須賀敦子のレビュー一覧

  • ヴェネツィアの宿
     東京駅の大丸で15分並んだ。「ねんりん家」のバームクーヘンを買うためだ。今評判のそれが食べたかったから、ではない。やっぱり手土産がいるよな、と思い立ったからである。その日、仕事で訪ねる予定の相手は会社のOBで、今は事業を構えている大先輩だ。
     ただ、親しい先輩とはいえ厳密に言えば今は身内ではなく...続きを読む
  • 遠い朝の本たち
    須賀さんの本を読むのは初めてではないけどすごく久しぶり。
    本に対する思いや本をめぐる出来事について書かれたエッセー集。
    この方の感受性に触れることで誰もが優しい気持ちになれるんじゃないかと思います。
    全部楽しく読めたんですが、その中に「人間のしるし」という本に関するエピソードがありました。
    (私その...続きを読む
  • ユルスナールの靴
    息継ぎも心地よい、音楽のような文章。

    時間のベクトルが、ぐぐっと逆らうので、
    読み進めながら、自身の幼い日が自然とよみがえってくる。
  • ヴェネツィアの宿
    大好きな須賀敦子の作品の中でも一番のお気に入りはこの~ヴェネツィアの宿~何度読んでもページをめくるのがもったいない・・。夢をみているみたいな作品。フェニーチェ劇場のコンサートについて描かれるくだりは、光や風や匂いまでもが音楽とともに見えてくるよう・・こんな風に幻のような時間を、ここまで美しい言葉で表...続きを読む
  • 遠い朝の本たち
    この本の中で知った、「さようなら」という日本語の意味。

    「そうならねばならぬのなら」・・・本当に、なんて美しい諦めの表現だろう。須賀敦子さんは、アンの文章を読んで「もう一度日本語に出あった」のだろう。私は、須賀敦子さんが紹介してくれなければ一生このことばの意味を知ることはなく、感動もなく使っていた...続きを読む
  • 遠い朝の本たち
    ぐっぐっと何か力をいれながら書かれているようで、
    ひとつひとつ選び抜かれた言葉が重い。

    はじめとおわりが、著者の友人じげちゃんの昇天。
    やさしい言葉と、正直なことばでかかれているから、
    なんだかとても心にしみて、
    ついうるうると来てしまう。

    著者の読書歴を垣間見ると、自分は読書好きで...続きを読む
  • 遠い朝の本たち
    ああ、私が大事にして読んだ「ケティ物語」。想い出させてくれた。私にとっても「遠い朝の本たち」がたくさんで、忘れられない。これが、彼女の「遺著」である。帯に本文からの引用がある。     あの本を友人たちと読んだ頃、    人生がこれほど多くの翳りと、そして、それとおなじくらいゆたかな光に満ちているこ...続きを読む
  • 本に読まれて
    やはり好きな作家について書かれているとうれしくなります。紹介されている本が読みたくなって本屋へ足を運んだりしました。思い入れのある一冊。
  • 遠い朝の本たち
    須賀敦子さんの文章って、声に出して読みたくなります。母も「海からの贈りもの」を持っていたので、今度読んでみよう!
  • ユルスナールの靴
    マルグリット・ユルスナールという作家の生涯と作品、現代の自分、二つの世界を行きつ戻りつしながらゆっくりと溶け合う。小説のような随筆のような、須賀敦子の作品の中でも一番におすすめしたい一冊。
  • ヴェネツィアの宿
    一貫して激しさとは無縁のような文章の須賀さん。でも伝わってくるものは熱い。涙が止まらなかった。
    あこがれの存在というのでもない、これを読んで、あぁイタリアに行きたいなというのでもない、だけど一生読んでいたい本だ。

    彼女の文章は、おそらく100年たっても心に深く
    突き刺さっていくだろうなぁ。
    ...続きを読む
  • ユルスナールの靴
    秀逸なエッセイ集。
    須賀敦子にしかなしえない、緻密で完璧な構成。
    彼女のエッセイには、小説のような深さと重みがある。
    とにかく手放しで褒めたい一冊。
  • 遠い朝の本たち
    某SNSで引用されていた一文に惹かれて購入。
    恥ずかしながら、筆者を存じ上げなかったが、本と共に印象に残った出来事を振り返る文章がとても切なく愛おしく感じた。
  • 霧のむこうに住みたい
     本書は、単行本にこれまで未収録だったエッセイを中心にまとめた一冊で、書評集や日記などを除いては、おそらく最後の作品集になるそうで(江國香織さんの解説より)、読む順番は間違えてしまったが、その分、全方位に広がるような様々な出来事を通して、彼女がどのようなことを感じ、思い、日々を生きていたのか、そして...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    誰かの語る物語に耳を傾けているような、隣りの会話を盗み聞きしているような、旅をしている心地になる詩のような一冊。物語を深く味わうというよりは歌に身を任せてたゆたうよう。
    須賀敦子さんの解説が素晴らしい。
  • 遠い朝の本たち
    須賀さんの本、初めて読みました。
    わかりやすく、すっきりとしていながら、やわらかく情景が浮かび上がってくる文章に心が震えました。

    見たことのない情景が、目にも心にも浮かぶように感じました。
    時を超える感覚が新鮮で、もっと他の本も読んでみたくなりました。
  • 塩一トンの読書
    いつも優しい、だけど芯の強い文章を書いてきた須賀敦子さんの頭の中が少し垣間見える。塩一トンを舐める期間、すなわちほぼ一生をかけて付き合うものとは?を考えさせられた。

    イタリア語を習得することで、日本とそれとは違う文化の間で様々な表現者の意図をより深く理解し、ときに自分を演じ分けることもできる。あく...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    ミラノに実在した書店に出入りする、様々な境遇の人たちにまつわるエッセー。
    それぞれがそれぞれに不幸を背負い、もがきながら不器用に生きている。
    みんながハッピーではないけど、そんなものなのかも知れない。
    他人が見たらそう見えてしまうけど、本人はそれなりに時々幸せを感じたり。
    結局自分もそうかもと思って...続きを読む
  • なぜ古典を読むのか
    最初に出てくるカルヴィーノの定義した「古典とは」を何度も噛み締めながら読む。シンプルに見えるが、行動に移すのが実は難しかったりもする。

    特に好きだったのは以下の4フレーズ。

    ・古典とは、最初に読んだときとおなじく、読み返すごとにそれを読むことが発見である書物である。

    ・古典とは古代の護符に似て...続きを読む
  • 島とクジラと女をめぐる断片
    この作品を味わうには、今の己の知見では不足しているな、と感じさせられた作品。けれど数年後に読み返したら違う感覚を得られそうだとも思えた作品。
    「この本の主題は、主としてクジラだが、生き物としてのクジラというよりは、むしろ隠喩のクジラだと言いたい。」とあるように、隠喩が多いからか、物語の輪郭がはっきり...続きを読む