Posted by ブクログ
2009年10月04日
香納諒一の作品を讀んだのは、これが初めてである。
第52囘日本推理協會賞受賞作品だと裏表紙に書いてあつたので、面白くない譯はあるまいと考へて購入した。
面白かつた。
主人公が愛した女は5年前に突然、主人公の前から姿を消した。
そして偶然、再會したその日の夜に何者かに殺されてしまふ。
女は何故殺され...続きを読むたのか?
その理由を探るうちに、殺された女は自分の知つてゐた名前ではないことが判明する。
自分の愛した女の正體は?正體を隱したことと殺されたこととの關係は?
主人公は次第におほきな陰謀の存在に氣づき始める。
主人公は辯護士なのだが、スーパーマンではない。
ハードボイルドなのだが、ことさら意志の勁い人間でもない。
等身大の生身の人間臭さが感じられて、質の高い作品に仕上がつてゐる。
難くせをつけるとすれば、主人公が、その女を愛するにいたつた背景や、その女への愛の強さをもう少し書込んで欲しかつたといふ點だらう。
生命を賭けてまで謎を解かうとする、主人公のモティヴェーションが傳はつてこない。
ちなみに主人公の酒の好みは私と一致してゐる。
作中で何度もアイラモルト、特にラガブーリンが出てきて、私は嬉しかつた。
2004年1月3日讀了