あらすじ
地味で目立たぬ若者が、若くして世を去り幽霊に。影の薄さに磨きをかけて暢気に暮らしていたが、街で見かけた善意の学生をその死の運命から救おうと思い立ち……。優しい幽霊の物語、『柳の下で逢いましょう』。遠い昔に別れた人との不思議な時間を描いた『約束の夏』、すれ違う少女たちの願いが切ない『踏切にて』の三本。大切な探しものがある人だけがたどり着ける不思議なコンビニたそがれ堂、大人気シリーズ第9弾!
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Posted by ブクログ
コンビニたそがれ堂シリーズ9作目の「花時計」は、春・夏・秋のお話がひとつずつ。
どれも、時を巻き戻したい人々が主人公です。
春の「柳の下で逢いましょう」
柳の下にずっといる幽霊が主人公、といえば、いかにも怨みを抱いていそうに感じますが、本人(?)は、人々の営みを見守るのが好きな、至って穏やかな幽霊です。
そんな彼なので、目の前で起きてしまった事故を、何とか防ぎたい、と、奮闘します。
村山早紀さんの小説に登場する幽霊って、みんな優しいんですよね。
別のシリーズですが、かなりや荘に出てくる幽霊も、未練は勿論あるけれども、それよりも、生きている人間を応援してくれたりして。
夏の「約束の夏」
還暦近くなった男性が、19歳の夏に、こうしていれば…と思う話。
ねここの言うように、どうにも出来ない事は、自分を許してあげないと、不幸になるか魔物になってしまうし、あの魔物も、それ自体には罪はなく、生まれたのは仕方のない事だったんでしょうね。
ところで、あの百貨店の中にある、あの老舗書店で、あの店員さんとの会話シーンがあるので、他のシリーズを読んでいる方は、きっと嬉しくなると思います。
そして、回想に登場する女の子の持つ不思議な力を読んで、「これはもしや…!」と思っていたら、やはり、花咲家の遠縁という設定だそうです。
秋の「踏切にて」
お互いをとても大切に思っている、二人の女の子。二人とも、あの日に時間を戻したい、と思っていて、別々に、コンビニたそがれ堂に辿り着くのですが。
今は少し会えないけれど、きっとすぐに会えるはず。
そうですよね。人間に、時を巻き戻す魔法は使えないけれど、未来は変えられる。
毎回、ねここの着物の柄の描写が楽しみで、色々イメージしながら読むのですが、この話の時の着物、みたいなイラスト集が出たら嬉しいなぁ。