ベリエ・ヘルストレムのレビュー一覧
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アメリカ下院議長がコロンビアの麻薬ゲリラPCRに拉致された。スウェーデン警察に協力していた凄腕スパイ、ピートが、今はアメリカDEAのスパイとしてPCRに潜入している。アメリカは麻薬戦争で、コロンビアの悪人を殺害リストに挙げているが、ピートの名前がそこに入ってしまった。事態収拾のため白羽の矢が立ったのはスウェーデンのグレーンス警部だった。
長いはずなのにそう感じさせない一気読み。「三秒間の死角」の続編だそうだけれど、何も覚えてなかった。特に問題なく楽しめた。
※以下ネタバレ
ピートは、人工衛星が捉えていない三分間の間に人質をアメリカの軍艦まで連れて来るという荒業を成功させる。しかし、副大統 -
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ネタバレ(上巻より)
バウラを無事スェーデンに戻すため、仲の悪い検事にわざと大手柄をあげさせたのは
面白かったが、
検事が刑務所内の殺人を軽い刑にする理屈をひねり出したのは驚きだった。
それと、
麻薬が溶け込んでいるスーツケースをグレーンス警部に預けたのも面白かった。
一番印象的だったのは
バウラが潜入していたゲリラのボス。
誰をも信頼してはけない人生の中で、
信頼してしまい、裏切られる。
同情の余地は全くないが、
最後に爆弾で殺されるのはあまりにあっけなくて、
少し納得いかなかった。
もっと悲惨な、ある意味、劇的な最期を望んでいたのかもしれない。 -
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エーベルト・グレーンス警部シリーズ第六作。
だから、潜入捜査ものは好きじゃないと言ったはず。
カリブ海の浜辺でのんびりとモヒートを飲んでいる、とまではいかないが。
華麗なる脱獄をした「バウラ」には、家族と幸せな生活をしていてほしかった。
まさか、より危険な国でより危険な潜入捜査をしているとは。
しかもそこへ警備に止められたにも関わらず、
コロンビアに来たアメリカ下院議員長が麻薬犯罪ゲリラの人質になってしまい、
アメリカからのゲリラの一員として殺害ターゲットとされてしまう。
そこへ、ようやくこのシリーズの主人公(のはず)がグレーンス警部が登場し、
バウラを救い出すために協力することに。
パ -
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ネタバレエーベルト・グレーンス警部シリーズ第四作。
ルーマニアからバスで運ばれてきた少女たちと
ストックホルムの地下道に住む少女。
二つの国のストリートチルドレンたちの事件は、
驚くことに、全く交わらない。
スェーデンのミステリーは国際的だ。
国境をひらりと超えていく。
橋を渡れば、フェリーに乗れば、
すぐ隣の国に行ける。
EUとなった今では検問もない。
自分が思う「国際的」とは違う気がする。
国をまたいでおこる犯罪に警察は無力だ。
その無力感が、このシリーズの通奏低音なのだろうか。
エーヴェルト警部の恋人も亡くなってしまったし。
教会に少女がたたずむ場面が印象的だった。
クララ教会、行ってみた -
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怪物をめぐる人間の話、そして怪物となった人間と社会をめぐる話、とこの本は評せるかもしれません。
冒頭の描写からどきつい……。女児に性的暴行を加え殺害し捕まった男。その怪物の思考と、犯行の描写の残虐さに、自分はいきなり物語にぐいとつかまれました。
その怪物が移送中に逃亡。物語は様々な人物の視点を通し、重層的に描かれます。
途中まで読んだ段階では、逃亡犯を追いかけるサスペンスなんだな、と自分は思っていました。しかしこの小説は、徐々に社会派小説の様相を呈してきます。
事件が起こした波紋は、当事者たちの思惑や真意を超え、正義心となり、怒りや憎悪へ変化し、司法関係者や普通に暮らす前科犯にも及びま -
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ネタバレスウェーデンで酔客に暴行を加えて逮捕されたカナダ国籍の男は、米国で死んだはずの元死刑囚だった!?それはスウェーデン全土と米国を舞台にした前代未聞の事件の幕開けだった。
序盤でネタは想像がつくし、あーこれジョン助からないやつだわーってなるんですが。。
まさかこんな終わりとは!
フィニガンは共感しづらいけど不幸だなあ。しかしながら目には目を、がまさに自分に返って来てるのが皮肉・・・。
死刑の支持率が異様に高いことで知られる日本では、スウェーデンでの騒ぎの描写は理解されづらいかもなと思いました。が、死刑囚の拘留中の様子や執行時の描写など、あまり知られてないことがよく描かれていて、フィクションと -
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このシリーズの根底に流れるテーマは「復讐」なのだろう。
一作目は幼い娘を殺された親による復讐、二作目は国境を超えた人身売買の被害者による復讐、今作は社会的復讐装置とも言うべき死刑制度に対する復讐劇となっている。
「死刑囚」を物語の中心としながら最終的に制度全体に対する復讐に仕上げていく構成が素晴らしい。単なるミステリー・サスペンスではなく、社会派小説とも言うべき、人物だけでなく社会、民衆全体に波及するストーリーとなっている。
ただ単に「正義」をかざすのではなく、そこに人物一人ひとりの細かいまでの描写と人としての苦しみ、悲しみも合わせて描かれている。
特に今回は主人公であるグレースンの哀切も描 -
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北欧の新進作家として高い評価を得ているルースルンドとヘルストレム合作による2004年発表のクライムノベル。暴走する群衆心理の怖さを主題とし、息苦しく虚無的な展開で読後感は重い。
4年前に二人の少女を強姦/惨殺した凶悪犯が護送中に脱走、その足で幼児を拉致して殺す。子どもの父親は憤怒の念に駆られて復讐を決意。遂には殺人者を追いつめて、娘の仇を討つ。報復行為はマスコミによって大々的に喧伝される。刺激を受けた大衆は、画一的且つ曖昧な「正義」への使命感に昂揚/熱狂する。そこには、犯罪者の人権を優先し、新たな犠牲者を出す危険性を考慮しない国家体制/機能への不信と憤りがあった。警察を無視した性犯罪者狩りが -
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