ベリエ・ヘルストレムのレビュー一覧
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アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『三分間の空隙 下』ハヤカワ文庫。
最後の最後まで息詰まる展開が続く下巻。クレイグ・トーマスの『闇の奥へ』を彷彿させるような作品で、非常に面白い。パウラは家族と共に生き延びることが出来るのか。一難去ってまた一難。パウラが家族と共に普通の生活を取り戻すまでの長く険しい道程の結末は……
麻薬犯罪組織が社会を支配する時代。快楽を求める麻薬中毒者と麻薬製造と売買により莫大な金を手にする犯罪者たち、彼らをを壊滅するために手を尽くす米国政府。
家族と共に自ら生き延びるために米国下院議員の救出を選択したパウラ。
下巻の冒頭でグレーンス警部と麻薬犯 -
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アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『三分間の空隙 上』ハヤカワ文庫。
角川文庫の『三秒間の死角』の改題作かと思ったら、まさかの姉妹作で全く新たな邦訳作品だった。しかも、グレーンス警部シリーズ。危うくスルーするところだった。
上巻を読む限りではグレーンス警部の見せ場は無く、パウラが主人公と言って良いだろう。
パウラの焦りが読み手にも伝わるかのように命の危機を感じる白熱の展開が続く。正義を全うするためにはそこまで悪に成りきる必要があるのか。
メインの舞台はコロンビア。僅か9歳の子供がたった200ドルで殺し屋になる異常な社会。米国の麻薬取締局に雇われたスウェーデン人の犯罪 -
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ネタバレ【ネタバレ】
不愉快な結末、予想を覆す…と煽っているものの、想定の範疇のラスト、主人公たちの不実…、こう書くと駄作極まりない作品のようだが、小説としてはオモロいのである。
主人公だから、有能な警察官だから、過去の不幸と戦い正義を貫こうとする人物だから…といってその人物の行動すべてが正しいわけではないのである。
その人物が義や仁や情に基づいて行動したとしても、それが万人にとっての義や仁や情に当てはまらないこともままあるのである。
「不愉快な話」=「面白くない作品」
多くの場合この指標は成り立つのだが、この作品はイコールではないと証明している。不愉快だがオモロい。憤りはすごく感じるが読ませる。 -
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ネタバレ「3秒間の死角」が面白かったので、グレーンス警部シリーズを追いかけてみようと手に取った1作目。
オモロい、サスペンス描写も良く展開も読めずハラハラドキドキできて、何よりテーマも良いぞ。
(以下ネタバレ)
死刑制度のないスウェーデンでは、児童虐待レイプの連続犯であっても、刑期を勤め上げれば(あるいは精神鑑定を受ければ)刑務所を出所できるらしい。そんな極悪犯を私的に処刑する事の是非。その処刑を世論が支持し私的リンチが流行する怖さ…
でも、俺も娘を作中のような残酷な目に会わせた犯人がいたら、法律関係なくブチ殺そうとするだろうな。人間は社会があって初めて人間たるんであろうけど、作中のお父さんのよ -
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ネタバレ表向きにはいないということになっているスウェーデンのストリートチルドレン。だけど現実に地下にたくさん存在している。誰からも探してもらえない人がいるということ。子どももいるということ。ひとつの殺人と43人の子どもが路上に置き去りにされる事件。このふたつの事件の捜査から地下へと続き、スウェーデンや近隣でのストリートチルドレンの問題が表面化していく。グレーンスの癇癪や独断で動く捜査や一匹狼なところは相変わらずで、でもシリーズのなかで重要な位置になりそうな今作。大きな社会問題とグレーンス個人の問題を抱え苛立ちが募る。このシリーズは重い問題を扱っていて読み心地がいいとは言えないけれど読むことをやめれない
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現実に即して書こうと意図した作品には、すっきりした終わりはない。小説題材となる現実を、普遍的な形として世界の記憶に留めようと意図する作家は、読者が求める単純化に応えることは容易にはできない。何故なら現実が抱える問題は、今もなお解決を見ることなく、ずっとそこにあり続けるものであるからだ。だからこそ、この種の作品はどこかで必要とされ、そして誰かに読まれる時を待つ。
これは子供たちの物語だ。家族に捨てられたり、家族から逃げ出したり。ストリート・チルドレン。北欧では冬を越すためにシェルターや施設に逃げ込む者、連れ戻される者もいる。しかし帰りたくない、逃げ続けたい子供たちの一部は、何と地下道に居住 -
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アンデシュ・ルースルンドの本は、『熊と踊れ』から入り、『ボックス21』を読み、この『制裁』で3冊目。
色んな立場の人の視点から物語が進められるが、それぞれの立場に、感情移入することができるのが不思議。
今回も、犯罪を通して社会問題や倫理の問題を投げかけられた。
自分の中で考えを纏めるのに時間がかかりそうだが、人が人を裁くって難しい。
訳者あとがきより抜粋
『他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら、大人はそうすべきなのか。そうやって、人の生命の価値を、同じ人間が決めてしまうことは、果たして許されるのか。それが許されるとき、怪物が生まれるのではないか……。』
しばらく考えてみる。
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ネタバレいま流行りの?北欧の警察小説。北欧物の英米物との違いは、主人公がやたら泥臭い事。英米物にも泥臭い主人公はいるにはいるが、北欧物の場合、警察官と言う職業を感じさせないほど、ものすごく泥臭い。そしてもう一つ北欧物の特徴(?)は、なんとなく漂うその“暗さ”。暗いのは、北欧の気候を反映しているんですかね?そのの泥臭さと、暗さで、なんとも言えない全体的な雰囲気が形作られている。
そしてこの作品、最後の2行が衝撃的。頭のどこかで、そうなることをうっすらと感じてはいたんですが、文字にして読んでみると、ものすごく衝撃的です。いやぁ、なんだかな。 -
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「制裁」の刑事達が登場するシリーズ二作目
前回同様、読み終えた時の
現実の問題を突きつけられた重みが凄い。
前回のあとがきにもあったように、物語はフィクションではあるが、モデルになった人。事件事象は存在している事実。
そして日本でも同様の問題がある事実。
ラストの終わり方は途中で予想が出来たけど
「そうであって欲しくない」という
思いのまま読み進めて、嫌な汗をかいていたら
放り投げられてしまった。
登場人物紹介の並び順が、刑事達をメインにしていないあたりがにくい。
過激な方法で目撃者から証言を得ようとするベテラン刑事に、汚れ仕事をさせていると自覚していながらも自分では一歩踏み出せないパー -
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Posted by ブクログ
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『制裁』ハヤカワ文庫。
2007年にランダムハウス講談社より刊行されたグレーンス警部シリーズ第1作を、著者による改稿を反映した上で再文庫化とのこと。既にランダムハウス講談社版を読んでおり、再読となる。
日本人作家であれば、薬丸岳が取り上げそうなテーマであり、非常に考えさせられる警察小説である。愛する娘を殺害された父親の犯人への復讐の是否を問う問題作。
幼い二人の少女を毒牙にかけ、殺害した卑劣な性犯罪者ベルント・ルンドが移送中に脱走する。脱走したベルント・ルンドは再び一人の少女を殺害する。殺害された少女の父親フレデリック・ステファンソ