藤森照信のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
藤森先生と山口画伯のコンビは「日本建築集中講座」に続き、2冊目をフォローしている方の本棚に見付け、本屋へ。
前作より薄いし、画伯のポップイラストは使いまわしが多いし、先生の放言や好き勝手は影を潜め、画伯の小さなグチも聞こえてこない。笑いが少ないんだな。でも、まあこれでイイかな。
何しろお二人がニコニコしているのがわかる。特に藤森先生の家形埴輪を見るときのうれしそうな顔。
筑摩のプレーリー文庫では縄文土器を旧石器時代にこんな芸術造形が見られるのは、世界にも例がないと褒めていたんだから、そっちも取り上げて欲しかったかな。
カラーで写真も多い。画伯の絵解きは妹尾河童さんのような俯瞰も交え、判り易 -
Posted by ブクログ
内容は、建築史というより人類史。
縄文時代の竪穴式住居は、当初は円形で次第に角形に変わり、面積が広くなる。柱の上に梁を架ける構造で、柱は礎石のない掘立柱が基本的に4本。梁の上には小屋組みが乗るが、その後の民家と同様に三角形のサスを組んでいたと著者は推測している。構造材にはクリの木が使われているのは、弾力性のある針葉樹に比べて石斧でも切り込むことができ、腐りにくいたため。屋根には草や白樺の皮などの上に、寒気を防ぐために勾配を緩くして土葺きにした。日本書紀には、蝦夷が「夏は?に寝、冬は穴に住む」と書かれている。
弥生時代から古墳時代には、梁の上は束立て構造が用いられた。鉄器が出現したおかげで柔 -
Posted by ブクログ
建築の視点から人類の歴史をながめるのもいいな、と思わせる内容。
以下、詳細。
新石器時代の神殿としてはスタンディングストーンが
ストーンヘンジも有名だが、フランスのロックマリアケル、スコットランドのルイス島カラニッシュのストーンサークル、イギリスケズウィックのストーンサークルも素晴らしい。
日本では、新石器時代に農耕がはじまったことにより、人類は定住し、本格的な建築が始まった。
弥生時代に水田がはじまったことにより、住環境が低地化したため、それまでは、土間が基本の住居だったが、高床式の建築がさかんになった。
磨製石器の時代には、作業効率の面からクリしか使えなかったが、鉄器時代に(日本には -
Posted by ブクログ
藤森先生の本は建築探偵や路上観察学会の頃から読んでいる。この数年でも設計された作品集や茶室学に山口晃さんとの漫遊記、井上雄彦さんとの対談本などを読み、その学識の深さ、ユニークな視点を楽しませて貰っている。
氷河期から説き起こし。ノッケから「虫もハチの幼虫やセミやバッタはおいしいから好んで食べられたが、チョウチョウはむせないように羽を除く注意が欠かせないし、トンボはまずいのでやめておいたほうがいい。」との記述。先生は正真正銘の信州人。
石器や木材への細やかな記述も経験から出たものだし、古代を実感していく感覚がある読書。地母神や太陽への信仰から語る古代遺跡の記述も、普通の概論と違い古代の精神を感 -
Posted by ブクログ
藤森センセイによる一般向けの建築雑学的散文、決して批判的な意味ではなく。
藤森センセイらしいくだけた文体。一見思いつくまま(失礼)のように展開する内容。
本書で読むべきは、藤森センセイが自ら見たりインタビューしたりした事由。ふざけているようで奥が深い。
個人的に興味深いのは、最終章の柔構造と剛構造についての記述。武藤のD値法の武藤先生に直接インタビューをしている著者が、武藤先生が「五重塔に学んで柔構造を思いついた」と語ったとの新聞記事を俗耳向けの説明、ジャーナリズム上の作り話と言い切っているあたり。自ら見たりインタビューをしたりしてきた藤森センセイだからこその説得力。