須賀敦子のレビュー一覧

  • ヴェネツィアの宿

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    イタリアと日本、両方の記憶が時代を超えてるつぼのように混ざり合い、往還するつくりの一冊。ほかの著作にくらべ少し湿っぽい雰囲気があるのは、家族の思い出にふれる筆のせいだろうか。まさにヴェネツィアにいるように、水の上にたゆたうイメージがある。
    特に、確執を抱えながらも、父の一番の理解者だったとやはり思っていたであろう敦子さんが、オリエント・エクスプレスのコーヒーカップを手に父の死の床へと急ぐ終章と、その前に置かれた、さりげないくらい急いで筆を走らせたような夫との別れの予感をつづった章が、胸を打つ。

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    2012年12月30日
  • 遠い朝の本たち

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    著者の生きてきた背景や感じ方・考え方・捉え方に共感するところが多く、吸い込まれるように読み終えて、著者が小さい頃から読んだ本についての感想に感化されて何冊か読んでみたいと思った。

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    2011年10月22日
  • コルシア書店の仲間たち

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    お布団に入って、
    寝る前に聞く、
    おばあちゃんの思い出話、のような作品。

    イタリアで過ごした若き日の思い出が、
    たんたんと綴られています。

    小説のように客観的。

    感情が抑えられているぶん、
    じわーと、胸がくるしくなる。

    「もう過ぎたことだけれど」 みたいな、
    諦め?のようなもののアンニュイな感じに、
    いつも涙ぐんでしまいます。

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    2020年05月04日
  • 遠い朝の本たち

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     アン・モロー・リンドバーグの『海からの贈り物』は、名著として名高い。試しに、ある程度本を読んでいそうな女性何人かに訊ねると、「読みました」とか「勿論読みましたよ」と返ってきた。中には「私の一番の愛読書です」と答えたひともいた。単なる随筆の域を超えて女性の生き方の指針たり得る一冊であるらしい(「らしい」というのは、私自身は男で『海からの贈り物』もよく読んではいないからだ)。
     そのアンも、多くの場合姓名ではなくてリンドバーグ夫人と呼ばれてしまう。実際、新潮文庫版の著者名でさえ「夫人」となっている。まるで、歴史的な冒険旅行家であるチャールズ・リンドバーグの配偶者であるということが、この女性の最

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    2011年03月01日
  • 遠い朝の本たち

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    須賀さんの本を読むのは初めてではないけどすごく久しぶり。
    本に対する思いや本をめぐる出来事について書かれたエッセー集。
    この方の感受性に触れることで誰もが優しい気持ちになれるんじゃないかと思います。
    全部楽しく読めたんですが、その中に「人間のしるし」という本に関するエピソードがありました。
    (私その本知ってる?多分読んだことある?)と思ったものの、借りたのか買ったのか詳しくどんな話だったとかは思い出せません。(後から探してみましたが家にも見当たりませんでした。)
    もやもやしつつ読み進んでいたら須賀さんがその本の中の一文を引用してました。
    それを読んだ瞬間、鳥肌!
    私もその部分抜粋してノートに書

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    2010年10月26日
  • ユルスナールの靴

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    息継ぎも心地よい、音楽のような文章。

    時間のベクトルが、ぐぐっと逆らうので、
    読み進めながら、自身の幼い日が自然とよみがえってくる。

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    2010年08月01日
  • 遠い朝の本たち

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    ああ、私が大事にして読んだ「ケティ物語」。想い出させてくれた。私にとっても「遠い朝の本たち」がたくさんで、忘れられない。これが、彼女の「遺著」である。帯に本文からの引用がある。     あの本を友人たちと読んだ頃、    人生がこれほど多くの翳りと、そして、それとおなじくらいゆたかな光に満ちていることを、     私たちは想像もしていなかった。誰にでも「遠い朝の本たち」があって、そして須賀敦子という人の書くものは、これからはもう増えないのだ、と、少し震えるような心で読んだ。

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    2011年07月19日
  • 本に読まれて

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    やはり好きな作家について書かれているとうれしくなります。紹介されている本が読みたくなって本屋へ足を運んだりしました。思い入れのある一冊。

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    2009年10月04日
  • 遠い朝の本たち

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    須賀敦子さんの文章って、声に出して読みたくなります。母も「海からの贈りもの」を持っていたので、今度読んでみよう!

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    2011年10月11日
  • ユルスナールの靴

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    マルグリット・ユルスナールという作家の生涯と作品、現代の自分、二つの世界を行きつ戻りつしながらゆっくりと溶け合う。小説のような随筆のような、須賀敦子の作品の中でも一番におすすめしたい一冊。

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    2009年10月04日
  • ヴェネツィアの宿

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    一貫して激しさとは無縁のような文章の須賀さん。でも伝わってくるものは熱い。涙が止まらなかった。
    あこがれの存在というのでもない、これを読んで、あぁイタリアに行きたいなというのでもない、だけど一生読んでいたい本だ。

    彼女の文章は、おそらく100年たっても心に深く
    突き刺さっていくだろうなぁ。
    その深さはその時々で違うだろうけれど。

    100年後は私生きてないや。

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    2012年07月10日
  • ユルスナールの靴

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    秀逸なエッセイ集。
    須賀敦子にしかなしえない、緻密で完璧な構成。
    彼女のエッセイには、小説のような深さと重みがある。
    とにかく手放しで褒めたい一冊。

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    2009年10月04日
  • 霧のむこうに住みたい

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    イタリア文学翻訳者であり、名エッセイストでもあった須賀敦子さんが生前に新聞や雑誌などに寄稿した短めのエッセイ29本。最後の作品集との触れ込み(2014年発行)。
    もう何年も前の一時期、須賀さんの本の虜になって、訳書もエッセイも次々に読んだ。その文章はどれも端正で知的、それでいて温かいお人柄が随所に感じられ、気品のようなもの(あまりいい言葉ではないけれど、育ちの良さ、とでも言おうか)がうかがえる。須賀さんの文章を読む時の独特な高揚感を久しぶりに思い出させてもらった。

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    2025年11月19日
  • 遠い朝の本たち

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    少し昔を生きていた方の文章なので、集中しないと頭に入ってこない感じはあった。(私の問題)

    でも、言葉選びと文のリズムが好きってことだけは実感できた。

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    2025年09月17日
  • 遠い朝の本たち

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    ずっと読みたい本フォルダに入ってた本、やっと読めたー!

    著者の本との思い出、人生と本当の関わりが連ねられていました。著者にとってそれらの本は人生に、とくに深く根付いているんだろう。私も興味を惹かれていくつかの本をメモしました。

    読み始めは正直、時代の違い(著者は戦争を知っている世代)などもあってあんまり感情移入できなかったけど、気づいたら2周目を読んでいた。

    著者の記憶力のよさ聡明さに脱帽し、子供時代2回引っ越したけど何歳ごろにどの家いたかも定かでないボケーッとした自分との対比が我ながらおかしく思いながら読んでいた。

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    2025年09月01日
  • 塩一トンの読書

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    著者の読書遍歴とその作品たちへの思い。夫と噂話をしていたらイタリア人の義母が、ひとりの人を理解するまでには、少なくも一トンの塩を一緒に舐めなければだめなのよ、とやんわり諭したことに由来する書名。
    読んだ本、これは読んでみたいという本がいっぱい。特になるほどと思ったのは、谷崎の「細雪」について。作者が源氏物語の現代語訳をやっていた時期に書いたのだそうで、蒔岡家の雪子と妙子を日本古来のあでやかさと奔放さと表現し、作品中の文章についても和文の優しさをつたえる文章と、漢文のかっちりした味を伝える文がある、源氏物語派と非源氏物語派だと。
    塩1トンの読書。読んでも読んでも、どんなに長生きしても、人の一生で

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    2025年06月02日
  • コルシア書店の仲間たち

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    イタリアはミラノの教会の一部を改造して設けた書店。そこに集った仲間たちとの思い出や書店が辿った運命を綴ったエッセイ集。
    著者は1929年生まれ。まず、この年代に生まれた女性で、日本から遠く離れた異国に留学していた方がいたことに驚きます。
    私にとって本屋は、まだ見ぬ面白い物語を探しに行く場所ですが、彼女がいたコルシア書店は、理想的な共同体や自分たちがどう生きるべきかの意見を交換したり詩や書物にまとめたりして出版する重要な活動拠点であり、政府や教会側から監視され活動を制限されるほど、存在感のある場所だったようです。
    当時の思想や国を取り巻く環境、理想とされた共同体について、私は正直「難しいことは全

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    2025年05月12日
  • ヴェネツィアの宿

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    つい先日イタリア旅行から帰って読んだ本
    淡々とした筆致なのに妙に惹きこまれ、読み終えたとき何とも言えない不思議な感動があった

    海外留学、ましてや移住する日本人なんてほんの一握りだった時代の空気感
    生活もものの考え方も違う人々とこうして心を通わせることができたのは、人柄や語学力だけでなく、幼い頃から筆者の中にキリスト教が根付いていたからだろうか

    私はたった数日のイタリア旅行に行っただけだけど、やや不安や心細さを感じつつも、その歴史や文化に圧倒され、街並みの美しさに惚れ惚れとしたことを思い出した。
    日本の文化もそれはそれで素晴らしいと思ってるけど、西洋への憧れはいつの時代も変わらない。

    遠い

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    2025年04月18日
  • ヴェネツィアの宿

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    読書会で須賀敦子の存在を知り、手に取る。
    自分もイタリアが好きで何度も訪問しているので、懐かしさもあり。
    ただ、内容的には家族のこと、特に父との関係がテーマになることが多く、その家族史も興味深く、且つ心を動かされる。(「オリエント・エクスプレス」は涙を誘う)
    時代は60年代~70年代のイタリアなので、時代背景の理解は必要かもしれない。

    文章もとても読み易く、巧い。

    以下抜粋~
    ・そのころ読んだ、サン=デグジュベリの文章が私を揺り動かした。「自分がカテドラルを建てる人間にならなければ、意味がない。できあがったカテドラルのなかに、ぬくぬくと自分の席を得ようとする人間になってはだめだ」

    ・たえ

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    2025年03月16日
  • 霧のむこうに住みたい

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    須賀さんの本は、三冊目。
    本書はエッセイ集。
    芦屋で暮らした少女時代から、フランス留学時代、イタリアに移ってから、そして東京に戻ってから、さまざまな時期の思い出が、各編でさらりと描かれていく。

    たとえば、アスパラガスひとつとっても、アスパラガス農家の娘として育ったアドリアーナという女性の来歴から、小学生時代に叔父が庭に植えたアスパラガス、そしてパリの学生寮で出るアスパラガスの料理と、自由に思い出が綴られる。
    二十年以上もたって、アドリアーナがアスパラ栽培でどんな苦労をしていたかやっと思い至るようになった、という苦い思いとともに。

    ミラノ、ジェノワ、フィレンツェなどの街を歩いた印象を書き留め

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    2024年08月31日