須賀敦子のレビュー一覧

  • コルシア書店の仲間たち

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    ネタバレ

    著者がイタリアで暮らし、そこで交流したコルシア・デイ・セルヴィ書店に集った仲間たちについて一人ずつ書いている本。
    仲間たち、と言うけれど、文章の距離感は彼ら自身からは少し離れて、ゆったりと取ってあるように思う。優しいというよりは、ただあるがままに、偏屈さや悪癖もその人の一部としてユーモアを持って観察していて、まるごと受け取っている感じ。好きな作家の梨木さんのエッセイと同じ雰囲気を感じる。とても好き。なんとなく、二人とも神学に触れていてヨーロッパ留学、現地で暮らす、そのことをエッセイに…というあたり気質が似ているのかもしれないと思ったりする。
    いろんな人のいろんな人生があり、その中のほんの少しの

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    2021年01月05日
  • 霧のむこうに住みたい

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    美しく、みずみずしいエッセイです。
    須賀さんの生活を、近くで覗き見しているかのように、光や湿度を感じる作品です。

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    2020年12月05日
  • 霧のむこうに住みたい

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    落ち着いた文章が読みたくなると戻ってくる須賀敦子。
    1990年に『ミラノ霧の風景』を出版し、1998年に亡くなっているので、生前に出版されたものは5冊と実はとても少ない。
    1998年から99年には5冊が出版されているが、追悼のタイミングにあわせるために雑誌などに掲載された文章を集めてバタバタと出版された感が否めず。
    
    この『霧のむこうに住みたい』は『須賀敦子全集』をもとに2003年に出版されたものなので、きちんと選ばれて編纂されているという感じがする。
    
    選者の意図まではわからないけれど、最後の一文で泣かされるエッセイが多い。もともと須賀敦子のエッセイはラストの一文が見事なのだけれ

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    2020年09月02日
  • 霧のむこうに住みたい

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    イタリアの暮らしや旅行した先の風景、夫や友達との思い出が綴られているエッセイ。須賀敦子さんの本は初めて読んだんだけど、なんというかホスピタリティのあふれる感じの文章で心地よかった。愛が通奏低音のように流れている、と思う。様々な描写も、風景がさあっと浮かんでくるように自然で豊か。何気ない文章に深い観察と洞察がにじんでいるので、かみしめるように余韻を楽しむことができる。
    「私のなかのナタリア・ギンズブルグ」と、「となり町の山車のように」が好き。
    私も黙って人の話を聞いているというのが苦手ですぐ別のことを考えているので、なんだか沁みてしまった。線路に沿って、思考をつなげる…。

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    2020年08月27日
  • ヴェネツィアの宿

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    初めて読んだ須賀敦子。
    著者の幼少期〜成人して留学、結婚した頃の、とりとめない回想と追憶が、上質な映画のように綴られていく。
    にしても、この方、とんでもないお嬢さんであることが読み進めると分かってくる。
    終戦から10年経たずにフランスへ私費留学というのもビックリだが、お父様が戦前にアメリカ、ヨーロッパへ贅沢三昧のグランドツアーをして、実家は神戸の実業家、麻布に別宅、田舎には武家時代のお屋敷と、語るネタは尽きない。
    終戦直後に東京の聖心語学校(現在のインターナショナルスクールの前身)で日本語禁止、外人シスター監視の寮生活を送るというのもハイパー。 
    留学自体は貧乏で、と言われても留学すること自体

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    2020年08月06日
  • 霧のむこうに住みたい

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    なんとなくこの本は晴れ渡った日よりも、雨の日に読みたくなるな、と思っていたら、最後の解説で江國香織の文章を読んで納得でした。

    須賀敦子さんを存じ上げなかったので、この本で初めて知ることになりましたが、イタリアに惹かれて過ごした日々が静かに美しく語られていて、心が落ち着きました。

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    2020年07月25日
  • コルシア書店の仲間たち

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    階級も信条も異なる人々が集う書店。

    生きてゆくことは出会いと別れの繰り返しであること。

    読み終わった後、少しの切なさと
    静かで温かな喜びに包まれる感覚がしました。

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    2020年04月23日
  • ユルスナールの靴

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    著者最期の作品。須賀敦子のや特徴である柔らかなふくらみのある文章をこれ以上に無く味わうことができる。
    ユルスナールという女性作家の作品と人生を辿りつつ、同時に自らの人生を絶妙に織り込んで自然と語りきってしまうその手腕は円熟というに他無いと思う。
    筆者が作中最後にユルスナールが最晩年まで過ごした部屋を訪ねるシーンがあるが、私たち読者もこの作品を通して、筆者の人生の節目節目を、一つずつ部屋を訪ねるようにそっと垣間見ることができる。
    私の中の白眉は、幼少期の親友・ようちゃんとの別れを語った、「一九二九年」の章である。相変わらず涙腺に来るのである。

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    2020年03月22日
  • コルシア書店の仲間たち

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    読めば読むほどに味わいが深くなり、ミラノの街の風景とその世界にどんどん引き込まれていく。
    でも何だかもの悲しく感じる。
    30年の時を経て紡ぎ出される、遠い昔になじんだ人たち。
    年老いてもなお、心に寄り添うさまざまな想い。人生は儚い。
    やがて孤独と向き合い、それでも想い出は人の心に生き続ける。

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    2019年10月07日
  • コルシア書店の仲間たち

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    コルシア書店の仲間たち 須賀敦子 文藝春秋

    昔読んだ事があるのに
    なぜまた手にしたのかわからない
    エッセイという知識を転がす
    乙に済ました遊びが好きでないのに

    重たい本に気が滅入っている間の気晴らしだったのか
    いずれにしても外を描くことで間接的に自分を押し出す
    こうした表現には貴族趣味を覚える

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    2019年10月03日
  • コルシア書店の仲間たち

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    著者が出会った個性豊かな人たちが、イタリアの生活や時代背景とともに描かれている。どんな人にも魅力的なところがあるのだということを気付かされた。

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    2019年09月28日
  • コルシア書店の仲間たち

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    ネタバレ

    たしかに、最初の方はとっつきにくくて、大丈夫かなと思ったがだんだんこの書店の魅力、ミラノの雰囲気、詩的な表現に取り込まれていった。

    こういう穴ぐらのような場所というのは、みんなが求めていて、たとえば大学の部室なのか、行きつけの飲み屋なのか、なんとなく誰かが集まる親友の家なのか、そういう人間くさい、人があつまってしまう場所というのは居るだけで居心地がよくて、理念や目的があってもなくても、結局はそこにいる居心地の良さが目的になるのだと思う。

    そして、それぞれが目的をもってそのねぐらを離れていくときがくる、やはり心の指針を定めることができるのは自分だけであり、それなくして、本当の意味での心の平静

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    2020年05月29日
  • 遠い朝の本たち

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    ネタバレ

    須賀敦子さんのエッセイ。
    過去の自分や読書について語られています。

    小さいころからの友人、
    夙川から麻布に引っ越したときの出来事、
    隣人の俳人(原石鼎)のこと、
    「少女の友」の中原淳一の挿絵、
    などなど。

    取り上げられている本が特に有名な本とは
    限らないところが興味深く、
    「即興詩人」「戦う操縦士」
    「幼きものに」を読みたいです。

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    2019年07月11日
  • コルシア書店の仲間たち

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    須賀敦子氏の作品を読むのは「トリエステの坂道」に次いで2作目。ミラノのコルシア書店での仲間たちとの思い出を語っている。

    出会いと別れ、年月の経過による人の変節など少し物悲しいけれど、どこか心温まる話が散りばめられている。それと文章が美しい、というか洗練されている。

    大切な人との死別、友人との別離等があっても、人は全くの孤独ではない。

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    2019年06月29日
  • ユルスナールの靴

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    マルグリット・ユルスナールとその著作、そして著者須賀敦子自身のエピソードを交錯させながら、見事に独自の世界を気づきあげています。改めて、須賀敦子の力量に感嘆します。

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    2019年06月20日
  • コルシア書店の仲間たち

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    かつてイタリアのミラノに存在した小さな書店を共同体として集まった仲間たちを、著者の目線で綴ったエッセイ。
    回顧録といってもいいかもしれない。

    時は1960年代。

    情熱を燃やして集う仲間たちの生き生きとした姿、人間味溢れる姿は最後までとても美しい。

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    2019年06月19日
  • コルシア書店の仲間たち

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    1930年代から1960年代にミラノにあった コルシア・デイ・セルヴィ書店に集まった共同体を作者は1992年に描いている。
    土地を離れる者、死別する者……記憶と共に生きる友情

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    2018年11月25日
  • ユルスナールの靴

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    須賀敦子 「 ユルスナールの靴 」 作家ユルスナールの軌跡を綴った本。ユルスナールの描く世界と 著者の世界を重ね合わせる構成。

    作家自身が忘我し、小説の中の主人公と一体化する姿を 「自分の足にぴったり合った靴で旅をする」と表現したのだと思う

    「自分の足にぴったり合った靴で旅をする」ことの意味
    *旅をする=書くこと→作家として生きること
    *靴=小説の主人公→作家としてのスタイル
    *ぴったり合った=一体化→愛の日々→忘我の恍惚
    *孤独性、放浪性(ノマッド)が 忘我の恍惚を手に入れる作家の生き方 と捉えた

    神に到達しようとする魂の道 の3段階
    1.神の愛に酔いしれ、身も心も弾むにまかせる
    2

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    2018年09月27日
  • 塩一トンの読書

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    タイトルに興味を持ち購入。初めて読むジャンルの本で、時をタイムスリップしたかのような気持ちになった。歴史を文学を通じて読み解く、歴史の一コマが目に浮かぶ感覚だった。

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    2018年08月10日
  • ヴェネツィアの宿

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    某所読書会の課題図書.12の短編で構成されているが,イタリア,フランス,イギリスなどの街の描写が素晴らしい.どの国の人たちでもすぐに巻き込んでしまうキャラクターが,非常に心温まる経験のバックグラウンドになっているのだろう.言葉のギャップについてはあまり出てこなかったが,積極的な学び取る精神が,今より女性に対する目に見えないしがらみがあった時代でも,輝くような生き方をサポートしたのだと感じた.でも,かなり裕福で,一般人とはややかけ離れた生活基盤が随所に出てくるが,それをさらけ出すような雰囲気が見えないことに好感を持った.関川夏央の解説も的確なコメントが満載で素晴らしい.

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    2017年10月23日