谷川直子のレビュー一覧
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「断貧サロン」は働かない男に貢ぐ女のお話。女のもとに見知らぬ女性が声をかけてくるんですね。「あなたは貧乏神にとりつかれている」と。で、見知らぬ女性は貧乏神にとりつかれた女性を救うために活動している団体のメンバーだという。とりあえず同じような経験をしてきた女性が集まるセミナーがあるから参加してみて欲しい・・・と。
面白いなと思ったのは貧乏神というと、髭ぼうぼうで長い髪をしている変な男性みたいなイメージがあるじゃないですか。でも今の貧乏神というのは、イケメンで優しいんですね(笑)時々、めちゃくちゃ深くて良い事を語りだす。しかし働かない、とにかくたかる、たかる(笑)
物語における主人公の女性の目的というのは当然、貧乏神から離れて普通の幸せをつかむ、ということになるんですが、この作者、ラスト近辺で「貧乏神」がなぜ「神」なのか?ということを考えさせるエピソードを挟み込んでくるんですね。ということ何か正しいのか?という答えは曖昧なままにして、読者に考えさせるんですね。それは「屋根屋」も同様です。再読したいとも思えませんが、2冊ともそれなりに読ませる作品でした。 -
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「世界一ありふれた答え」 谷川直子 ★★★☆☆
日の出前と日の入り後に発生する空が濃い青色に染まる時間帯を「ブルーアワー」という。
太陽と月が入れ替わる時間だ。本作はブルーアワーのような作品だった。凄い出来事があるわけではないが整然と美しいのだ。
主人公たちは、病気になる前は太陽だった。多くの人に認められ、世界の中心にいた。
しかし、今は月だ。自ら輝くことはできない。
太陽として生きてきたのに突然月だと言われ未来を見失った。
でもね、世界にとっては月だろうが太陽だろうが同じなんだよ。そんなの関係なく回り続ける。自分に価値があると判断するのは他人ではなく自分自身。価値があるとかないとか考えることも無意味なのだ。
#引用
・同じだからこそ、人は違いにこだわるのだ。すべての人の共通点は生きているということ。
・世界は私を必要としていない。世界は誰も必要としていないのだ。なんという大きくてあたたかな拒絶。
・同じ骨を持ってみんなが生きている。あるいは死んでいく。それだけでじゅうぶんに価値があることなの。みんな取るに足りない存在で、(中略)、でも生きていてそれだけでじゅうぶんなの
・ある意味、私は他者であり、他者は私なのだ。だからこそ愛しく思えて共感できる。
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うーん、悪くはない。が、前作の方が良かった。前作の『四月は少しつめたくて』と、構成も似ているが、あっちの方が自然だった。
40歳のやつれ果てた女が、いくら難病で鬱でも、年下の新進ピアニストの男に声を掛けられるというのが、あり得ない気がする。前作は中年のかつては人気のあった詩人と若い編集者だったから、気持ちが入りやすかった。それに、前作はカルチャーセンターの生徒たちの人間模様もリアルで面白かったが、こっちは残り四分の一になるまで、ほとんど二人きりの世界で、息が詰まる。唐突に現れたシングルマザー母子も不自然。
比べたらきりがないが、それだけ前作の出来が良かったわけで、前作を読んでいなければ、これもそこそこ良かったのかもしれない。しかし、『おしかくさま』『四月は少しつめたくて』と、「おおっ!谷川直子いいぞ!」と盛り上がった気持ちが少し冷めたのも事実。
ピアノに関しては、ほとんどドビュッシーのアラベスクしか出てこないが、トキオの指導が的確で、その部分を読みながら、もう一度弾いてみるか、という気持ちになった。ピアノの音や構造についても『羊と鋼の森』より、表現が上手かった。 -
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現代にとても即した小説で、誰もが薄々思っていたことが書かれていた。
スマホ、ライン、スタンプなどの登場で言葉はどんどん従来の意味から離れ、空虚なものとなってきている。かわいい、いい感じなど使い勝手の良さから意味が複数加えられ本来の意味を見失った言葉もある。
詩人というのは、言葉に対して真摯で、物事に対しても簡単に考えるということをしない人種だとわたしは思う。そんな言葉と物事を大切に考える詩人と、現代の浪費される言葉を並べて描き、生きた言葉を使うことの大切さを読者に教えてくれる。
作中に出てくる詩がとても素敵でした。「謝罪は権力を与える」その通りだと思います。今まで一度も考えたことがなかったけれど、謝ることも一筋縄ではいかないのだなと。心に何か傷痕を残すような素敵な言葉がたくさん詰まっていて読んでいて心地が良かったです。 -
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新聞の書評を見て読んでみた。たしかに、貧乏神がイケメンに化けて女に貢がせる「ひも」のような生活を送っていて、他方で、そういう女を貧乏神のマインドコントロールから抜け出させようとする「貧乏神被害者の会(BHK)」が活動しているという奇想天外な状況設定の中、最近流行りの地元志向とか、節約志向のようなものも織り交ぜつつ、スピーディーにストーリーが展開して、読んでいて面白いことは面白い。ただ、30歳前後の独身女性に対するメッセージがあるような、ないような、何らかの教訓を示唆しているような、していないような・・・何となく中途半端な感じがした。最後に短いオチはあるのだが、読み進みながら、BHKに関するどんでん返しを期待していたので、そこがスルーされていたのは、個人的には残念だった。