プロフィール

  • 作者名:香納諒一(カノウリョウイチ)
  • 性別:男性
  • 生年月日:1963年01月16日
  • 出身地:日本 / 神奈川県
  • 職業:作家

早稲田大学文学部卒。1991年『ハミングで二番まで』でデビュー。『幻の女』で第52回日本推理作家協会賞を受賞。『贄の夜会』、『心に雹の降りしきる』など数多くの作品を手がける。

配信予定・最新刊

作品一覧

  • さすらいのキャンパー探偵 降らなきゃ晴れ

    さすらいのキャンパー探偵

    小説・文芸

    4.0
    1~3巻550~594円 (税込)
    改造したフォルクスワーゲン・タイプ2、通称ワーゲンバスを塒に、フリーのカメラマンと探偵の二足の草鞋を履く辰巳翔一。様々な依頼に応えて、今日も全国を東奔西走する。「降らなきゃ晴れ」「バーボン・ソーダ」「石売り伊三郎」3編を所収。
  • タンポポの雪が降ってた

    タンポポの雪が降ってた

    小説・文芸

    4.7
    1巻550円 (税込)
    甘美な恋の思い出と裏切りの痛みをたどりなおす、グレイハウンドの旅を描いた表題作はじめ、ふとした感傷が時をへだてて突きつける人生の哀しみを綴る「歳月」など、乾いてせつない珠玉七編を収録。
  • 刹那の街角

    刹那の街角

    小説・文芸

    4.3
    1巻550円 (税込)
    新宿の裏社会とアジアの地下銀行の取引の陰で、幸薄いひとりの女が命を落とした。表題作「刹那の街角」をはじめ、運命に翻弄され心ならずも犯罪に巻き込まれる人生の悲哀を描いた計七編を収める連作短編集。
  • ヨコハマベイ・ブルース

    ヨコハマベイ・ブルース

    小説・文芸

    4.0
    1巻605円 (税込)
    金になることなら何でもやる、元凄腕の興行師・金円友。ハマのマル暴で、一番ごつく、一番気が荒いといわれた元刑事・流一(ながれはじめ)。二人は万(よろず)トラブル引き受け業の社長と用心棒だ。厄介事は、ひっきりなしに舞い込む。山狩りから人捜し、自分の命を狙う輩。札束を取るか、正義を取るか。熱い魂がぶつかり合う! 闇の組織が絡み合う港町を、タフな男たちが駆ける連作集。
  • アウトロー

    アウトロー

    小説・文芸

    4.0
    1巻628円 (税込)
    切なくて、心ゆさぶられるはぐれ者たち… 「おまえ、“泣き丸”だよな」少年時代の渾名(あだな)で呼ばれ、銀行支店長の丸太滋雄はぎょっとした。 不良債権の担保ビルに棲む「占有屋」が、幼馴染みの八木勝雄だったのだ。同じ母子寮で育った2人の15年ぶりの再会。そして彼の部屋で見たものは……。(「愛しのアウトロー」) 殺し屋、泥棒、ヤクザ……切なくて胸を打つはぐれ者(アウトロー)たちの出会いと別れ、そして夢。心揺さぶる傑作集!
  • 梟の拳

    梟の拳

    小説・文芸

    -
    1巻660円 (税込)
    元ボクシング世界王者の桐山拓郎は一年前に失明し、現役を退いた。今は無力感に蝕まれる日々。そこに不審死が相次ぐ。ひとりは原発推進団体幹部、もうひとりは苦楽を共にした友人だった。二つの死の背後には、原発利権を巡る政府やエネルギー団体のきな臭い蠢きが。そして桐山は戦慄の事実を知る―。人生の意味を奪還するための死闘。暗闇に光は差すのか。息もつかせぬ傑作冒険小説。
  • 風よ遙かに叫べ

    風よ遙かに叫べ

    小説・文芸

    -
    1巻660円 (税込)
    温子と喬。出会いは路上サーキット。温子のポルシェで、パトカーの包囲を逃れた。喬の仕事は窓拭き。温子、建築会社の重役の娘。そしてパキスタン人ハッサンと、タイ人娼婦パティ。パティは客のヤクザを刺殺。温子は父の会社の裏金強奪を企んでいた。交錯しない筈の人生が交差した時、事件は複雑に絡み、よじれる。発端は美術商殺害事件か?事件を追う老刑事と『死神』という殺し屋…。
  • 夜の海に瞑れ

    夜の海に瞑れ

    小説・文芸

    3.7
    1巻704円 (税込)
    癌に冒された老ヤクザを故郷の淡路島まで運べ。舞いこんだ依頼はたやすいはずだった。だが、謎の追手の襲撃によって、老人と親友が拉致される。しかも、その老人は、五十年以上前にシベリアの捕虜収容所で、凍土に葬られたはずの男だった。組織を裏切った老ヤクザの本当の狙いは何か。殺し屋、ロシアンマフィア、そして日本の闇権力の陰謀と裏切りが交錯しあう中で、探偵碇田が執念の追跡の果てに見たものは……? 過去の傷痕に引きずられ、闇に蠢く男たちの吐息。信義なき世界でぎりぎりの誇りを全うする孤独な闘いを、壮大なスケールで描き切る、冒険小説!
  • 無限遠

    無限遠

    小説・文芸

    3.3
    1巻715円 (税込)
    歪な学園都市の闇を探偵・辰巳が抉り出す! 「この街は、根っこに様々な問題を抱えています。新住民と旧住民ということだけではありません。この学園都市の住民たちは、役職や地位によっていくつもの層に分かれていて、その悪い影響が子どもの中にも出ているんです」 3人の少女達の堕落死に揺れる街で、失踪した青年の捜索を依頼された元カメラマンの探偵・辰巳翔一。青年の無実を信じ、捜査を続ける辰巳の行く手に、新興都市の闇と過去の迷宮がたちはだかる! ゆがんだ教育環境の下で震える少女たちの孤独と、疵を負った青年の「魂」の救済を描く感動のミステリー。
  • さらば狩人

    さらば狩人

    小説・文芸

    -
    1巻792円 (税込)
    今度の依頼はどこかキナ臭い。標的を横取りされた殺し屋の安本兄弟は、暴力団に加えて産業スパイ、公安、CIAまでが入り乱れての熾烈な争いの渦中で、失踪した妹をひたすら探す山人(マタギ)の娘と出逢う。やがて不気味な気配とともに浮上する、コンピューター業界の均衡を劇的に崩壊させかねない新型チップの謎!ある大物右翼が綿密に画策した、日米半導体戦争に新たな地平を拓く巨大な陰謀とは何か―。第52回日本推理作家協会賞受賞の気鋭が贈る、人間ドラマに満ちたノンストップ・ハードボイルドサスペンスの傑作。
  • 蒼ざめた眠り

    蒼ざめた眠り

    小説・文芸

    3.6
    1巻803円 (税込)
    各紙絶賛の隠れた名作、ついに電子化! 日経、毎日、中日新聞、週刊現代、週刊文春、週刊新潮ほか、二十媒体以上で取りあげられたハードボイルドミステリ巨編が、ついに電子化。  死にかけた海辺の町にもちあがった空港建設計画。町は真っ二つに割れていた。そんな中、辰巳翔一は廃ホテルを撮影中、反対派の女性ジャーナリストの絞殺死体を発見した。殺害女性の元夫で地元新聞の記者をしている安昼のたっての願いで、辰巳は元探偵である経歴を買われ、事件の解決を手助けして欲しいと頼まれる。簡単な事件に見えたが、しかし事態は二転三転し、辰巳自身想像すらしなかった事件の闇に絡め取られていく。  疲弊する共同体、己が欲得に溺れる人間たち、希望の見えない日本という状況を活写しつつ、ハードボイルドの物語を描ききった著者渾身のミステリ巨編!
  • ガリレオの小部屋

    ガリレオの小部屋

    小説・文芸

    3.5
    1巻825円 (税込)
    不眠症のサラリーマンを悩ませるマンションの住人。異常なのは彼らか自分か?(「冬の雨にまぎれて」) アメリカ旅行の途上、「私」が出会った日本人夫婦には秘密があった。(表題作) 悪徳警官の汚名を着せられた元刑事が息子とのキャンプ中、追い続けていた犯人を見つけ……。(「海鳴りの秋」) 人生の歯車がずれていく人間たちの閉塞感を、短編の名手が七つの物語で紡ぐ傑作集。
  • 第四の闇

    第四の闇

    小説・文芸

    3.4
    1巻825円 (税込)
    インターネット心中で妻を失った新田は、事件を追っていたライターの切断死体を発見する。さらに、集団自殺の関係者なども同様の殺され方をしていたことが判明し、猟奇惨殺事件は、マスコミへの犯行声明をもって、公開殺人へと変貌を遂げた。ネット心中と、バラバラ殺人を結ぶ接点とは何か? 疾走感あふれる圧倒的筆力で読ませる、著者入魂の犯罪小説の傑作!
  • 新宿花園裏交番 坂下巡査

    新宿花園裏交番

    小説・文芸

    3.0
    1~4巻836~1,078円 (税込)
    “やつはヤクザで、おまえは警官なんだ” 会うはずのなかった世界が交わる街。ヤバくて熱い夜―― 元高校球児の新米巡査坂下浩介、27歳。歌舞伎町ゴールデン街に接し、「裏ジャンボ交番」とも呼ばれる花園裏交番に配属――。 ある夜、ホステスが貯め込んだ大金の盗難事件を追って、殺人に遭遇した。容疑者が死体で発見されたのだ。 さらに、高校時代に消息を絶った元野球部監督の西沖に、現場で再会。暴力団仁英会の顔となっていた恩師の言葉で、捜査は急展開した!
  • 血の冠

    血の冠

    小説・文芸

    3.5
    1巻880円 (税込)
    元警官・越沼が頭蓋骨を冠のように飾られて殺された。 それは26年前の「キング」と呼ばれた殺人犯による、迷宮入り事件の手口と同じだった――。 弘前中央署会計課の小松一郎は、幼馴染みの警視庁警視正・風間によって、捜査の最前線に立たされる。 少年時代の二人はキングの被害者だったのだ……。 北の街を舞台に、心の疵と正義の裏に澱む汚濁を描く、警察小説の傑作!
  • 名もなき少女に墓碑銘を

    名もなき少女に墓碑銘を

    小説・文芸

    3.5
    1巻880円 (税込)
    無聊(ぶりょう)を託(かこ)つ探偵・鬼束は、刑事だった時に逮捕した男が、水死したことを知る。携帯への着信から、亡くなる前にその男が、行方不明となっている娘の捜索を頼もうとしていたことを知った鬼束は、男の遺品にあった彼女の写真を手に入れ、娘の行方を追い始めるが……。見えてきたのは、娘を取り巻く家族の歪んだ愛情、捜索過程で得た家族写真……。手がかりを掴むたびに増す違和感の果てに、鬼束が目にした衝撃の真実とは? 傑作長編ミステリー。『絵里奈の消滅』を改題。
  • 無縁旅人

    無縁旅人

    小説・文芸

    4.0
    1巻896円 (税込)
    『贄の夜会』の警視庁捜査一課大河内班が再登場! 腐乱死体となって発見された16歳の少女・舞子は妊娠していた。援助交際、ネットカフェ難民――地方の養護施設から逃げ出し都会をさまよう舞子は、腹違いの弟を死に追いやり保険金を奪った叔父の行方を追っていたという。無縁社会を生きる若者たちの孤独を噛みしめ奔走する警視庁捜査一課大河内班の刑事たち。解説・中辻理夫
  • ただ去るが如く

    ただ去るが如く

    小説・文芸

    4.5
    1巻902円 (税込)
    5年前、組の幹部を殺害して大阪を後にした橋爪優作は、北陸の海辺の町で所帯を持ち、一見かたぎのような生活を送っていた。だが、その裏では元タンカー乗りの老人と手を組み、「表沙汰にできない金」を強奪するという裏仕事に手を染めていた。冬のある日、京都のお茶屋で闇献金を奪取した優作は、旧知の女実業家に現場を押さえられ、ありがたくない仕事を押しつけられる。ある業者から広域暴力団、共和会に渡る3億円の横取りだ。やむなく女の言い分を受け入れた優作は、因縁の男たちと対峙することになるが……。傑作ロマン・ノワール。
  • あの夏、風の街に消えた

    あの夏、風の街に消えた

    小説・文芸

    3.8
    1巻902円 (税込)
    行方をくらました父に呼び出された大学生の僕。その夏を過ごすことになった新宿で遭遇した事件とは。祖父の変死、中国の天安門事件、地上げとマフィア、そして自分の出生の秘密が交錯し、青春の痛みを描き出す長編。
  • 孤独なき地 K・S・P 〈新装版〉

    孤独なき地 K・S・P 〈新装版〉

    小説・文芸

    3.3
    1巻913円 (税込)
    新署長赴任の朝。署の正面玄関前で、容疑者を連行中の刑事が雑居ビルから狙撃された。目の前で事件に遭遇したK・S・P(警視庁歌舞伎町特別分署)の沖幹次郎刑事は射殺犯を追う。銃撃戦の末、犯人のひとりを仕留めるが、残るひとりは逃亡した。金を生む街、新宿歌舞伎町で暴力組織が抗争を開始したのだ。息も吐かせぬ展開と哀切のラストシーン。最高の長篇警察小説。
  • 冬の砦

    冬の砦

    小説・文芸

    4.0
    1巻942円 (税込)
    人は、“愛する者”を守り通せるか!? 怪文書、脅迫、権力闘争に揺れる学園…。 元警官のひたむきな探索行。 凍てついた早朝の高校校庭で、警備員の桜木が女子生徒の全裸死体を発見した。 元警官という経験を買われた桜木が真相を追うや、教師の学内不倫や用地売却を巡る理事会の軋轢などが浮上。死んだ女生徒がかつて経験した悲惨な事件による精神(こころ)の傷は、今回の凶事に関わるのか? 元警官と現職刑事の攻防と友情、さらに繊細な筆致で心の深淵を抉る異色の警察小説!
  • 約束 K・S・Pアナザー

    約束 K・S・Pアナザー

    小説・文芸

    3.0
    1巻968円 (税込)
    すべてを失った男、どん底で夢を見る少年、崖っぷちの悪徳刑事―― 3つの発火点が歌舞伎町の腐臭に引火した! 親友の父を殺した秀夫は、服役中に連絡を絶った最愛の人を捜していた。 だが、伝手となる男の殺害現場に遭遇。そこで、震災復興事業の横領を示す文書と大金の入った鞄を託されるが、少年康昊に持ち去られる。 鞄回収のため悪徳刑事天明谷を遣う殺人者一味や、在日韓国人の不良金貸し一派が執拗に迫る中、秀夫を救った少年は山分けを主張。暗黒街を駆ける大争奪戦の行方は?
  • 幻の女

    幻の女(角川文庫)

    小説・文芸

    3.8
    1巻968円 (税込)
    弁護士の栖本は五年ぶりにかつての恋人、瞭子に会い、未だに彼女を忘れられない自分を知る。ところがその翌朝、瞭子が刺殺されたという連絡を受け、彼女の本当の過去を追い始める。日本推理作家協会賞受賞作。
  • 砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌

    砂時計 警視庁強行犯係捜査日誌

    小説・文芸

    -
    1巻979円 (税込)
    切なさと救い溢れる3つのラスト。 読者を半泣きさせる警察小説。 心揺さぶる哀切のミステリーロマン誕生! マンションの一室で三十八歳の女性が死亡。 大量の睡眠薬をアルコールとともに服用したことで昏睡状態となり死に至ったようだ。 テーブルには「疲れました。ごめんなさい」と印字された遺書らしきプリントも。 自死と思われたが、所轄は警視庁捜査一課の大河内茂雄部長刑事に現場への臨場を依頼した。 不自然なことが多かったのだ。 部屋のパソコンからはここ数カ月のメールが消去されていたし、死の前日にスーパーの宅配サービスに注文を入れていることもわかった。 マンション住人からの聞き込みから、複数の男の出入りが確認され、事件当夜には男女の言い争う声も聞かれていた。 大河内刑事は、被害者が中学生のときに父親が殺人を犯していたことをつきとめる。 また被害者は二年前にも大量の睡眠薬を服用し病院に搬送されたこともわかった。 捜査を進めるうちに、被害者のまわりでうごめく黒い影の存在に気づく…… 事件の謎に挑む警視庁捜査一課強行犯係のベテラン刑事の活躍を描く3篇。 切なさと救い溢れる3つのラスト。 読者を半泣きさせる警察小説。 心揺さぶる哀切のミステリーロマン誕生!  砂時計 日和見係長の休日 夢去りし街角
  • 記念日 anniversary

    記念日 anniversary

    小説・文芸

    3.3
    1巻990円 (税込)
    記憶を無くし満身創痍の状態で、横浜中華街の安ホテルの一室で目覚めた“俺”。そばにはアンと名のる女がいて車から投げ出されたところを助けてくれたという。いったい自分は何者なのか。なぜそんな目に遭ったのか。記憶を取り戻すため行動を起こすが、得体のしれぬ複数の組織に追いかけられる。幾重にも仕掛けられた罠。果たして真実は手に入れられるのか!?
  • 川崎警察 下流域

    川崎警察

    小説・文芸

    -
    1巻990円 (税込)
    不審死の背後に広がる予想外に深い闇沼 ぬかるみに足を踏み入れた刑事たちの苦闘 魂を震わせる長篇警察小説! 1970年代の川崎。 京浜工業地帯として発展する裏で、ヘドロで漁ができなくなった漁師たちが、漁業権や船舶の買い上げと、補償金をエサに立ち退きを迫られ、漁民の間に分断と対立が生じていた。 また新興工業地帯には朝鮮や沖縄からの流入者も多く住み、住民感情は複雑化していた。 そんな土地で、多摩川河口に溺死体があがった。 遺体は元漁師の矢代太一と判明。 彼は漁業権問題で漁民をまとめる折衝役だった。 だが遺体には複数の打撲痕が認められ、漁師の溺死という不自然さと併せて事件性をうかがわせた。 そして遺品にはなぜかキーホルダーがふたつあり、自宅以外にもうひとつ家の鍵を所持しているようだった。 川崎警察署刑事課のデカ長、車谷一人は、ベテラン捜査員たちや新米刑事の沖修平らを叱咤しながら捜査に乗り出す。 矢代は漁師をやめて得た補償金で、夫婦で食堂を始めたが、妻の死によって店をたたみ、いまは次男と暮らしていた。 居酒屋やクラブで酒を飲むだけが楽しみだったという。 漁業権放棄問題では対立する漁師グループから恨みも買っていたことがわかった。 被害者の足取りを追ううちに、矢代は居酒屋で飲んでいるところに若い女性から電話がかかり、慌てたようにして店を出て行ったことがわかった。 事件が報道されると、矢代に離れの部屋を貸していたという夫婦から川崎署に電話が入った。 しかも義理の娘とふたりで借りていたという。 矢代には息子が二人いたが、ともに独身で、義理の娘などはいなかった。 手がかりを得た車谷たちは、不審死事件の背後に横たわる予想外に深い泥沼に足を踏み入れることになるが……
  • 刑事群像

    刑事群像

    小説・文芸

    3.0
    1巻990円 (税込)
    女性の全裸死体が呼び覚ます、二年前の未解決事件のにがい記憶。 苦闘のすえに刑事たちが辿りついた真実とは…傑作長篇警察小説! 湾岸道路・環七大井ふ頭から京浜運河へと向かう路上で女性の全裸死体が発見された。 被害者は経営コンサルタントの坂上実咲。 殺人事件として捜査一課小林班が動き始める。 被害者の奔放な異性関係が明らかになり、携帯電話の通話履歴からは元刑事の名前も見つかった。捜査一課中本班の沢崎昌午。 中本班への聞き込みで、二年前に起きた殺人事件がふたりを結び付けていたことがわかった。 黒幕にたどりつけず中本班に苦い記憶を残した「プライベートバンカー殺害事件」。 沢崎はその捜査で重傷を負い辞職していた。 そしてその事件で資金洗浄に関わった容疑者として浮上したのが坂上実咲だったのだ。 捜査一課は、小林班と中本班の合同体制をとる。 愛人の会社社長、暴力団、ホスト、婚約者、覚醒剤の売人…… 事件の周辺にうごめく男たちの欲望が黒い影を落とすなか、苦闘のすえに刑事たちが辿りついた意外な真実とは… 警察小説の名手が満を持して放つ傑作長篇!
  • 毒のある街 K・S・P 〈新装版〉

    毒のある街 K・S・P 〈新装版〉

    小説・文芸

    3.0
    1巻1,045円 (税込)
    K・S・P特捜部の沖幹次郎は突然の人事でチーフをはずされた。新チーフはキャリア警部の村井貴里子。怒りを抑えきれない沖だが、その矢先、射殺事件が起きた。標的は神竜会のヤクザ二人。新宿進出を目論む関西系暴力団・共和会傘下の鳴海興業による犯行だった。さらには首領を失い凶暴化するチャイニーズマフィア・五虎界も、新宿再開発を巡って暗躍を始める。「孤独なき地」に続くK・S・Pシリーズ第二弾。
  • 夜空のむこう

    夜空のむこう

    小説・文芸

    3.6
    1巻1,100円 (税込)
    元編集者、ヴェテランライター、作家志望者、マンガ家、飲み屋のママ――。新宿二丁目に事務所を構える編集プロダクション。そこに集う面々のさまざまな人生を、柔らかな眼差しで描いた14の物語は、ひとつひとつがきらきらと輝きながら、あなたの胸に、懐かしさを届けるだろう。彷徨う季節を通り過ぎたとき、人は、どこに向かうのか。郷愁と共感の青春群像小説。
  • 嚙む犬 K・S・P〈新装版〉

    嚙む犬 K・S・P〈新装版〉

    小説・文芸

    -
    1巻1,100円 (税込)
    新宿オフィス街で見つかった女刑事の白骨死体。 その死の背後には、警察内部の不祥事隠蔽や、権力をめぐる暗闘、政官を巻き込む巨大な闇が。彼女の無念は晴れるのか。 新宿高層ビル街の一角に沖幹次郎、村井貴里子らK・S・P特捜部が駆けつける。 植え込みから白骨体が見つかったのだ。 身元は警視庁捜査二課の溝端悠衣警部補。 死亡前の動向を探ると、未解決の轢き逃げ事件を単独捜査していた形跡が浮上。 被害者は暴力団組員で、溝端は保険金の受取人である婚約者とも接触していた。 彼女が秘密裏に突き止めようとしていたものとは。 事態はやがておぞましき全貌を――。 警視庁歌舞伎町特別分署KSPシリーズ第3弾!
  • 女警察署長 K・S・P〈新装版〉

    女警察署長 K・S・P〈新装版〉

    小説・文芸

    -
    1巻1,210円 (税込)
    累計20万部を超える人気シリーズ! 新任署長を待ち受ける試練! 盗まれた妻のヴァイオリンを探してほしい―—。 署長の村井貴里子は都知事の仲立ちで引き合わされたアメリカ人石油王から突飛な依頼を受けた。 特捜部チーフ・沖幹次郎と捜索を開始するが、あの男が立ちはだかる。 チャイニーズマフィア・五虎界の朱栄志。 三年前、壮絶な銃撃戦のすえに取り逃がした怨敵だ。 再び死闘がはじまる。 なぜ、栄志もヴァイオリンの入手に執念を燃やすのか。 貴里子と沖を待っていたのは驚愕の真相だった。 累計20万部を超える人気シリーズ第四弾。 新任署長を待ち受ける試練!
  • 完全犯罪の死角~刑事花房京子~

    完全犯罪の死角~刑事花房京子~

    小説・文芸

    3.3
    1巻1,320円 (税込)
    沢渡留理は亡き父親から引き継いだ会社“沢渡家具”を守るため、綿密に計画を練って兄とその愛人を、痴情のもつれを装って殺した。偽装工作は完璧だったはずなのに、翌朝、家政婦から、家に強盗が入って兄が殺されたようだ、という連絡を受ける。いったい何が……? 現場に戻った留理は、子供のように捜査に没頭している長身の女刑事と出会った。その女は、花房京子と名乗った――。
  • 刑事群像

    刑事群像

    小説・文芸

    3.9
    1巻1,672円 (税込)
    路上で発見された女性の全裸遺体。捜査一課七係強行班が動き始める。被害者は経営コンサルタントの坂上実咲。その名前は刑事たちに、二年前の痛恨の記憶を呼び起こす。被害者の身辺を洗う中、二年前の事件で辞職した元刑事・沢崎の名前が挙がった。やがて捜査一課は、中本班・強行班の二班合同体制をとる。被害者の周囲に蠢く人間と欲望、刑事たちの思惑と記憶。警察小説の名手が満を持して放つ、捜査一課シリーズ最高傑作!
  • 絶対聖域 刑事花房京子

    絶対聖域 刑事花房京子

    小説・文芸

    3.7
    1巻1,870円 (税込)
    刑務所に一般市民を招くオープンデイ。盛況に沸く中、元受刑者の首吊り死体が発見され、会場は瞬く間に騒然となった。路頭に迷っての自殺を有力視する刑務官たち。しかし、現場に居合わせた警視庁の花房らは疑問を抱く。死んだのは弱者を食い物にしてきた男。自ら命を断つとは考えにくい。捜査陣の介入に刑務官たちは頑なな拒絶を貫こうとする。彼らは何を守ろうとしているのか――? 名手の技が光る傑作倒叙ミステリーシリーズ!
  • 逆転のアリバイ 刑事花房京子

    逆転のアリバイ 刑事花房京子

    小説・文芸

    3.7
    1巻1,870円 (税込)
    宝石商の壬生真理子が夫の陽介と共に描いた綿密な殺人計画が今宵実行に移される。ターゲットは自分たちに偽造ダイヤを売りつけたイタリア人のフェルナンド。アリバイ工作も整い、残るは殺害のみという状況下、予想外の人物が凶弾に倒れる……。だが、それすらも「計画」を逆手に取った加害者の計算通りだった……。予断を持って捜査を進める集団の中で、ただひとり花房は別の可能性を検討しはじめていた。
  • 絵里奈の消滅

    絵里奈の消滅

    小説・文芸

    3.6
    1巻1,899円 (税込)
    最後のページに「彼女」はいない――。謎の女の正体にあなたは気づけるか? 元刑事で探偵の鬼束啓一郎。彼がかつて逮捕した男・牛沼が水死体で発見された。その前日、鬼束の携帯電話には、牛沼からの不在着信履歴が残っていた。その電話の用件とは、行方不明になっている娘・「絵里奈」を探してほしいという捜索依頼だったらしい。鬼束は依頼人不在のまま、牛沼の遺品の写真を元に、絵里奈の行方を追うことになるが……。失踪した謎の女を取り巻く闇に迫った鬼束が、最後に目にした衝撃の結末とは? 著者渾身の傑作ハードボイルド!
  • 鉄のほころび~刑事花房京子~

    鉄のほころび~刑事花房京子~

    小説・文芸

    4.3
    1巻2,090円 (税込)
    一片の死角なし。最大の敵、現る。無人のはずの工場で爆発が起き男が死んだ。現場に残されたパソコンから、国際テロ組織の指示による爆弾製作中の事故の可能性が浮上。警視庁がその線で捜査を進める中、花房京子が男の遺留品を辿り接触したのは、元公安の犯罪評論家としてメディアを賑わす角松麻由子だった。だが、週刊誌が角松と男の繋がりをスクープし、事態は予想外の方向へ。手練と技巧が冴え渡る倒叙ミステリーシリーズ!
  • 灰は灰~新宿探偵 鬼束啓一郎~

    灰は灰~新宿探偵 鬼束啓一郎~

    小説・文芸

    3.7
    1巻2,200円 (税込)
    定年退職を待たずに警察を辞め、新宿界隈で探偵稼業に勤しむ鬼束。ゴールデン街に繰り出すのが日課だが、自由な時間はそうはない。街を歩けば舞い込む厄介な依頼――あるヤクザの馴染みの女性の不審な死。バーで出会った男の失踪とその行方。刑事時代に対峙した苦い事件の残り火。鬼束は時に警察の手も借りながら真相に迫る。そんな彼を苛む胸中の“傷”とは? ノスタルジー薫る極上のミステリ中篇集!
  • 川崎警察 真夏闇

    川崎警察 真夏闇

    小説・文芸

    4.0
    1巻2,200円 (税込)
    第26回大藪春彦賞候補にノミネートされた「川崎警察 下流域」の第2弾。 神奈川県警川崎署のデカ長・車谷一人(くるまだにひとり)の活躍を描く、長篇警察ミステリー。 京浜運河沿いで死体があがった。身元は暴力団員、伊波肇の母親照子。 陰部をナイフで抉られ、腹部から腸がはみ出る陰惨な殺しだ。対抗する組の犯行か? だが、家族には手を出さないのがヤクザの掟だ。それが破られたとなると、報復の連鎖で大変なことになる……。 発見現場に臨場した川崎警察署捜査係デカ長の車谷一人は、軽のバンの荷台から不審な荷物を下ろして走り去ったふたり組の男がいたことを聞きつける。男の一人は足を大きく引きずっていたという。 被害者は故郷の沖縄に里帰りし、事件当日午後二時着の飛行機で羽田空港に帰ってきた。だがその後の足跡が不明だった。 翌年五月に沖縄は本土返還を控えており、帰郷はそれからの方が便利ではという大家に「返還されてからでは、遅い」と伝えたという。 捜査を進めるうちに、空港から照子を軽バンに乗せたのが、死体発見現場で目撃されたふたり組で、どうやら照子の知り合いらしきことがわかった。 有力容疑者として浮かびあがった男を、全力で探す車谷。 だが、予想外のところで別の殺人事件が起きた。被害者は沖縄の開発や本土との交流に尽力しているという大阪の会社社長。 本土復帰を目前にした沖縄を食い物にしようする者たちの暗躍が明らかになるにつれ、ふたつの事件が絡み合っていく…… 好評『川崎警察 下流域』が第26回大藪春彦賞候補となった著者による、書下ろし長篇警察サスペンス第2弾!
  • 川崎警察 遠雷雨
    NEW

    川崎警察

    小説・文芸

    -
    1巻2,750円 (税込)
    「高度成長期の歪みがヘドロのように 堆積する街・川崎。大事件の背後に横たわる 戦争の影を追う、熱き昭和の刑事たち。 刮目して読め!」 西上心太さん(書評家) 「林立する風俗店、汗と油まみれの労働者。 ヤクザと警官、そして。 泥臭く血なま臭く痛切な人間臭さに痺れる!」 藤田香織さん(書評家) 《暗殺者》は残留日本兵なのか!? 高度経済成長期の日本に紛れ込んだ ひとつの異物が、裏社会のみならず、 警察、経済界、政治家をも震撼させた―― 書評家激賞! 感涙必至!! \川崎の目利き書店員も大絶賛!/ 「昭和の川崎を舞台に戦争の傷跡をめぐって 泥臭い捜査で真犯人を追い詰める刑事たち。 次々に起こる銃殺事件に果敢に挑む 彼らの姿に引き込まれた。」 (有隣堂アトレ川崎店 大嶋慶子さん) 「人と人との絆が今よりもずっと濃厚な時代の 川崎で組長殺害から始まった連続殺人。 謎が謎を呼び、事件収束にいたるまでの 追いつ追われつの手に汗を握る追跡劇。 淡々と、それでいて一人一人の刑事たちの 矜持をもった熱い捜査にしびれます。」 (丸善ラゾーナ川崎店 村尾啓子さん) グランドキャバレーのプレ・オープンに 不意の闖入者が。 男は瞬く間にボディガード三人を屠り、 暴力団幹部と会長を殺害して逃走した。 プロの犯行だった。 神奈川県警川崎警察刑事一係のデカ長、 車谷一人は捜査への協力要請を受ける。 被害者が同じ期間に フィリピンへの複数渡航歴があることが 判明する一方、事件は新たな犠牲者を生み、 拡大の一途をたどる。 敗戦から高度経済成長への昭和史の 大きなうねりのなかで取り残された者たちの 怒りと悲しみが、いま噴き出した! 警察小説の名手が、 シリーズ最大のスケールで描き切る 力作長篇ミステリー!

ユーザーレビュー

  • 灰は灰~新宿探偵 鬼束啓一郎~

    Posted by ブクログ

    ある事件をきっかけに警察を辞めた探偵のお話。昔ながらの探偵の匂いがする懐かしい設定とストーリー。さすがの作者さん。読ませてくれる。

    0
    2026年04月25日
  • 鉄のほころび~刑事花房京子~

    Posted by ブクログ

     シリーズが重なるにつれ、新作がどのように書き継がれてゆくかという点に興味があるし、マンネリ化を避ける策は、その後どう取られてゆくのかという辺りにも好奇心の虫が騒いだりする。

     さて『刑事 花房京子』のシリーズも4作目。そもそも女性主人公のシリーズというのが、まず香納諒一作品として珍しい。本シリーズは倒叙形式だから、男性作家であってもこのヒロインを創出しやすかったのかなとも思える。主人公である花房京子の心理に踏み込むことなく、そもそもヒロインにあまり語らせず、ただただ犯罪の真実を追求することに才能を発揮させてゆく手法である。だからこそ犯罪者側から見ても、また読者から見ても、この女性刑事・花房京子という存在は、謎めいていながら、その手腕がもちろん、事件の核を掴み取る存在感というところで際立った存在なのだろう。

     ぼくが、あれ? と不思議に思ったのは本シリーズでは何も初めてのことではない。シリーズ前作『絶対聖域』では、刑務所を訪問してそこで発生した事件を解決するという奇抜なアイディアに驚いたが(『絶対聖域』)、今回もまたシリーズのステージや表現手法に変化が加わっているように思えてならなかった。というのは、なかなかヒロインが舞台の表に登場せず(そう、じれったいくらいに)、被害者が米国での長期留置を終えて釈放されたばかりの男性、という設定、そして帰国した途端に被害者が殺害されるという謎そのままに、捜査陣が四苦八苦するという前半の語り口に、ぼくは本シリーズとしての意外性を感じた。本作に限っては、倒叙型ではないのか? とも感じるくらい、真の殺人犯が表になかなか出てこないことが不思議だった。

     倒叙型ミステリーと言えば、事件が発生した途端に、読者はそのときの加害者側の事情を最初に知らされるという パターンがほとんどだろう。それがどのように名刑事によって明かされ追いつめられてゆくのか、というところが読者や視聴者を楽しませる手法であろう。しかし本書はだいぶそのオーソドックスさに頼らない語り口となっているのだ。否、むしろ主人公のヒロインも、敵手であるアンチヒロインも、そのどちらもが前半部分にはあまり登場しない。ただただ被害者の死が軸となり、ヒロイン以外の関係捜査官たちによって捜査されてゆくのである。その中には無論われらが花房京子も存在するのだが、なかなか前面に登場してくれないやきもき感が、シリーズ中本作だけの異質さを感じさせる展開なのだった。

     もう一つは、被害者と加害者の過去における人間関係が物語の中で際立ってゆくことだ。現在の殺人の動機について調べる側の描写が連なりながらも、なかなか犯罪者の心理面でのドラマというものは、終盤にかかるまでは登場しない。加害者側がなかなか登場しないということでは、倒叙ミステリとはやはり大きく異なる構成ではないかと思えてくる。コロンボ慣れた読者であれば、犯罪がどう起こったのかがまず読者(もしくは視聴者)が知ってしまうところから始まることに慣れているはず。完全犯罪を狙う犯罪者の側の創意工夫によって事件が起こされ隠蔽されるが、それらの隠蔽が名刑事コロンボによって裏返されてゆくというパターンではないだろうか。

     本書はその定型パターンから極めて外れているために、倒叙型というスタイルにこだわらない本シリーズの新しい形を見たような気がする。実のところ、前作も刑務所見学中に事件が発生しそれを解決するという異質な場所という舞台設定に驚いたのだが、それはまだ犯罪者側の描写が最初にあるために構図通りではあったと思う。

     しかし本作は最後までストーリーが見えにくい。つまりオーソドックスな倒叙ミステリーという形に拘泥していないのだ。ヒロインの性格・魅力をそのままに、新作の都度、何かをスパイスのようなものを加えている。本書ではそんな感覚を抱いた。コロンボのような定型ではなく、変化に富んだ不思議なシリーズになりつつある。ヒロインの際立った才能だけに甘んじず、作品のカラーを毎作変えてゆく作者の意図が見えてくる。加害者や隠蔽トリックを変えるだけではない。そんなところが肝であるような、シリーズとしては、いい意味で読者を裏切ってみせるイルージョン連作へと進化しているように思った次第である。

    0
    2024年10月17日
  • 新宿花園裏交番 旅立ち

    Posted by ブクログ

     本書のタイトル、気になりませんか? ぼくは気になる。坂下巡査が旅立ってシリーズは終わるのであろうか? さてどこに旅立つのだろうか? そのことばかりが脳裏を掠める中の読書時間であった。これまでの本シリーズで登場してきた多くの個性的キャラたちが、新宿という坩堝でまたしても対立し、闘い、血を流し、涙を流す物語である。いつもながらの都会の闇。そのままに。

     ここでも多くの異なる組織に属する人間たちが、激突を繰り返す。暴力と逃走。交番内でのパワーバランスも微妙にぶれてきている。というより交番内の警官たちが結束しているようでいてそもそも不安定であるように見える。否、交番に限らず、主人公坂下巡査の人生に関わり、今も蠢く奇妙に歪んだキャラクターたちが、このシリーズを通して、世界の矛盾を声高に叫び訴えているかに見えるのが、このシリーズ、否、香能諒一の警察小説に共通するものなのかもしれない。安泰であるように見える世界のバランスは不安定な人間の心の揺らぎによってかろうじて支えられているものであり、それらはかすかな横風が吹くたびに危うく崩れそうになるたまゆらの積み木細工、であるのかもしれない。

     人間は変われない部分と変わる部分があることをも本書は教えてくれる気がする。多くの組織の思惑を秘めた反社組織と警察組織が新宿という大都市で相克し合うアクション小説、と言い切ることもできるかもしれないが、そこで人生を選んでゆくそれぞれのキャラクターたちの生き様や死に様は、読者であるぼくらの心のに少なからず微風を(時には突風を)送ってくるかもしれないし、そのわずかな揺らぎでぼくらの知る世界は違うものに見えてくるかもしれない。

     そんな都会の光と影を写し取って描く名人芸のようなものを、現在、脂の乗った香納諒一という作家はペンのうちに隠し持っているように思える。大長編ではないものの、いつもながらノンストップの一作である。

     それにしてもタイトルが、とても気になりませんか? このシリーズ作の主人公である坂下巡査はどこへ去ってしまうのだろう? そんな不安定感を頭の隅にずっと住み付けながら読むことで、この作品はさらにスリリングな気持ちで読むことになりました。そして、スピード感を持って読むことに。さてラストは何を意味するのでしょうか。シリーズの終わり? シリーズの変貌? それはあなたの眼で確かめて頂きたいと思います。

    0
    2024年10月01日
  • 新宿花園裏交番 街の灯り

    Posted by ブクログ

      長く読書をしているにも関わらず日本の出版事情にさほど詳しくない。海外小説読みのぼくには、国内小説の出版の仕方に関して、いろいろな不思議があるのだが、その一つは、同じ作者でも、作品により、文庫・ソフトカバー・ハードカバーという本の種類の差があることだ。もちろん出版社の判断の差もあるのだろうが、作品やシリーズにそれぞれの重みを作者が付加しているとは思えないので、誰がそれを判断するのかである。香納諒一という作家だけを見ても、本シリーズは最初の二作はハードカバーだったのだが、三作目からは文庫に変わった。日本版コロンボという風味のある花房京子シリーズは、最初から通してソフトカバーである。物語に昭和の重厚感のある川崎警察シリーズは、やはりハードカバーの重みが似合う。小説に重さや軽さがあるわけではないのだろうが、出版する会社の判断がどのようにこれらを決めてゆくのかぼくにはよくわからない。

     そうした坂下巡査シリーズがいきなり文庫化された作品がこれだ。しかもあまり時間を置かず二作目が出るとの話も聞いている。やはり読んでみて物語が前作に比べて軽くなったというわけではなかった。他の警察小説シリーズに比べるとどうしても舞台が刑事部屋ではなく花園裏交番ということだから、いわゆる刑事とは動きの差が出るのだが、事件現場の最前線に最初から配置されている警察官たちに顔を与えた小説シリーズというあまり見ない側面で描かれるスリリングな物語は珍しい。

     新宿という舞台もあるだろうが、そこに蠢く国際的な組織対立と闇の深さは刑事部屋ももちろんのこと、街に出張って銃器・警棒を装備している警察官たちにとってはむしろ命のやりとりが日常的に行われる所謂『現場』なのである。そこに眼を付けてミステリーを書く作家が初めてとは言わない(パソコン通信時代の友人から本格ミステリ作家としてデビューした太田忠司の最初の作品『僕の殺人』が、まさに交番勤務の警官だった。ちなみに単発TVドラマにもなった!)が、ここまで命のやりとりをする交番勤務の警察官たちのシリーズ作品はまず皆無だったろう。

     ちなみに香納諒一という作家は、ぼくがパソコン通信時代「冒険小説&ハードボイルドフォーラム」を運営していた時に若手作家として加入してきて頂いた方である。彼のデビュー当時の作品はアウトロー側から描いた傑作が多く、フォーラムの中でも高く評価され、ファンは多かった。しかし円熟期を迎えてからの香納諒一は、滅びの美学から徐々に変化を遂げ、警察小説の書き手として強固な地盤を作ってきた作家である。ぼくはその当時の愛読者の中の一人というわけだ。

     本書では、真夜中の魔都・新宿に消えた少女の行方を追う交番勤務の警察官たちのストーリーなのだが、実に多くの有象無象の悪党たちが絡み合う複雑な構図はこのシリーズの最早シンボルのようなものだ。都会でダメになってゆく者たち、それぞれが金と欲とそこに愛とか執着という名の不確定要素が入り込むときに生まれる読みにくい人間絵図。新宿という人種と善悪の坩堝を背景に、一人の若い警官と彼を取り巻く上司たち、刑事たちが、底の深い人間の罪を掘り起こす物語である。いつもながら人間の書き分けが秀逸。でもできればシリーズ第二作までもが文庫化されているみたいだから連続的に読んできて頂きたい本書である。シリーズとして読んだ方がこの世界の深みはしっかり味わえるだろうから。

    0
    2024年10月02日
  • 川崎警察 真夏闇

    Posted by ブクログ

     1970年代、昭和の川崎を舞台にした『川崎警察』シリーズ第二弾が登場。何と言っても読みどころは、巷に溢れる凡百の警察小説シリーズと異なり、昭和という時代とその世相を背景に起こる事件を、その当時の方法で捜査してゆくという点に尽きる本シリーズなのだが、70年代を関東で過ごしたぼくにとっては、当時の空気感のようなものが懐かしい。70年代を主に十代で過ごしたぼくよりもさらに少しだけ若い作者の手によって、こうした時代を蘇らせる作品が書かれるとは珍しい。今あの時代を振り返るのはさぞかし大変な作業だったろうと想像される。しかし、この時代、とりわけ沖縄返還の前年という独特に揺れる国内の空気を見事に再現しているのが本作。いつもながら、仕事の丁寧さがとても有難い。

     そう、本作の軸は沖縄返還を翌年に迎えるというその独特な歴史的転換点を捉えている点である。1971年6月17日が返還の日なのだが、本書で扱われる事件とその捜査は前年の1970年。ぼくはこの本の時代は、未だ14歳、中学3年、卓球部で頑張っていた頃になるのかな。こうした時制の小説を読むことは、この小説で語られている時代の自分を振り返り思い出そうとする気持ちに繋がる。確実に、この作品を読む楽しみ方の一つである。

     さて本書の軸となる事件だが、つきなみに思われる女性の遺体発見。河川敷での二つの焼死体発見といった事件が世間を賑わせているこの四月に、よりによってこちらは異なる意味で同様に河川敷に放置された惨殺死体。現実の事件の方は次々と関連する容疑者が確保されているが、物語は事実より奇である。本書の遺体は死後に下腹部を切り裂かれた中年女性ということで、奇妙さに奇妙さが重なる。

     そしてスマホもパソコンも十分にないアナログの時代である。警察の捜査も、科学捜査やネット犯罪などとは無縁の、極めて人間対人間の具体的な暴力が現状を曝していることになる。今よりもずっと関連付けやすい人間関係と、利害関係。しかしだからこそ剥き出しの暴力が人を傷つけ、法外な利益を得るという直接的な動機が凄惨な殺人に直結しやすい。

     この作品で注目したいのは、返還後の沖縄で予想される土地価格の高騰という背景。沖縄を行き来するのに未だビザが必要であったこの時期だからこそ、土地を売りたい地元の人間とそれを買って利ザヤを得たい無法者たちが跋扈するのである。こうしたその時代だけに起こり得る社会現象に眼をつけた作者の視点が本作品の強烈な個性に繋がっているところにぼくは瞠目したい。

     そしてこのシリーズでは特に感じられる、あの時代ならではのアナクロな刑事たちの人間めいたやりとりは、今更ながら人間の体温が感じられるように身近で嬉しい。科学捜査やネット犯罪で埋もれている現代のTVニュースとは無縁の、熱い血の通った捜査官たちの個性やいささか行き過ぎとも言える恫喝や暴力、荒っぽさが何とも昔の刑事映画を思い起こさせる懐かしさでいっぱいである。

     どうかぼくと同じ時代、小説やテレビや映画で刑事ものを熱く見ていた世代に本書を読んで頂きたい。昭和のセピアカラーのスクリーンが本書の空気から蘇ってゆく様を体感して頂きたいものである。

    0
    2024年05月03日

新規会員限定 70%OFFクーポン 今すぐGET