あらすじ
北大路欣也氏、高橋英樹氏が推す時代小説!
秋月六平太は、かつて信州・十河藩の供番(籠を守るボディーガード)を務めていたが、ゆえあって浪人となる。いまは裕福な商家の子女の芝居見物や行楽の付添屋(これもボディガード)で身を立てている。血のつながらない妹の佐和は、六平太の再士官を夢見て、浅草元鳥越の自宅を守りながら、裁縫で家計を支えている。その佐和を嫁にやって、悠々自適の日々を過ごすつもりが、なかなかそうもいかない。次から次へ厄介事が舞い込むのだった。表題作「あやかし娘」、「武家勤め」、「むかしの音」「霜の朝」の四話を収録。
しみじみ笑えてじんわり泣ける、痛快エンターテインメント!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2巻目。
『あやかし娘』『武家勤め』『むかしの音』『雪の朝』の4編。
1巻目より、さらに面白くなった。登場人物に慣れてきたからかな。
最初の短編『あやかし娘』は大して面白くなかったけど、その他の3編は秀逸。
『武家勤め』は六平太がある小藩の世継ぎの少年(でも妾の子)を助けたことが縁となって、その少年の武術指導のお勤めを始める話。
六平太には同じぐらいの息子がいたが、荒んだ生活をしていたころ、生活が立ち行かず、その子が3歳のときに養子に出してしまい、それ以来、会っていない。
その少年に自らの息子の姿を重ね合わせて熱血指導してしまう六平太と、強くなりたいと必死に稽古にくらいつく少年の一途な姿に感動を覚える。結構良い話。
『むかしの音』かつて実家の火災で味わったショックと、傷の治療に用いた薬のせいで目が見えなくなってしまった娘の話。盲目になってからは琴の腕を磨き、その道のプロとして若くして師範となった娘が、あるとき町中で聞いた職人が槌を振るう音がきっかけで、かつての恩人の消息を知ると言う話。
せつない結末になるが、これも結構良い話。
『雪の朝』は結婚した佐和と夫の間に亀裂が入る話。
容姿端麗、才色兼備の佐和だが、妻に欠点が何もないことで逆に惨めな気分になっていく夫との間で関係が悪化していく。そして夫は佐和のある気持ちに気づく。
佐和も夫も良い人なのに、関係が壊れていくので、やるせない気になる。
ラストは佐和にとっては良かったのかもしれないが、これで終わってしまっては兄として六平太は困るだろう。
読者も困る。
もっと続いて欲しい。
あらま
兄を慕う、血の繋がらない妹、案外あっさり嫁に行って、ビックリしてたら、あっと言う間に、出戻って来た。これから、どんな話に、なるのかね……
Posted by ブクログ
付添い稼業の依頼主に人情味ある対応をすることで深い人間関係を築きそうになるけれど、そうなるのが怖いのか何故か一歩引いてしまう六平太。
その臆病さのおかげで1話完結になり、毎回毛色の違う登場人物が悪い現れるので、飽きる事なく楽しめます。
佐和さんが出戻るとは意外でした。
Posted by ブクログ
うまい!
血が繋がらない妹の関係も、請われて嫁ぎ一安心していたが、あまりに懸命に頑張る佐和に、かえって不審を抱き夫婦仲が壊れる。
付添人となって付き添った大店の娘には、その奔放な行動の裏に、、、。
通りかかった大名の籠の前を通ってしまった農家のせがれ、幼いのに手討ちにされそうになる。
殴打され重傷を抱えた子供は、一命は取り止めたものの意識が戻らない。
農家の父親はその大名の門前に、毎朝糞尿を浴びせかける。
父親を捕らえようとする勤番の武士たちと、六平太のお節介。
エピソードそれぞれが、実に生き生きと表現されていて、面白かった!
Posted by ブクログ
四つの短編の中に、江戸の人々の悲喜こもごもが詰まっている。
藩の抗争に巻き込まれ、浪人となってしまった秋月六平太は、良家の子女の付き添いをして、日々の暮らしをしのいでいる。付き添い先は、味噌問屋や琴の先生などなど様々だが、どの家も現代と同じく、様々な事情を抱えていて、六平太は好奇心や人情から、その事情に巻き込まれたり、自分から首を突っ込んでいったりする。
江戸の世はずっと、太平というイメージしか無かったのだけれど、単純な身分制度に分類されない人間関係とか、大きなお店だと結婚問題とか、とかく現代にも通じるような厄介な問題は、この時代にも山積していたのだなあと思った。武士の体面は大変だ。
そして、なんと言っても最後の「霜の朝」は染みた。幸せになるんじゃなかったのかい、お佐和さん・・・・。彼女は最後には六平太と一緒になるんだろうか。おりき姉さんはなんとなく、そんな未来にも勘付いていそうな感じ。そして、全く沈静化を見せない、十河藩のその後は如何に。次巻は発売されるのか、気になる。