北田暁大のレビュー一覧

  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    この本で語られていることの重大さに、今更ながらに気づく、というか、刊行当時に読んでおくべきだったと強く思った。今現在も尚、不況にあえぐ日本にとって、どこか変換点だったのかがよく分かるし、左派に対して何が足りないのか、もっと言えば民主党政権時代に、何が圧倒的に欠如していたのかがよく理解できた。刊行から年数は経っているし、世界情勢は今まさに大きく変動している中、今の日本に必要な経済に対する考え方が詰まっている。左派はあまりに経済に対して無頓着であったかを自らを含めて痛感させられた。

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    2024年10月13日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    (2018/7/11)
    ブレイディみかこ
    松尾匡
    北田暁大

    左派による反緊縮政策を!がテーマの本。
    保守、リベラル、右派、左派という言葉の定義が、
    今の政治家の振る舞いの中で意味不明になりつつある。

    保守本流を名乗る安倍政権の金融緩和政策が実はリベラル的だったりしているのがその証左。
    と言って安倍さんにリベラルな気持ちなど全くなく、
    ただ、国民受けする政策をして支持率を上げて、悲願の憲法改正がしたいだけ。
    自民党のその他の有力者は皆財政均衡、消費税増税派。
    田中角栄時代の自民党はもうないのだ。

    だからこそこの本は問う。
    今こそ左派は反緊縮政策を掲げ、現政権を倒せと。

    政治は経済だ。
    私は、今は諸悪の根源のように語られることの多いミルトン・フリードマンの理論の信仰者。
    彼の理論を「新自由主義」とすることには違和感はある。
    大きな政府、国民から税金を集め恣意的に使う、というやり方に反対、
    というのは正論だと思う。今でも思う。
    そんな大金の投資先を、正しい判断が出来る人なんていないだろうと。

    その点、消費税増税はある意味大きな政府につながるわけで、
    フリードマンがたたかれるのもそういうことか?

    ベーシックインカムはありだと思う。
    よくよく考えれば、民主党の子供手当は、ある意味子供へのベーシックインカムだったのではないか。
    これを国民全員に広げる。
    財源は?
    日銀が刷る。
    それで行けるのではないか。
    ハイパーインフレが怖い?
    貯金している人が怖いだけ。持たない人は怖くない。

    そもそも今の財政不均衡とやらも、実は不均衡ではないのだ。
    金持ちの貯金が銀行を経由して国債となって日銀に買われているのだから。
    貯金という生きていないお金が借金の形を取って生きるのだ。

    そもそも経済でこれが正しい、なんてことはない。
    昔は金本位制が正だった。今誰もそんなこと言わない。
    今や国の保証さえいらない、という仮想通貨が出回っている。
    要はものが、役務が動けばいいのだ。

    老人が老後の心配にとっておいている金を市場にださせればいい、と「心理経済学」で
    大前研一氏が言っていたが、まさにそうだ。
    お金、なんてなんでもないのだ。

    皆が人の役に立てば、世の中は回る。
    そういう世の中を作らなきゃ。

    老人が自分の財産にしがみついて若者を犠牲にする社会に未来はない。
    老後の備えの財産が1800兆?国民一人当たり1500万?
    信じられん。


    第1章:下部構造を忘れた左翼
    第2章:「古くて新しい」お金と階級の話
    補論1:来るべきレフト3.0に向けて
    第3章:左と右からの反緊縮の波
    第4章:万国のプロレタリアートは団結せよ!
    補論2:新自由主義からケインズ、そしてマルクスへ

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    2024年06月27日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    「左派」論者3名による経済政策論かつリベラル批判の対談書。日本のリベラル派を、経済成長政策を疎かにしてきたと批判し、文化的・制度的な面での公正性を重んじるだけでなく、「明日どうやって飯を食っていくか」に直結する経済政策もちゃんと考えろと指摘している。この本を読むことで、リベラルを自称し人権を重視し・・・と考えている人が、自分の視野の狭さに気付かされるかもしれない。僕はそうだった。

    対談の著者は三名。①『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で有名なイギリス在住の文筆家、ブレイディみかこ。②マルクス経済学を専門にする立命館大学の経済学教授、松尾匡。③理論社会学でメディア史を専門にする東大大学院教授、北田暁大。戦後史、経済理論史、時事問題(ブレグジット、ギリシャ危機など)を幅広く取り上げつつ丁寧に説明しており、我々はどこからきて、今どこにいるのか、そして今後どこへゆくのかの文脈について、整理することができる。面白い。

    また、この本を読んで感じたのは、経済政策を評価(立案・投票などすべて)するとき、私たちはどんな社会(国)作りがしたいのかをそもそも考える必要があるということ。
    税金の使い道についても、税の累進性の政策の是非についても、結局何がしたいのかの目的に紐づけて、メリデメを評価する必要がある。
    ついては、日本にそういった明確なビジョンがあるだろうかと思うと、色んな政治家がビジョンを出していることにようやく気づく。また様々な政策研究会議においてビジョンらしきものが提示されている。
    「株式会社ニッポン」があるとしたら、世界市場でどんなポジションで、どういうミッション・ビジョン・バリューを持ってやっていこうとしているのか、もっと明確に理解していきたい、、、

    本書が重要だと思えるのは、現実主義的な語り口だからだ。ライツ・トーク(rights talk)と呼ばれる、人権をベースとするリベラリズムの考え方(とくに、rights as a trump *人権の切り札性)の理想主義的な部分を認め、それだけで物事を判断しきれない、また政策として不十分な部分を解消するために、適切な経済成長や、適切な財政出動を推奨しているからだ。

    一方で政策論はそれとして、その政策を実現するためには民意を動かしていく必要があるが、その民意が分断されている(=ソーシャルアパルトヘイトの)現状で、どう人々が交わっていくかについては、この本のスコープではカバーされていない。「リベラル」な自分が本当のところ「左派」になれないのは、この分断を作っている一員だからだと感じるが、これを乗り越えるために何ができるのか、強い課題意識を持った。

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    2022年04月03日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    イギリス在住ライターのブレイディみかこ、経済学者の松尾匡、社会学者の北田暁大の3名による鼎談本。
    ブレイディさんのヨーロッパ政治経済の知識と、松尾さんの経済学をベースに、北田さんが整理している感じ。「アベノミクス憎し」で経済政策が混迷している左派に警鐘を鳴らしている。

    第二次安部政権のアベノミクスのうち、金融緩和はデフレ経済では当然の政策で批判されるものではないのだが、左派はアベノミクスに反対せざるを得ないので賛成できないという奇妙な立場にあった。

    続けて財政出動も、脱デフレを目指す雇用創出のための妥当な政策だった。
    これらは小泉政権の新自由主義ではなく、むしろ逆に左派的な経済政策なのだが、安部首相が主導しているせいで左派はなぜか逆にこれを批判する形になった。

    アベノミクスで批判されるべきは財政出動が選挙前に限られていたことや、規制緩和は金融緩和・財政出動と関係がなく、場合によっては矛盾することにあり、左派は本来「もっと財政出動しろ」と言うべきだった、というのが本書の主張。

    安部首相がこのように左派的な経済政策をとった裏には支持を得て改憲など「本当にやりたいこと」をやるための下地作りがあったと思われ、これは一定以上に成功したが、改憲などに移る前に、森友・加計問題や「桜を見る会」などのお友達優遇や支持率は下がり、そこに新型コロナウイルス対策も重なり体調不良により辞任し、菅政権となった。

    菅政権は、安部政権以上に権力を好き放題に振るう一方、経済政策は方向性が全く見えないため、左派にとっては有利な状況と言える。
    しかし本書に従えば、野党は相変わらず不祥事の追及などに終止していて、アベノミクスのような「期待を持たせる経済政策」を打ち出さない限り、積極的な支持を得ることは難しいだろう。

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    2021年02月28日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    いずれ読み返したくなるような、素晴らしい内容。
    結局みんな自分の生活が1番大切なんだよ!っていう当たり前のことなんだけど、きちんとそれを説明してもらった感覚で、とても勉強になりました。

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    2020年01月18日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    超面白い。
    流行った消費社会論が経済の方向に行かずにアイデンティティ論に終始したというのは本当にその通りだと思う。
    まだわからない部分が大きいけども、経済に興味が出てきた。

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    2019年12月11日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    反緊縮政策の有効性や左派の思想史などについて学べる本。

    ・左派の立場から、勢力を盛り返すために現在の安部政権を上回る経済政策を提案しなければだめだ。そのためには、いままでのような緊縮ではなく、反緊縮政策を提案し、福祉などしかるべきところに再配分をしっかりと行うべきだ。
    ・WWⅡ前後の左派の歴史を整理、レフトの思想が歩んできた歴史とその総括について。労働者の味方だった左派が、下層の人々を忘れ多様性に焦点を絞るようになってしまったこと。
    ・メリトクラシー(能力主義)が勃興した結果、下層の人々に対する差別が生まれたこと。「能力が無いのは自己責任」。グローバリズムについていけない人たちが新たな差別階級になった。英国ではチャブ。日本ではマイルドヤンキーやB層。また、そうした状況の中で下層の人々が社会の中で取り残されていること。

    現在の世界での潮流。トランプ大統領やジェレミー・コービン氏、安部首相がなぜ支持されているのか。という説明を非常にわかりやすくしている本だと思う。「緊縮政策で国内経済がボロボロになり、上下構造や明日の飯を食えるかというのが大きな関心になっていたところに、大々的に財政出動を主張する政党や政治家が現れ支持された」という説明は非常にわかりやすいものだったし、最近見たヨーロッパ情勢の本を読んで得られた実感とも重なる。ギリシャ危機に対する、ドイツやeuの掲げる経済政策への不信とかね。

    ただ、本書のコンセプト自体が左派の復権を目指したものというか。右派の否定でもある気がしたので、モヤモヤするところもあった。左派・右派という二項対立に陥ってしまっている気がする。「効果のある経済政策を行い、右派から支持層をもぎ取ろうみたいな」。

    右派の極致はナチスかもしれないが、左派の極致はソ連や中国共産党やグローバリズムの中で多様性を認めることを強制される社会だと思う。良い部分と悪い部分がお互いにある。
    階級による差別はいかんという意見には完全に同意するし、そこに目がいくのはやはり左派の人たちだろうなと思うからこそ。

    イデオロギーは違う価値観を持つ世界みたいな。自分がそこに属していたら、その世界と相手の世界を分けてしまうみたいな。政治思想を理解するにはイデオロギーを理解しなければいけないけれど、そうなるとイデオロギーによって自分と意見の違う相手を分かつことになる。「こちら側とあっち側」が出来上がる。レッテル貼りも生まれる。それぞれのいいところを理解するための邪魔になっている気がする。

    囚われてしまうと、政策は結局のところ「相手を倒す道具」になってしまう。そこを乗り越えて、みんなを幸せにするためにはどうしたらいいのかを必死に考えることが一人一人に求められていく視点だと感じた。理想論だけれども。

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    2019年05月03日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    野党の経済政策のなさや、成長が欠落していることに違和感がある人にはおすすめ。モヤモヤが無くなった。対話式だが読みやすい。章によって段組がバラバラなのが玉に瑕。

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    2018年09月30日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    ネタバレ

    専門の異なる3氏の鼎談で、主に欧州の政治、社会から日本のそれを分析しつつ、「左派」に対する提言が行われています。以下、要約です。

    <ネタバレあり>
    若者をして「『ビッグになろう』と考えたらあかんのかな」と言わしめる左派主導の脱成長的な風潮。左派はアイデンティティポリティクスや文化の問題に耽溺し、「下部構造」を忘れてしまったのではないか。

    一方、欧州ではドイツあるいはECB主導の緊縮政策に対し反緊縮(緩和的な金融政策と積極的な財政支出)を唱える左派(一部右派)が勃興。例えば英国では、2015年に労働党党首として強硬左派、”オールド・レイバー”のコービン党首が選出され、2年後の総選挙で善戦。かかる左派は、第2次大戦直後に勃興し70年代に行き詰まった”レフト1.0”、その反省の上に立ち90年代に隆盛を迎えるも貧困に対処できなかった”レフト2.0”の思想を乗り越える、”レフト3.0”と言えるもの。

    ”レフト3.0”は、”レフト2.0”がもたらしたマイノリティによる多数派の抑圧から脱し、”労働者”全体を復権させることを目指し、金融緩和と”大きな政府”(財政出動)を通じた経済成長、雇用拡大がその政策の目玉となる。一周して”レフト1.0”に戻った感もあるが、現代的にジェンダーやマイノリティの問題も取り込んでいるもの。

    このような欧州の状況を踏まえると、日本はどう評価されるか。まずアベノミクスについて。3氏は、アベノミクス≠ネオリベ政策と評価する。金融緩和と財政支出の組み合わせであるから。これに対し左派は緊縮主義的に批判する。欧州の状況と比べると”ねじれ”が存在。アベノミクスにも第2の矢=財政支出が不十分という問題があるが、(旧)民主党政権下と比べ明らかに安定している安倍政権下の経済を前にしては、「きちんとした経済政策を出していかないと、いつまでたっても有権者の支持を得ることはできない」(176ページ)。「『ご飯をたべたい』という、民衆として普通、当たり前の願いを拒否したり、侮蔑したりしていては、左派は信頼を得られない」(216ページ)。そのため「コンクリートから人へ」の実装、消費増税反対・反緊縮を訴えるべき。
    (上記では端折っていますが、ブレイディみかこ氏のあげる欧州、特にイギリスの人の生き方、考え方の例がいちいち魅力的でした。是非入手してお読み下さい。)

    以上が要約。経済政策だけ見れば3氏が左派に期待する理由は薄い訳ですが、そこはやはり”リベラル”(ただしこれも多義的)な社会を守るため、野党に期待せざるを得ない訳であります。

    選挙を通じた民主主義政体を採っている以上、いつでも政権交代可能な緊張感のある状況が望ましいと思いますが、失業こそしなかったものの私も(旧)民主党政権下では経済的に苦労させられました。当時の主要メンバーが各所で生き残っている野党の状況をみると野党に票を投じることについては躊躇させられます。

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    2018年08月24日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    面白かった。
    今の野党に経済政策を仕込むより現政権に社会保障制度を手厚くさせるほうがハードル低いような気がする。保守支持層も読むべき。

    2023年4月現在の物価高が始まっている環境でどこまで緩和政策が続けられるのか、緊縮が始まったタイミングが野党の攻め時。

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    2023年04月05日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    岸田内閣が発足し総選挙が行われることになった。岸田内閣に期待すること、あるいは、衆院選の論点として考えるべきこと、という内容で、日本経済新聞が朝刊に連載をしているが、今日の朝刊のテーマは「成長か分配か。まずは成長を優先すべき」という内容のものであった。

    本書は、ブレイディみかこさんと、経済学者の松尾匡氏、社会学者の北田暁大氏の対談で構成されている。発行は2018年5月のことなので、今から3.5年前のことであり、岸田内閣はもとより、菅首相の前の安倍首相、経済政策で言えばアベノミックス時代の発行である。
    本書の大きなテーマの一つは、書名にもなっているが、日本の左翼・左派に対して疑問を呈する、というものである。
    経済だけが大事なことでないことは言うまでもなく、経済以外にも大事なことは山積していることも言うまでもない。ただ、私は、経済問題は現代の日本の大きな問題の一つだと思う。格差問題、あるいは、日本にも貧困層が生まれており、その格差や貧困は世代間で受け継がれる、要するに固定化・階級化しつつある、ということは、かなり以前から指摘されており、解決すべき政治的イッシューであるはずだ。
    この問題へのアプローチには2つある。1つは経済成長が大事だとするもの。日本の1人当たりGDPはバブル崩壊以降、ほとんど増えておらず、今やそれを指標とすれば、日本は既に世界で最も豊かな国の一つとは言えなくなっている。これは事実であり、日本全体が豊かにならない限り、国民に所得として行き渡る原資はないのだから、まずは経済成長を優先させようとするアプローチ。冒頭に記した今朝の日経新聞の論調である。
    もう1つのアプローチは、分配が大事だとするもの。格差があるのであれば、格差を均せば良いではないか、というアプローチである。富裕層への課税を強化したり、あるいは、大企業への課税を強化し、そこで得た原資を、例えば医療費や介護費や貧困世帯への援助に回そうとするものである。
    本書でのブレイディさんをはじめとする3人の方が感じている違和感は、日本の左派が「経済」について語らないということである。日本の左派は、例えば環境問題、原発問題、等についての主張が多く、そのこと自体は何の問題もないのだけれども、日本の大きな問題の一つである「経済問題」、特に、如何に日本の経済を成長させるかについては、ほぼ語るところがない。なかんずく、不況時の重要な経済政策の一つである政府支出について、国の財政均衡(要するに国の借金は良くないことなので、単年度の国の税収と支出をバランスさせましょうという考え方。政府支出を減らすことは、GDPを減らすことに繋がる)を優先させる考えを左派がとる(民主党政権時代の「事業仕分け」は皆さん記憶に新しいと思う)のは、ほとんどあきれるという内容である。

    「成長か分配か」という、ものの考え方では何も解決できない。正しくは、「成長も分配も」であると私は思うし、本書の主張も同じ。日本の左派が「分配」については語るが「成長」について語らないのは、政治家としての一種の責任放棄ではないか、と私も思う。
    本書の主張に同感だ。

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    2021年10月16日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    ネタバレ

    「年収1000万円以下所得税免除」「消費税5%」=某野党の公約。本書が出された2018年からは大きな進歩。しかし、「プライマリーバランス」は”凍結”で、「消費減税」は時限的。両方とも廃止でよいではないか?英国でも労働党ブレア政権が緊縮だったが、現党首コービンは反緊縮で票を伸ばした。他の欧州各国も似たような動き。レフト2.0から3.0への進化とされる。米国で労働者の票を逃したクリントンに学んだバイデン政権。安倍一強に学べない野党。理想の啓蒙よりも目の前の暮らし。まだまだ本書に手にして欲しい左派がいる。

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    2021年10月11日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    現代社会学を巡る3つの潮流である質的調査・量的調査・理論をそれぞれ代表する社会学者に、どちらかというと社会思想史の研究者としての色合いが濃い稲葉振一郎を加え、それぞれの鼎談によって構成された一冊。

    社会学に対して多少なりとも興味関心がある人でないと全く面白く感じない本だとは思うが、登場する社会学者はみな、現代の日本の社会学におけるトップクラスの論客たちであり、知的な刺激は大いに得られる。

    大きく印象に残ったのは2点。
    北田暁大氏については私が大学生だったときから既に若手論客として名を馳せており、何の本に収められた論考だったかは全く忘れてしまったのだが、「社会的な問題にコミットする」という姿勢を当時から明確にしていたその論考の異常なまでの熱さに、21-22くらいの私は多いに刺激を受けたものであった(2006年、集中講義にも来てくれて受講した記憶がある)。それから15年ほどが経つが、本書においても氏のスタンスは「社会学というのは、社会問題が存在するという点を前提とすべきだ」と変わっておらず、印象に残った。

    もう1点は統計データの分析等に基づく量的調査を得意とする筒井淳也氏の「開発経済学や行動経済学に代表されるような統計的因果推論はあまりにもブームになりすぎていて、過剰な期待を背負わされている」という指摘は非常に鋭いものだと感じた。確かに、人文社会科学においても経済学などをはじめとして統計的因果推論のバブルは異常なまでの熱気に達しているような気は薄々としていた。そういう点で、社会学における量的調査は、「Aを行えばBのような結果が得られる」という変化についての含意は全く扱わずに、そもそも「社会がAのような状況にあるのはなぜか」という論点を扱うわけであり、変化の前提となる現状把握として意味があるという指摘は、なるほどと実感した。

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    2021年06月20日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    英国在住のライター・コラムニストブレイディみかこと、慶座学者の松尾匡、社会学者の北田暁大による、左派視点での経済談義。

    本書を読むまでは、緊縮財政はしょうがないよね~、プライマリーバランスは大事だよね~、などをうすぼんやりと信じていたが、本書を読んでそれらが必ずしも正しくないことを知った。

    学者2名の知識量が膨大なため、ときどき言っていることについていけなくなったが、それを差し引いても再分配と経済成長は対立しない、や左派、右派という視点だけでなく、上か下かのの視点を忘れてはいけない、等の提言は非常に腹落ちした。

    本書の著者たちと、右派経済の論客の人たちで討論し、それぞれの主張とそれらに対する反論をまとめてみたら日本の経済のこれからの指針になるように思うので、ぜひどこかの出版社が企画、出版してくれないかな~。

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    2020年12月19日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    社会学のイメージって、手広くやってるけど、実際学問として何やるの?くらいしか分かってなかった自分……。

    量的調査と質的調査の相いれなさと希望に何度か言及する所が印象に残ったかな。
    状況を捉えようと思えば、サンプルの量が必要で、そこからこうですよねって導き出すのが量的。
    けれど、そのサンプルがたとえば100集めてこうですって言ったとして、別の100集めたら別の結果や意味が生まれたとしたら。(そうならないようにされているんだけども)
    一人一人の感じてきたこと、考えてきたことは、同じ状況であっても違うんじゃないか。それなら、一人の語りを深く掘り下げることで、背景に見えてくるものがある、とするのが質的ということかな。

    進めていく中で、どちらも必要になってくることは分かりつつ、手を伸ばす時間と資源がない。
    お互いが生み出した蓄積を使いながら、違った角度から進めていきたいのだけど、そこで対象の広さの壁や、継続性から捨てられない壁が見えてくる。

    また、経済みたいな動きを見るものでも、臨床みたいに治療が目的になるものでもない、政策科学とは円の重なりがあってどう分けていくか、というのもなるほどーと思う。

    時々、○○学って何するものぞ?みたいに軽く扱ってしまうことがあるんだけど、その分野の人は自分たちのテリトリーについてすごく真剣に考えているんだよね……。

    最後に。
    他者を理解する、マイノリティとは何かという話も自分には大切な視点になった。
    研究対象ではあるんだけど、その人たちの立場を想像出来なければ、アンケートやるにしても、項目にズレが生じてしまう。
    かといって、密接になりすぎて、距離を取って書くことが出来なければ、あるいは踏み込めなければ、それは論として成り立たない。
    理解することの、暴力。
    でも、理解できることとは。

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    2020年11月08日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    経済、つまりどうやって食べていくか、がまず大事なことなのだということを考えさせてくれる。グラスルーツとか地べたというけどさ、理念うんぬんよりもまず食べていく不安をどうするのか。ナチスが支持率では決して高いわけじゃなかったにもかかわらず、強くなったのは、食べていくことへの不安になんとかしてくれるという信頼を勝ち得たからだ、という。そしてそれは現代においても、見られる話でね。

    右とか左とかわかんないけど、面白かったな。自分が右か左かなんて、わかんないし、どうでもいい。ただ、生活していかなくてはいけない以上、いろいろ考えることは必要だよな。

    ふだん見過ごされているような人たちに対して、何を求めているのかを聞いていくことが出発点になるんだ、というのは政治にかぎらず、あらゆる仕事、社会的な存在にとって必要なことだと思った。日本企業の凋落なんて、消費者は何を求めているのか、そこを忘れたからだよね、なんてさ。もちろん、自分自身にも言える話かもしんないんだけど。

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    2020年05月20日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    凄いボリュームの本なので圧倒されてしまいますが、頑張って読んでみて欲しい本です。岸政彦さんの文章から感じるやさしさが好きで、それがいったいどこからきているのか少しわかった様な気がしました。

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    2020年03月24日
  • 社会にとって趣味とは何か 文化社会学の方法規準

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    最初のブルデューについての説明が詳細である。しかし、それ以降の分析について、特に数量的な分析については突っ込みどころ満載なので、学生が卒論を書く場合に、この論文に不足するところを論文とすることができよう。その意味では、卒論を書くためのいい素材となるであろう。

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    2020年02月29日
  • 社会学はどこから来てどこへ行くのか

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    社会学を専攻していないとわからない”雰囲気”はあるものの,問題の骨子は刺激的。

    たとえば,事例研究における代表性をどう考えるか?というトピックは社会学だけに留まらないであろう。

    対話記録であるため,会話感覚で読めるのも本書の良いところ。サクサク読めてしまう。

    しかし,内容の深みはあるので,しばらく知識をつけた後に読み返すと,また違った感想を抱くような気がする。

    ちなみに,著者らの情報量(知識)がすごすぎて圧巻,もっと勉強しなければと思わされました。

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    2019年04月17日
  • そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学

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    「リベラルは自由や平等や人権を訴える金持ち。レフトは自由と平等と人権を求める貧乏人」とは著者の一人の英国人の夫が息子に言った言葉らしいが、支配層であるリベラルの意識がレフトから乖離し、経済成長に気を配らなくなったことが特に欧州の経済停滞の原因だというのが、著者たちの共通認識だ。

    経済政策を初め、安倍政権の政策に理由も示さず否定的コメントをするところはいかがかと思うが、それ以外は、欧州の実例を踏まえつつ、経済政策の変遷をまとめていて、参考になるし、ブレグジットやトランプ支持の背景がよくわかる。

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    2018年12月06日