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保護主義,関税引き上げ,貿易戦争──自由貿易の利益は,それがなくなるまで気づくことはできないのか? 人々が抱きやすい貿易に関する誤解を解くために,日常生活との関わりの中から自由貿易のメリットとデメリットを整理したうえで,冷静にその是非を考える。
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Posted by ブクログ
題名は「自由貿易はなぜ必要か」ではなく、「それでもなぜ自由貿易は必要か」とした方が適切かもしれない。国際経済学に関する本では、結論が比較優位の礼賛で終わってしまうのが大半だが、現代の貿易理論では、自由貿易がメリットだけでなくさまざまなデメリットも生じうることを踏まえた上で、それでも保護貿易の問題と自...続きを読む由貿易の必要性を説かれているという。本書では、国際貿易に関する豊富な実証研究が引用されており、教科書上の理論と現実の国際貿易の隙間を埋めてくれる本だ。 印象に残った話は中間財貿易を扱った第3章。多くの教科書において、国際貿易は2国間の最終財のやり取りのモデルが中心だが、現在の国際貿易の主役は、最終財を作るために必要な中間財をやりとりする中間財貿易だ。例えば、2017年の日本の中間財輸出の割合は58.6%、中間財輸入の割合は40%も占めるという。現代では、グローバル・バリュー・チェーンの発達により、1国内で製品をすべて生産することがもはや稀で、多くの国で中間財が生産され、それが輸出・輸入される国際分業体制が取られている(例えばiphone)。外国に輸出するために、外国からの中間財の輸入が必要であり、逆に輸入の増加は輸出の増加につながることで、中間財貿易により輸入が輸出を呼び、輸出が輸入を呼ぶのが現状だ。ゆえに、貿易収支の赤字・黒字をもって、良し悪しを判断するのはもはや通用せず、大事なのは交易条件であるという。 続く第4章では、グローバル化が招く失業や賃金格差について書かれている。従来の国際経済学の研究では、格差の拡大は適切な所得再分配(補償原理)により解消されるものであり、貿易利益を否定する材料とならないという立場をとってきたが、近年の研究では、所得格差の問題を考慮したうえで貿易利益を評価しなおそうとする動きも見られるという。現在の国際経済学は、比較優位一本槍ではないというところか。本書で引用されている多くの研究では、グローバル化は国内で失業を増やし、賃金格差を拡大する恐れがあることを示唆する研究はあるが、グローバル化が逆に雇用を増やし、また貧困層の生活水準を上げる効果を示唆する研究もあり、一筋縄ではいかなそうである。筆者の結論は、”だからといってグローバル化と労働問題が無関係だと放置するわけにはいかず、もしも労働問題を悪化させてしまうきっかけになるのであれば、グローバル化の波を一定程度抑制することも必要な応急措置となりうる”と妥当なものだ。(P.106) 他にも、一時期問題となっていたバター不足の裏に潜むバターの多重課税問題や保護貿易が極めて限定的な条件でしか有効とならないことなどが説得力を持って語られており、勉強になった。教科書の国際貿易と現実の国際貿易の齟齬に悩む人に薦められる本である。
Buy American法やMake in India政策など、自国中心主義が存在感を増してきており、トランプ政権では攻撃の対象にもなった自由貿易。 リカードの比較優位論は知識として把握しており、自由という言葉も理念としては素晴らしいけれど、米国やインドの言う通り国内産業には悪影響が大きいのかな、く...続きを読むらいに思っていた。 本書では、自由貿易の欠点にも触れつつ、自由貿易はなぜ必要であるのか、というのをわかりやすく解説している。 輸入制限はTiVAという観点から見てみると回り回って自国を苦しめるという論点や、輸入への関税は消費者にとって消費税と同様の負担であるという論点、FTAを締結しないことによる相対的な関税率上昇・貿易障壁の存在など、様々な角度から論点が整理されていて勉強になった。 「なぜ必要であるのか」という解説は、普通に生活していてもなかなか入ってこないので、本書は極めて有益と思う。
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自由貿易はなぜ必要なのか
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椋寛
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