藤森照信のレビュー一覧
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日本最古の博物館である東京国立博物館を建築家の藤森照信と絵師の山口晃が博物館の「魅力を徹底解剖」とあるように、いろいろな姿が見られるのが今回の本だ。
美術編、建築編、舞台裏編の3点から東京国立博物館を紹介している。美術編で気になったのは、家形埴輪で、「世界の美術史を見渡しても、こんなに古く、家屋を模したものが立体的に造られたことはない」という感想を藤森が述べている。よく今の時代まで残っているなあと思った。
建築編では、「日本の伝統を表した実験場、東博」というように、初代本館は、なぜかイスラム様式で、表慶館はフランス式で、関東大震災後に建てられた二代目の本館は、和洋折衷といった具合にい -
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あの建築探偵藤森先生とあの稀代の絵師山口画伯による「トーハク」こと東京国立博物館のレポート&ガイドとくれば面白くない筈はない、と購入しました。
内容は、博物館本体や茶室といった建物や、建物絡みの収蔵品―茶室とセットで寄付された茶道具や家型埴輪など―の紹介が中心です。学芸員ほか東博を支える裏方の皆様のお姿にもしっかり言及されています。
数々の名品を収蔵する東博はどこか畏れ多い場所ではありますが、先生と画伯の細やかで鋭い観察力を発揮しつつどこか緩やかでとぼけた語り口の効果で、終始肩肘張らずに読むことができました。
最も印象に残ったのは、茶室「転合庵」のレポートでの「(茶室の)点前座はコックピット」 -
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建築史家・建築家の藤森照信と画家山口晃の日本建築探訪記。
■法隆寺
他の寺に比べ、回廊の効果がはっきりしている。
大小の建物を散らして配置し、それを回廊で一つの空間にまとめている。完璧なプロポーション。丹下健三が影響を受けた。
■日吉大社(比叡山)
全国の日吉・日枝・山王神社の総本宮。水を感じさせる神社。建築よりも石橋(重要文化寺)が有名。
石・水・建物・草木等、テクスチャーの宝庫。
■旧岩崎家住宅
建築家が手がけた日本最古の洋館住宅。ビリヤード場、洋館、和館を雁行して配置。日本の茶室の影響を受けている?イギリス様式でありながら、イスラム、コロニアル、スイスの山小屋風のテイストを盛り込んでいる -
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ずいぶん前に読み終わってた本なのですが、なぜかレビューが消えてたので再録。
新石器時代から現代に至るまでの住宅の変遷をたどり、その中で地母神信仰や集落の特性についても触れ、最終的には西欧植民地主義による世界各地の伝統建築の破壊や、西欧歴史主義を西欧が自己否定するに至った経緯までも含んだ、盛りだくさんの一冊。新書でこれだけの内容を網羅するのは、意欲的でもありチャレンジャーでもあるなぁというところ。
各章の論がなかなか面白かった分、個人的にはそれぞれのトピックをもっと深掘りしてほしかったという気持ちが強いです。概論的に知るにはこれで十分だけど、より詳しく知りたいというときには物足りない。その点 -
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これはタイトルを変えたらどうかな。「日本建築漫遊記」とかどうでしょう。
ほんとに真面目な「集中講義」かと思ってパスしてたのよ。東大名誉教授と天才絵師の組み合わせだもの。でもこのお二人、「路上観察学会」と「ヱセイ漫画」の方でもあるわけで、いやまったく面白い。こういう本って他にあるかしらん。
山口画伯の絵については、もうあれこれ言う必要もないだろうけど、何とも味わい深く、実に楽しい。圧倒的な画力あってこその飄々とした筆遣いに魅了される。今更ながら「省略」の凄さに感嘆。ささっと描かれているのに、しっかり量感や奥行きがある。各章の扉となっている絵に特にそういう感じがあって、旧閑谷学校の回などすばら -
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ユーモアたっぷりの建築エッセイ集。
軽く読めるとはいえ、知らないこともたくさんあって、楽しかった。
縄文の竪穴式住居。
夏はツリー・ハウスへ移っていたのではないか、とのこと。
石器で加工するには、栗の木のような硬い木の方が向いていたという、考証も面白い。
そこから、高床式とか、柱といった建築方法に関わる話から、家具や冷暖房といった、周辺的な問題まで、日本の住宅の変遷が、エッセイ特有の自在さで繰り出される。
雨戸って、世界にはないものだともあった。
ヨーロッパの鎧戸は、むしろ暖かい地方の、日よけの機能を持たされたものであるとも。
台風のときの守り神のように思ってきた私には、ちょっと衝撃的だ