Posted by ブクログ
2019年05月31日
岡崎琢磨さんの好感度抜群のデビュー作「珈琲店タレーランの事件簿」第1弾です。推理にはやや不自然さがありながらも作風はコミカルとセンチメンタルが程よくブレンドされた味わいでしたね。人物名も珈琲豆になぞらえる凝り様で、語り手の青山(ブルーマウンテン)、ヒロインのバリスタ切間(キリマンジャロ)、オーナー藻...続きを読む川老人(モカ)、ストーカー男の胡内(コナ)といった具合です。他にシャムの仔猫シャルルも愛らしくて心癒されますね。切間さんがコリコリコリと珈琲豆を挽きながら推理した後の「たいへんよく挽けました」の決め台詞が最高でしたね。
切間さんが語り手の青山の迷推理に対し「全然違うと思います」と駄目出しするパターンも愉快で青山の「んぐぁ」の台詞も笑えて、女たらし老人・藻川の京女ことばも微苦笑を誘われますね。唯一、著者が焦って間違われたのかなと思えるのが、301頁からの病院の場面で、これは読み手に切間が入院しているのだと錯覚させる為の意図だったと思いますが、それならば青山がどうして自分の入院している病室に花束を持って向かおうとしていたのか?の理由と説明が全く為されていません。でもまあ最後が悲しみで終わらずに希望が漂っていて良かったですね。