須賀敦子のレビュー一覧

  • 霧のむこうに住みたい

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    少女のような心の瑞々しさと骨太な知性。
    美しく編まれた文章に心が洗われる。

    合理性は知性のほんの一面でしかない、ということを知っている人の豊かさ。

    折に触れて読みたくなる一冊。

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    2021年01月02日
  • コルシア書店の仲間たち

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    本好きが集うオフ会で須賀敦子の『ミラノ 霧の風景』をいただいたのが昨年の春。以来、この著者の本は「村上春樹翻訳ライブラリー」シリーズと並んで、ワタシの積読棚に常に鎮座することになった。
    心が乾いて荒れた時、心が乱れて雑になった時、この著者のエッセイを手にとって、治癒してもらう。美しく繊細でしなやかな文章は心を穏やかにする、ということを実感できる。
    1960年代、著者がミラノ在住時に関わった書店には、理想を求めて若者たちが集まった。その個性あふれる面々を綴ったこのエッセイは、楽しくもあり、物哀しくもあり。ミラノに行ったことのないワタシが読んでも、その美しい街並みとその街で正直に生きていた若者達の

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    2018年11月18日
  • 島とクジラと女をめぐる断片

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    ネタバレ

    役に立たない原典探しでたどり着いた本。読んで良かった……。会話文と地の文がひと続きになっているだけでなく虚構と現実もひと続きになっていて、詩情におおいに溢れており、女をめぐる断片とクジラの断片には感嘆させられてしまった。

    女は名前以外全て嘘をついていたということは、下男だと言い放ったのも嘘だったのだろう。そう思うと、裁判で真実が明らかにされて男は後悔したのかもしれないが、大陸から追いかけてきた奴から女が逃げるためには男に銛で殺してもらうしかなかったのかもしれないので、確かに男(ルカーシュ・エドウィーノ)と女(イェボラス)の間には愛があったのかもしれない。

    クジラから見た人間の姿は本編を総括

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    2018年10月13日
  • ユルスナールの靴

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    イタリア文学者でエッセイストの須賀敦子さんの『ユルスナールの靴』を読む。
    マルグリット・ユルスナールはフランスの女流作家で、出口治明さんが激賞された『ハドリアヌス帝の回想』の作者。
    生まれてすぐ母を亡くし、父が亡くなった20代半ば以降、パリ、ローマ、ヴェネツィア、アテネと旅に過ごした人です。第二次大戦の難を避けて恋人の女性と渡米した後は、生涯ヨーロッパに戻ることなく、アメリカ東北部メイン州のデザートアイランド島の小さな白い家で人生を終えました。

    このユルスナールという、私たちにはあまり馴染みのない作家の人生を須賀さんは追っていきます。
    「きっちり足にあった靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩い

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    2018年10月10日
  • コルシア書店の仲間たち

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    どこか距離を置いた視点で描かれる友人たちの個性。最初こそイタリア語の混じった表現に読みにくさを感じたものの、第2章ともなればぐいぐい引き込まれて行く。それは、東京へ帰った著者が、まるで夢か現実か区別のつかない過去に、友人たちという輪郭を描くことによって亡き夫の影を求めて暗中模索あいているかのよう。その夫と結婚した経緯も知らされなければ、突然読者には彼が結婚しばらく後に亡くなったことが知らされる。書かないからこその思い出が伝わってくるよう

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    2018年04月06日
  • コルシア書店の仲間たち

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    須賀敦子さんが『ミラノ 霧の風景』で女流文学賞、講談社エッセイ賞を受賞したのが1991年と知り「なるほど、あの頃か‥」と強烈に思い出した。平成3年。昭和から平成へ変わってまもない頃。
    世界では湾岸戦争が起こり日本では雲仙・普賢岳の火砕流で多くの方々が亡くなった年。(個人的事情で忘れられない年でもある。)
    本書はその翌年、1963年に著者がミラノを去ってから二十余年、63歳の時出版されたもの。須賀敦子さんの美しく無駄のない文章からは彼女が住んでいた1960年代頃のミラノの景色、時代の移り変わりがリアルに伝わってくる。
    須賀敦子さん入門本としてはずせない一冊。

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    2022年05月17日
  • ヴェネツィアの宿

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    イタリア語翻訳者の須賀敦子さんのエッセイ集。彼女が翻訳した本は読んだことがあったが、エッセイを読むのは初めて。
    どれも心にしみて、とても良かった。でも妙に共感できたのは、私がヨーロッパに住んで似た人生を送っているからだろう。それにしても、彼女の感性はすごい。本書は、彼女がフランスやイタリアへの留学時代や結婚してからの生活のなかで出会った人々や、訪れた場所、日本でのミッションスクールで暮らしながら考えたことなどが綴られている。全く偉そうでないのに、教養がにじみ出る文章である。
    イタリア人の夫に先立たれるところは、胸が痛んだ。ドイツ人の友人の話もとても良かったし、オリエント急行の話も素晴らしかった

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    2017年09月21日
  • 須賀敦子

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    ネタバレ

    エッセイと小説の違いを厳密にはよくわかっていなかった。前者は真実であり、後者は創作なのだそうだ。本書に収められているのはすべてエッセイであり、筆者は生涯小説を書かなかったという。それにしても、すべてが真実であるならば、何と楽しい人生であったことか。勿論、両親から猛反対された結婚や、その夫に先立たれたことは、さりげなく表現されているものの、大変つらい出来事であったと想像する。それでも本作の多くには、たくさんの友人たちと過ごした人生の楽しさにあふれている。筆者の愛するサバの詩がもっともそのことを象徴しているだろう。「人生とは、生きることの苦しみを癒してくれるものである」

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    2016年08月27日
  • ヴェネツィアの宿

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    名文。

    これは読む人を選ぶと思いますが、本好きなら一度は読んでほしい。

    水のようにすらすらと読めて楽しいエッセーもいいけど、たまにはこういう文も読まないとダメになってしまう。
    しっかりと意識して読まないと一つ一つの文が意味を持って入ってきません。でも、読めば読むほど、面白いし情景が心に迫る。

    塩野七生や米原万里をおもわせます。

    しかし、上記の二人にも通じるけど、時代から考えて外国に飛び出してそして一端の人となることのむずかしさ。その才智。憧れます。バックアップがあるとはいえ、やはり尋常ではないエネルギー。でもそれをひけらかさない。

    すごいなぁ。

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    2015年06月05日
  • 塩一トンの読書

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    塩を1トン舐めるように夫婦を共にするという言葉を姑から言われたそう。そこで、筆者は読書に置き換えたそう。

    筆者は晩年新聞等のコラムに書評を書いていたそうだ。
    いい読書のとっかっかりになると思う。
    読書だって塩1トン舐めるようなもの。
    いろいろな本を読んで、少しずつ消化したい。

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    2014年12月11日
  • 霧のむこうに住みたい

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    須賀敦子さんの本が書店の平台に乗るようになってから亡くなるまで、その数は決して多くはなかったけれど、だからそれらを折りにふれて大事に読み返してきた。もう新しいお話を読むことはできないのだ。好きな作家が居なくなってしまうというのはそういうことだ。
    没後に編まれた数々の本にも限りがあるから、なんとなく、ときが来るまで、と思って読まないできた。
    文庫として書店に並んだのをきっかけに手にしたこの本も、そんな中の一冊。
    思いがけず、ずいぶん時間が経ったわりに、世の中も自分もいろいろなことが変わったと思っていたのに、あの頃と同じような感慨とともにいまこれを読んでいる。
    先に読んでしまった江國香織さんの文庫

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    2014年09月14日
  • ヴェネツィアの宿

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    須賀さんの家族についてのエッセイが多いこの本。
    若い頃、けっこう家族のことや留学のときの苦労の話が多く語られている。

    年をとってから再び会った友人と1時間を共に過ごしたとき、あまり語らうことができなかったけど、友人のたたずまいを見ていい人生を送っていることが感じ取れたそう。
    この話を読んで、今も昔も変わらないことというのはたくさんあるんだなと思った。

    須賀敦子さんってけっこう遠い人なのかと思っていたが、少しだけ近く思えた。

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    2014年07月12日
  • 本に読まれて

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    須賀敦子さん、ずっと気になっていた。何から読もうか、須賀敦子という名を目にするたびに考えていたんだけど、書店で目にしたこちらの装丁がすごくツボだったし、書評好きなので購入した。

    比喩に理念が絡まっていて(一読では美しいけれども見逃しがち)すごくかっこよくてあたたかい文章だった。

    還暦超えてもデュラスにときめけるのか、ちょっと長生きしたいななんて思った。

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    2012年12月11日
  • なぜ古典を読むのか

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    ここで紹介されている作品や解説は日本人には馴染みが薄いと思う。が、それ自体は問題ではない。
    最新作のレビューではなくなぜ古典なのか、古典というものをどう捕らえるかが問題なのだ。
    たしかに理解しづらくはあるが、カルヴィーノの古典に対する精神に触れられることは、日本においても素晴らしい特権である。
    彼の気質をなぞりながら読書したいと願ってしまう。

    池澤夏樹氏の善きおせっかいなカルヴィーノ擁護論。
    それぞれ別個の古典作品が、読み手の中でつながって、あらたな物語を紡ぐ。
    これぞ、古典多読の醍醐味!
    「なっちゃん、よくぞ言ってくれました!」の拍手喝采である。

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    2012年12月10日
  • ヴェネツィアの宿

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    須賀さんの文章に初めて触れた時
    ?と、疑問符が湧いた。
    初めての味覚に戸惑う子どもに
    なった様で、それは新鮮さを持って
    何度も何度も口の中で須賀さんの言葉を転がすのだが、不思議とぴったりの
    形容が浮かばない。
    彼女の人生に触れれば、糸口が見つかるだろうか?
    そんなわけで、私の須賀敦子探しの旅がこの本から始まった。

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    2012年10月03日
  • 遠い朝の本たち

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    妙先生にお借りした本。
    子供の頃感じたこと、本にまつわること、そういったことを大切に、素直な気持ちで書けるなんてすてき。子供の頃何が大切だったか、どう感じたのか、そういったことを大切にしている人が好き。例えば、中勘助とか。忙しない日々に、つかの間の透き通った時間をもらえた気分。アン・リンドバーグも並行して読んでいる。そんな年頃なのかな。

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    2012年09月30日
  • ヴェネツィアの宿

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    ずっと読んでいた本。借用本で一区切り。

       ヴェネツィアの宿
       夏の終わり
       寄宿学校  
       カラが咲く庭
       夜半のうた声
       大聖堂まで 
       レーニ街の家
       白い方丈
       カディアが歩いた道
       旅のむこう
       アスファデロの野をわたって
       オリエント・エクスプレス

    イタリアに住んでいた頃のことと日本にいた時の話が交互に綴られている。何故か音が聴こえない風景ばかり思い浮かべて読んでしまう。ゆえに、何も考えず、静寂の中に浸りたいと思うとき、著者の本を手にとってしまう。著者は恵まれた環境の中で好きな勉強に没頭できる身分。なるほど、戦中戦後と外国へ女一人旅

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    2012年11月19日
  • ユルスナールの靴

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    修学旅行の感想を高校時代の恩師に読んでもらった時に、「須賀敦子を彷彿とさせられました」という言葉を渡されてから、ずっと心のどこかにひっかかっていた名前を、ようやく手に取る。
    わたしの須賀敦子処女をこの本に、このタイミングで捧げられたことをほんとうに幸運におもう。
    ユルスナールという数奇な人生を辿った女流作家と、須賀敦子という稀有な言語感覚を持った翻訳家の生が、時に伝記的に、時に紀行文的に、あるいは随筆的に語られる。
    何より書き出しがいい。こんな風に書きたい、というお手本のような文章。(引用参照)

    ふとじぶんの足を見る。扁平でいびつで小さく、大地を踏みしめるにはあまりに頼りなく、恥ずかしくなっ

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    2012年05月25日
  • ヴェネツィアの宿

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    ネタバレ

    「遠い朝の本達」と同様、著者の少女時代や父に対する反抗と愛情、母への想いなど日本や日本人に関する随筆が半分を占める。特にこの本は父の生き様や、著者が奔走の末になんとか修復にこぎつけた父母の関係がはっきりと描かれており、驚くことも多かった。いままでの彼女の文章からは、そのような家族のもめ事は感じ取れなかったからである。若き日の彼女は、密かに心痛めていた両親の関係にも、自身の内側の問題同様、真摯に向き合い行動してきたのだなぁ。著者の常に精神的に学問的に(?)向上し続けようとするストイックな姿勢と、それ故に日本でもヨーロッパでもがき苦しむ内面の遍歴をたどることができる。それがとてもうれしい。このよう

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    2012年05月06日
  • ヴェネツィアの宿

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    わたしにとって、特別な本です。
    静かな、けれども着実にふみしめて歩いて行くような文体。

    須賀さんは、本当に美しい言葉を話す人だったと
    彼女と親しかった先生からうかがいました。

    須賀さんのエッセイは
    いまでも多くの人の心のなかに、たしかな音をたて、やわらかな足跡を残していく
    そんな作品のような気がします。

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    2012年04月01日