須賀敦子のレビュー一覧

  • ユルスナールの靴
    著者最期の作品。須賀敦子のや特徴である柔らかなふくらみのある文章をこれ以上に無く味わうことができる。
    ユルスナールという女性作家の作品と人生を辿りつつ、同時に自らの人生を絶妙に織り込んで自然と語りきってしまうその手腕は円熟というに他無いと思う。
    筆者が作中最後にユルスナールが最晩年まで過ごした部屋を...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    読めば読むほどに味わいが深くなり、ミラノの街の風景とその世界にどんどん引き込まれていく。
    でも何だかもの悲しく感じる。
    30年の時を経て紡ぎ出される、遠い昔になじんだ人たち。
    年老いてもなお、心に寄り添うさまざまな想い。人生は儚い。
    やがて孤独と向き合い、それでも想い出は人の心に生き続ける。
  • コルシア書店の仲間たち
    コルシア書店の仲間たち 須賀敦子 文藝春秋

    昔読んだ事があるのに
    なぜまた手にしたのかわからない
    エッセイという知識を転がす
    乙に済ました遊びが好きでないのに

    重たい本に気が滅入っている間の気晴らしだったのか
    いずれにしても外を描くことで間接的に自分を押し出す
    こうした表現には貴族趣味を覚える
  • コルシア書店の仲間たち
    著者が出会った個性豊かな人たちが、イタリアの生活や時代背景とともに描かれている。どんな人にも魅力的なところがあるのだということを気付かされた。
  • コルシア書店の仲間たち
    たしかに、最初の方はとっつきにくくて、大丈夫かなと思ったがだんだんこの書店の魅力、ミラノの雰囲気、詩的な表現に取り込まれていった。

    こういう穴ぐらのような場所というのは、みんなが求めていて、たとえば大学の部室なのか、行きつけの飲み屋なのか、なんとなく誰かが集まる親友の家なのか、そういう人間くさい、...続きを読む
  • 遠い朝の本たち
    須賀敦子さんのエッセイ。
    過去の自分や読書について語られています。

    小さいころからの友人、
    夙川から麻布に引っ越したときの出来事、
    隣人の俳人(原石鼎)のこと、
    「少女の友」の中原淳一の挿絵、
    などなど。

    取り上げられている本が特に有名な本とは
    限らないところが興味深く、
    「即興詩人」「戦う操縦...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    須賀敦子氏の作品を読むのは「トリエステの坂道」に次いで2作目。ミラノのコルシア書店での仲間たちとの思い出を語っている。

    出会いと別れ、年月の経過による人の変節など少し物悲しいけれど、どこか心温まる話が散りばめられている。それと文章が美しい、というか洗練されている。

    大切な人との死別、友人との別離...続きを読む
  • ユルスナールの靴
    マルグリット・ユルスナールとその著作、そして著者須賀敦子自身のエピソードを交錯させながら、見事に独自の世界を気づきあげています。改めて、須賀敦子の力量に感嘆します。
  • コルシア書店の仲間たち
    かつてイタリアのミラノに存在した小さな書店を共同体として集まった仲間たちを、著者の目線で綴ったエッセイ。
    回顧録といってもいいかもしれない。

    時は1960年代。

    情熱を燃やして集う仲間たちの生き生きとした姿、人間味溢れる姿は最後までとても美しい。
  • コルシア書店の仲間たち
    1930年代から1960年代にミラノにあった コルシア・デイ・セルヴィ書店に集まった共同体を作者は1992年に描いている。
    土地を離れる者、死別する者……記憶と共に生きる友情
  • ユルスナールの靴
    須賀敦子 「 ユルスナールの靴 」 作家ユルスナールの軌跡を綴った本。ユルスナールの描く世界と 著者の世界を重ね合わせる構成。

    作家自身が忘我し、小説の中の主人公と一体化する姿を 「自分の足にぴったり合った靴で旅をする」と表現したのだと思う

    「自分の足にぴったり合った靴で旅をする」ことの意味
    ...続きを読む
  • 塩一トンの読書
    タイトルに興味を持ち購入。初めて読むジャンルの本で、時をタイムスリップしたかのような気持ちになった。歴史を文学を通じて読み解く、歴史の一コマが目に浮かぶ感覚だった。
  • ヴェネツィアの宿
    某所読書会の課題図書.12の短編で構成されているが,イタリア,フランス,イギリスなどの街の描写が素晴らしい.どの国の人たちでもすぐに巻き込んでしまうキャラクターが,非常に心温まる経験のバックグラウンドになっているのだろう.言葉のギャップについてはあまり出てこなかったが,積極的な学び取る精神が,今より...続きを読む
  • 塩一トンの読書
    こんなにも読みやすい文章を読んだのは久しくなかったように思う。スルスルっと読めてしまう。それは良いことなのか、残念なことなのか。スル何かしっくり来ない、何か引っかかる、肝心なことが読めていない気がする、と感じた時は、また、気軽にふらっと読み返しもできる。そんな受け入れやすい、でも、意識がちゃんと起き...続きを読む
  • 塩一トンの読書
    「ひとりの人を理解するまでには、すくなくとも、一トンの塩をいっしょに舐めなければならないのよ」
    著者の須賀さんが結婚して間もないころ、姑に言われた言葉がこの本のタイトルに。

    一トンという大変な量の塩をともに舐めつくすには、途方もない時間がかかる。一人の人間を理解するというのは、生易しいことではない...続きを読む
  • 霧のむこうに住みたい
    紀行文が特に秀逸。
    「ミラノの季節」や、「ヴェネツィアに住みたい」、「アッシジに住みたい」は、行間からその街の佇まいだけなく、街の匂いまでもが立ち上ってくるような感じがする。
    また、訳書である「ある家族の会話」もぜひ読んでみたくなった。
  • コルシア書店の仲間たち
    著者の静かで暖かい、それでいて透明な視線が、コルシア書店のメンバーに注がれているのがよくわかる。

    噛みしめるように読みたい名文。

    書き出しと終わりが上手い。

    年末にBS放送で特集があってて、視覚的にも補強された状態でよんだせいか、とても印象的。

    出てくる一人一人が個性的ででも、どこかイタリア...続きを読む
  • コルシア書店の仲間たち
    1992年発表の須賀敦子の第2作であり、他の多くの作品集と異なる書下ろしのエッセイ集である。
    題名の通り、著者がミラノに住んでいたときに生活の中心となっていたコルシア書店に関わりのあった人々が、20余年のときを超えて生き生きと、篇ごとに主人公となって現れてくる。
    登場するのは、特別な人生を送った人々...続きを読む
  • 霧のむこうに住みたい
    須賀敦子の没後2003年に、様々な月刊誌、新聞等へ掲載されたエッセイをまとめて発刊された作品集。
    よって本書は、著者が存命中に立て続けに発表した、『ミラノ 霧の風景』、『コルシア書店の仲間たち』、『ヴェネツィアの宿』、『トリエステの坂道』など、比較的はっきりしたテーマをもっている作品集とは趣を異にす...続きを読む
  • ヴェネツィアの宿
    1993年発表の須賀敦子の第3作。
    文藝春秋の月刊誌『文學界』に、1992~93年に『古い地図帳』という通しの題名で連載されたものに手を加えた、12篇が収められている。
    冒頭の『ヴェネツィアの宿』と最後の『オリエント・エクスプレス』では、著者が「父への反抗を自分の存在理由みたいにしてきた私」と語る父...続きを読む