【感想・ネタバレ】シリーズ日本近現代史 4 大正デモクラシーのレビュー

あらすじ

多彩な言論や社会運動が花開き,政党内閣へと結実した大正期.それは,植民地支配が展開する時代でもあった.帝国のもとでのデモクラシーは,どんな可能性と限界をはらんでいたのか.日比谷焼打ち事件から大正政変,米騒動,普通選挙,そして満州事変前夜に至るまでの25年の歩みを,「社会」を主人公にして描き出す.

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

日露戦役後、坂を登りきった日本の25年を内に立憲主義、外に帝国主義のコントラストで描く。世界的には第一次大戦の規模からもわかるようにグローバル化の深化がある時代である。本書では国内的に大衆社会化が進展する様子を様々な切り口で解説する。(ただ、民俗学の常民のくだりだけは本書から浮いているように見える)
原敬日記「将来、民主主義の勃興は実に恐るべし、是れ余も官僚も同様に心配する所なるが、只官僚は此潮流を遮断せんと欲し、余らは之を激盛せしめずして相当に流通して大害を起こさざらん事を欲するの差あり」とある。1905日比谷事件、1918米騒動、1923関東大震災の虐殺と、もはや逆行することのできない大衆化の深刻さと為政者の危機感が伝わる。本書で25年体制と呼ぶ普選と治安維持法の成立は、改めて大変象徴的に感じる。
本書では、対外的な帝国主義のブレーキにならなかった大正デモクラシーの限界を述べるが、大衆にとって自身の利益を追求する手段という意味では、立憲主義と帝国主義は全く矛盾することのない一貫したイズムだったのではないだろうか。そして大衆の欲望と政党政治に対する失望、また為政者による国体の守護という目標、これらがない交ぜになって1930年代をむかえたと考えるとき、大衆社会にとっての大正デモクラシーとは高邁な思想だったのではなく、自己目的のツールのひとつに過ぎなかったことを思い知らされる。

0
2017年09月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

岩波新書日本近現代史シリーズの第四巻。
各章ごとの参考文献や略年表もついていて詳しい。
教科書で知ってる大正デモクラシーだけど、もちろん教科書には載らないことが詳しくて、ずいぶん面白い。

0
2014年06月20日

Posted by ブクログ

言論の自由がある程度あったにも関わらず、帝国主義を乗り越えるような言は皆無だった。支配者からの側の変革がいかに難しいか。植民地の問題を通して、国家という単位は限定づきながら、重要であることを苦くも受け入れざるを得ない。

植民地での参政権獲得(同化)と議会設立(自主)のジレンマからも、対等な国家成立が論理的には導かれる。

普選が導入された後、無産政党が議席を思ったほど伸ばしていないことに、多少の失望とともに、もう少し分析を加えたくなった。

治安維持法には様々な批判、反対意見が寄せられていたんですね。

0
2014年03月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第二次世界大戦後の、経済的な拡張主義に対して、
本書の当時は、政治的にも拡張主義だった。

2つの時代を比較して理解するうえで、
本シリーズは貴重な情報提供源だ。

新書という軽い形をとっているので、
日本史嫌いの自分でも読む気になった。

0
2012年08月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 大正デモクラシーといえば吉野作造だが、主に彼に焦点を当てながら大正期の日本の動きを描く本。読んでいく中最も気になるのは、やはり民衆の動きではなかろうか。普段学ぶ(中・高でとでも思っていただければ)歴史というのは、為政者が何をしたのか、それが他「国」にどう影響を与えたのか、それによりある国のどのような政治勢力が動いたのか、というような大きな枠組みから語られる事が多い。しかし、この本は臣民の動きに力が入っているように思え、非常に斬新だった。また読み直したい。。

0
2011年06月01日

Posted by ブクログ

1910ごろから1930ごろまでの大衆社会、政治、文化、マイノリティの変遷を概観しながら、大正デモクラシーというものについて整理する一冊。大衆運動、社会主義、帝国主義、民本主義など思想的にも錯綜し、なかなか全体像を見通すことのできない大正時代を捉えるにあたって最適な一冊である。
この時代についてのある程度の知識があれば、それがうまく整理されてきて気持ちいい読後感を味わえるだろう。

0
2012年03月19日

Posted by ブクログ

日露戦争後に爛熟期を迎えた日本社会の様相を、「帝国」という枠組の中での国民の形成、そして国民による運動に焦点を絞りながら明らかにしている。なかでも、植民地に対する国民の意識や、女性の社会進出・政治参加に関する記述などは、概説書の中でも白眉。

0
2011年12月31日

Posted by ブクログ

[ 内容 ]
多彩な言論や社会運動が花開き、政党内閣の成立へと結実した大正デモクラシーの時代。
それは、植民地支配が展開する時代でもあった。
帝国のもとでの「民衆」の動きは、どんな可能性と限界をはらんでいたか。
日比谷焼打ち事件から大正政変、米騒動、普通選挙の実施、そして満州事変前夜に至る二五年の歩みを、「社会」を主人公にして描く。

[ 目次 ]
第1章 民本主義と都市民衆
第2章 第一次世界大戦と社会の変容
第3章 米騒動・政党政治・改造の運動
第4章 植民地の光景
第5章 モダニズムの社会空間
第6章 恐慌下の既成政党と無産勢力

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

0
2011年05月15日

Posted by ブクログ

日比谷焼打ち事件に象徴される幾多の騒擾に始まり、満州事変、五・一五事件の中で終焉を遂げる「大正デモクラシー」の歴史像。

「主婦之友」1927年5月号の中で、すでに夫婦の性的生活がトピックになっているという話は面白かった。「セックス特集」なるものを編み、性生活を赤裸々に露わす風潮は、現代の女性誌特有の傾向なのかと思っていたら、80年前からやっとるんかい……。また、「太陽」1924年1月号ではすでに内地在住朝鮮人への参政権付与の是非を尋ねていて、韓国併合当時からこの問題が存在していたことが判る。そして、大正デモクラシーを終焉に導いた原因として、「東京朝日新聞」は「第一に腐敗、第二に無能である」と喝破していて、まさに今現在の民主党政権の腐敗と無能、危機に瀕する民主主義がダブる。

こうして見ると、途中、第二次世界大戦と占領統治による分断はあるものの、「大正」という時代は確かに、今の "日本" という国が確かな形を帯びて形成されていった時期であることがよく判る。社会主義や共産主義の勃興、台湾、朝鮮、満州へ進出、第一次世界大戦、関東大震災、大恐慌といった歴史的なイベントも盛り沢山で、非常にダイナミックな歴史の一断面を見せてくれる。

0
2010年09月05日

Posted by ブクログ

成田龍一『大正デモクラシー』(岩波書店)

 「大正デモクラシー」が、第一次と第二次の世界大戦間の一時期を画する歴史事象であることは、よく知られている。
 明治期の「殖産興業」「富国強兵」、戦前の「十五年戦争」にはさまれて、「自由」、「政党政治」、「穏健」のキーワードが思い浮かぶ。

 1905年の「日比谷焼き討ち事件」。「雑業者」と「旦那衆」。日露戦後の講和をめぐる評価をめぐる意思表示。「雑業者」と「旦那衆」による「東京騒擾」が発生する。

 大正デモクラシーといえば、民主主義の用語の前に「民本主義」。吉野作造の名が浮かぶ。民本主義には、国内で主張される「政権にもとめる自由、主権」と、政権とともに植民地や本土外の隷属を正当化する「限界」があったとする。

 藩閥政治に政党政治、ロシア革命があれば東南アジアの植民地化がすすむ。普通選挙法に治安維持法、第一次大戦時の好景気と戦後の不況、国内で金融恐慌、世界で同時恐慌。軍の拡大主義と軍縮の国際世論。

 相対軸がからんで、乖離と揺り戻しが繰り返されつつ、軍の台頭、議会政治は空洞化。デモクラシーが定着したかにみえながらも、なお未熟。

 いま、「世界同時不況」がいわれるなか、時代の趨勢を読み取るためにも、多くの人に読まれるべきである。岩波新書「シリーズ日本近現代史」の一冊。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

近現代史シリーズの第四弾。大正デモクラシーを中心に大正時代、さらには満州事変前夜までの流れが書かれている。

0
2009年10月04日

Posted by ブクログ

とてもおもしろいとか、ものすごく新しい知見があったということはなかったが、とりあえず、最後まで興味をもって読むことが出来た。当たり前といえば当たり前なのだが、このシリーズの前巻があまりに読むのがつらかったので、それだけでうれしい。そろそろ、柳田国男や、小林秀雄、江戸川乱歩など、知った名前がでてきたり、レコードやラジオが登場し、「そうかなるほど、明治から見ていくと、こういうタイプスパンなのか」と、時間の幅が実感できたのがよかった。""

0
2018年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

当時の市井の人々はどのように思って生きていたのか分かりませんが、現在から振り返ってとても暗い時代だったように感じます。第二次世界大戦の戦場で亡くなった人も圧倒的に大正生まれの人たちだったように思います。大正天皇も若くして薨去されました。韓国併合や第一次世界大戦、米騒動そして関東大震災と塗炭の苦しみを生きたように想います。この平成の世は100年後の世から振り返ったとき、どのような時代だったと評価されるのでしょうか。

0
2016年10月23日

Posted by ブクログ

少々物足りなさを否定できないが、それは叙述が時間の不可逆性に対する感度が低い”オーソドックスな”スタイルであることにも起因していると思う。
まぁシリーズものだから内容が総花的にならざるを得ない面も多々あるのだろうが、現在そして将来の日本を考えるにあたり、個人的にはこの時代、つまり日本人にとってデモクラシーとは本当に腑に落ちている思想なのか?の検討が最も重要だと思うので、評価も厳しくならざるをえない訳で。

0
2013年04月20日

Posted by ブクログ

岩波新書の「シリーズ日本近現代史」のなかの1冊。以前、『ネオ・リベラリズムの精神分析』で著者の言葉として紹介したように、近年はマクドナルドや吉野家、ユニクロといった安値競争が激化しているなか、アカデミズム出版業界も単価が安い新書への充実が図られている。そんななか、岩波新書でもこのシリーズが全10巻で企画されていたことを最近知った。
私事だが、最近引越しをした。未読の本も含めほとんどをダンボールに積めてしまい、読書中の本も引越し当日前に読み終えてしまい、あまり大きくない本をということで、急遽購入したもの。本当は同じシリーズの吉見俊哉『ポスト戦後社会』が欲しかったのだが、職場近くの書店にあったのは本書だった。もちろん、成田龍一は『「故郷」という物語』で知っていたし、西川長夫『国境の越え方』の日本近現代史の解釈を読むにつれ、「大正デモクラシー」については教科書レベル以下の知識しかなく理解不足だったので、ちょうど良かった。一応目次を示しておこう。

はじめに
第1章 民本主義と都市民衆
第2章 第一次世界大戦と社会の変容
第3章 米騒動・政党政治・改造の運動
第4章 植民地の光景
第5章 モダニズムの社会空間
第6章 恐慌下の既成政党と無産勢力
おわりに

目次で分かるように、本書は大正デモクラシーの解説書ではない。大正史概説といったところか。冒頭に「「大正デモクラシー」の語は、時期や内容、指し示す対象、あるいは歴史的な評価にいたるまで、論者によってさまざまに用いられている」(p.vi)と書かれているが、本書では著者なりの大正デモクラシーの定義が示されるわけでもなければ、さまざまな論者の用法が検討されるわけでもない。かといって、大正時代に起こった出来事を全て「大正デモクラシー的なもの」として解釈するほど大胆でもない。まあ、とにかく大正時代について知りたいという素朴な動機で読むのが一番いいのかもしれない。
そういう意味では、私も本書の読書を通して、大正デモクラシーとは何ぞやという問いに対して明白な答えができるような知識を得たわけではないが、いくつか知らなかったこと、知識が曖昧だったことを知ることができた。第4章や第5章の内容もそれなりに知っているつもりではいたが、大正時代ということを意識して、他の出来事と関連付けることで理解が深まる。なんといっても、都市民衆史を専門とする著者ですから、米騒動などの社会運動の高まりと、そこから市民の政治参加(といいながら、当時の政治家がどれだけ一般市民と近い立場にあったのかは不明)としての政党のあり方に関する記述は学ぶことが多かった。
でも、やはり史実が次々と説明される本書は私にとっては非常に読みにくく、改めて私の歴史的知識の足りなさを思い知らされる読書でもあった。ちなみに、あとがきによれば、成田氏は卒業論文以降、大正デモクラシーに関する研究をしていたらしい。30年以上たって、昔のテーマについてまとめるってのも素敵です。

0
2011年08月10日

Posted by ブクログ

タイトル通り、大正デモクラシーの概説書。民衆にスポットをあて大正期の社会運動について当時を生きた「一般」の人びとの声を拾いながら時代の雰囲気を描写しています。著者自身が「民衆」や「社会」を研究の対象としているため内容がそちら側に偏重しており、当該時代の政治や経済についてはほとんど触れられていません。ですので狭い意味での「日本近現代史の概説書」「大正時代史」を期待して読んでしまうととまどってしまいます。しかし、先にも述べたとおり当時の一般人の雰囲気を感じるのには最適の本ではないでしょうか。

0
2009年10月04日

「学術・語学」ランキング