味深い内容だと思いました。

    自分自身医者にお世話になるときにもう一度読み直したいと思います。

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    2024年02月27日
  • 医学生

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     マニュアルに若干の経験を加えて診断、治療をする。治る者は治り、治らない者は治らない。よほど鈍感な医者でない限り、自分が神でないことを知るのは早い。その後、神に近づこうとする医者と、神という言葉で表現される大いなる自然の摂理に自分を含めた人間の予後をゆだねてしまう医者とに分かれる。

    ……2020/8 再読。20年以上前、医学部受験勉強のモチベーションを支えてくれた小説である。主人公の4人の医学生たちの専門教育過程から卒業までのエピソードを綴り、卒後15年の後日譚で締め括られる本作を、実際卒後15年の自分が、今また読み返すのも、また感慨ひとしおであった。

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    2023年09月10日
  • ダイヤモンドダスト

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    味わいがあって読みやすい。芥川賞なので勿論ドラマチックではありません。ただ、しっとりと文学の趣を噛み締めることが出来る良い作品です。大人とはこう言うことだろうと思う。わからぬように食いしばって生きてるんです。飄々とね笑。だからダイヤモンドダストが染みるんです。

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    2023年05月24日
  • 医学生

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    解剖実習も医学部の雰囲気もリアル。解剖班4人組も全員親近感がありました。

    部活やキラキラした恋愛のような「いわゆる青春」は登場しないけれど、立派な青春だよなぁと思いながら読みました。

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    2023年05月06日
  • 薬石としての本たち

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    ネタバレ

     南木佳士さん、42歳でタバコを吸う元気がなくなったそうです。手元にないと落ち着かない本は、坂口安吾「堕落論」、深沢七郎「楢山節考」、丘沢静也「マンネリズムのすすめ」など。「薬石としての本たち」、2015.9発行。哲学的な本がお好きなようです。エピクロス「教説と手紙」、大森荘蔵「流れとよどみ 哲学断章」、中島義道「時間を哲学する」、養老孟司「唯脳論」「脳と自然と日本」「手入れ文化と日本」、若月俊一「村で病気とたたかう」、ジョンJ.レイティ「脳を鍛えるには運動しかない」、芥川龍之介「秋」など。

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    2023年04月19日
  • 猫に教わる

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    ネタバレ

     芥川賞の作品は寝て書いても完成させられるが、直木賞の小説はトラック数台分の資料を集めて読み込まないと書けない。一家統合の要の存在として15年生きたトラの命日は4月26日。南木佳士「猫に教わる」、2022.3発行、36編のエッセイ集。①脳の血流を良くするべく歩くには、ある程度の速度が必要だが、無理をすると膝を痛める ②65歳で定年退職後は、月~木、各4時間の非常勤勤務。金曜日は蕎麦と酒 ③里でのヤマツツジの開花と山のタラの芽は時期がほぼ同じ。ヤマツツジの花が咲けば、タラの芽を採りに。

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    2023年04月18日
  • ダイヤモンドダスト

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    芥川賞作品ということで読んだが、面白いという感じの小説ではない。
    でもつい最後まで読んでしまった。面白いという感じではないが、面白くないというわけでもない。芥川賞作品ということで、そうなのかよくわからないが、最後まで読んでしまった。どこか実体験に基づいた小説なのだろうと思う。芥川賞全集14に収録されていた。少し心惹かれるような、感動はあった。

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    2023年01月16日
  • 猫に教わる

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    新聞の随筆欄に寄稿した文章を再推敲してまとめられたエッセイ本。

    身の回りの出来事や思い出が淡々と、鮮明に綴られている。信州の田舎で非常勤医として暮らす筆者の生活が目に浮かぶようだった。

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    2022年12月16日
  • 猫に教わる

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    滋味深く、人間味にあふれた本
    地味でも不器用でも良いんだと、否定することなく背をそっと押してくれる。モスグリーンの一冊。

    □治る病気で死ぬのは喜劇ですよ
    □小説には全体をおおう色がある
    □騙りへの傾斜

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    2022年11月22日
  • 阿弥陀堂だより

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    小説家として結果を出せず苦しむ夫。優秀な医師として多忙な妻。都会で支え合いながら生活する中、妻は心を病んでいく。夫の故郷信州の山村に戻る決意をする。そこは、母を亡くし父が家を出た後、祖母と二人、自然と共に暮らした懐かしい場所だった。
    都会で傷を負った二人に自然は懐が深い。妻は、以前の笑顔を取り戻していく。
    タイトルの「阿弥陀堂だより」は、地元の病気で声を失った女性が“阿弥陀堂守”のおうめお婆さんに、インタビューし、その言葉を広報誌に連載している小エッセイからきている。お婆さんの飾らない、自然に同化した言葉は、人を導く力がある。
    夫婦はこの山村で人生を過ごす土台を作る。生きていく為の足るを知る。

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    2022年06月26日
  • 猫に教わる

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    ネタバレ

    ぽつぽつと寡作で地味な作家さんですが、新しい本を見つけると気になって読んでしまう。
    今もお元気で非常勤の勤務医をされているようで、そんな日常の一コマや、医者と作家という二足の草鞋時代の体調を崩した苦しい思いの綴りだったり、もっとさかのぼって幼い頃に母親を亡くし、思春期時代の新しい家族との葛藤や進学に関することなど、もうすでに知っていることも含めて、生きているといろいろあるけれど、それを乗り越えると穏やかな日々もあると思わせてくれると、人の人生でしみじみ感じさせてもらった。

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    2022年05月07日
  • ダイヤモンドダスト

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    タイ・カンボジアで難民キャンプでの医療ボランティアに3ヶ月従事し、病院へ戻った"ぼく"は、信州の病院に戻っても、調子の出ない日々が続いた。そんな中、終末期の患者として、千絵子が転院してくる。がんが転移し、弱った千絵子とは、高校のときに出会っていたのだった…。『冬への順応』

    小説という形では有るが、おそらく医師であろう作者が経験した体験をもとに書かれている話が4篇。最後の表題作は、主人公は看護師であるが、医療と私生活という点では共通点が有る。

    患者を上手くさばけず、山奥の診療所に移動して、元恋人の死に立ち会えない医師。難民ボランティアで、患者を助けきれず、そのわだかまりを

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    2022年03月15日
  • 医学生

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     医学生が地方の大学の医学部で解剖学や試験などに取り組む姿を描いている。作者の自伝的な小説というだけあって、内容は非常にリアルだし、一昔前が舞台のようだが今の医学部もあまり大きくは変わっていないのだと思う、そんなに違和感なく、内容にいちいち納得しながら読むことができた。そんなにドラマチックな展開があるわけではなくて淡々とした医学生の姿が描かれていくだけなのだが、それでもなかなか面白かった。同じ時期に読んだ「泣くな研修医」もリアルという意味では似ているはずだが、この「医学生」の方がだいぶ面白かった。無理にドラマチックにしようとしていないからだろうか。

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    2021年11月05日
  • 医学生

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    風景・街の描写が丁寧で場面を容易に想像できました。また人物描写についても、それぞれの大学生のリアルさがすごく共感できるものでした。
    話の流れとしては医学生の日常ということもあり起伏は少ないですが、そこがかえってリアルさを出してるのかな、と感じました。

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    2021年10月05日
  • 阿弥陀堂だより

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    難病の小百合ちゃんがおうめ婆さんを取材して村の広報に掲載する『阿弥陀堂だより』の短くも優しい記事文が、疲れた心に沁みてくる。
    医師である主人公の妻の心を病むまでの仕事ぶりはすごいし、売れない作家でダメな感じと見える主人公の、故郷の山に移住して妻を再生させるまでの献身ぶりは素晴らしい。
    ダイヤモンドダストと違い、結末が死ではなくそれぞれの障害を乗り越えて生きていく、と言うのがまた良かった。

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    2021年07月10日