あらすじ
ある春の夜、浅草公園で小林紋三が目にしたものは、十歳くらいの子供の胴体の上に、大人の頭が乗っかった小男だった。その不気味な男の懐中から、風呂敷に包まれた青白い人間の手が転がり落ちた。同じ時、山野家の令嬢、三千子が行方知れずになっており、百貨店では女性の切断された手首が見つかっていた――。上海帰りの明智小五郎が活躍する「一寸法師」。本格推理の傑作「何者」を同時収録。
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Posted by ブクログ
「一寸法師」と「何者」の2作品が収録されている。「一寸法師」では明智小五郎が謎解きをするが、「何者」では謎解きでは出てこないが、作品内の小説としてのみ出てくる点が特徴的かもしれない。
さてはて内容であるが、特に「一寸法師」については結末が非常に時代を感じさせるものだった。
真犯人がその性別と「反省している」の二点において情状酌量の余地ありと明智は判ずるのである。いやそこは司法に任せるべきでは? と思うし、また、被害者の無念が晴れぬのではないか、と思ってしまい、釈然とできないものが残った。少なくとも現在の作家、特にライトノベルやTL系であれば確実に「ざまぁ」されるパターンの犯人である。とはいえあまりに酷い因果応報も如何なものかと個人的には思うが……。
「何者」に関しては、犯人の動機がなるほどと納得できるものであった。二兎を追った犯人は一兎も得ることができず、得られたと思った双方を逃す事になった……ということが最後に示唆されて終わる。
結果的に犯人がどうなったのか、冒頭で作者が述べていた「事件の主人公」が果たして真犯人を指していたのかはたまた濡れ衣を着させられた人物を指していたのか、それが分からぬので、やはり終わりは謎が残る形となり、それがいっそうこの作品の釈然としなさに拍車をかけている気がする。