石黒浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大阪大学大学院教授で、人間酷似型ロボット(アンドロイド)研究第一人者の著者は、「ロボットも心を持つことができる」と主張する。心は人間固有のものじゃなかったの?! ― 本書を読むと、ロボットには踏み込めないと考えていた心の領域が、実は不確かなものであったと気付かされる。心があるから人間なのではなく、心を知りたいと考え続けるのが人間なのだと、教えてくれる。
心の仕組みは、脳科学や認知科学でも解明されていない。そこで著者は「先にまずロボットやアンドロイドを作ってみて、そこから人間を知る」というアプローチ(構成論的アプローチ)をとる。科学の知見を取り込んで、まずロボットを作る。人間のまばたきや仕草、容姿など細かなところまで再現。ロボットと接した研究者らがどのような感情を抱いたかを分析し、「人間らしさの再現」に迫るという。
研究者らに、アンドロイドと対面してもらう。遠隔操作しているアンドロイドと会話をしてもらう。また、平田オリザさんが脚本・演出するロボット演劇も企画する。立ち位置や間の取り方をプログラムした男女のロボット2体と、2人の役者が「人間の心の葛藤とロボットの心の葛藤が交差する」物語を熱演。演劇後のアンケートではほとんどの人が「ロボットに人間のような心を感じた」と感想を述べたという。
このような研究や企画から「人間は、相手の表情や仕草、口調から感情を単に想像しているだけである。ただ単に想像して、あの人は怒っている、悲しんでいるなどと思い込む」と感情の本質を説く。
「心とは、感情とは、人間が人間同士や、人間とロボットの相互作用を見て感じる、主観的な現象である。そして、それは優れた直感を持つ演出家の力を借りれば、十分にロボットでも再現可能なものである。
また、加えて大事なことは、人間は自分に心があるかどうかは分からないが、他者は心を持つと信じることによって、自らにも心があると思い込むことができることである」
僕は感情の起伏が激しい。極力オモテに出さないようにつとめているけれど、言葉で説明できない何かが胸元から飛び出してくる感覚がある。尊敬する先輩と刺激的な会話をかわしているとき、素敵な女性が隣にいるとき、いかにもなチンピラにからまれたとき…ワクワク、ドキドキ、ハラハラする。反省、後悔、悦に入ったり、嗚咽をもらしたり。自然と溢れてくる、そんな何かをすごく大切なものとして扱っている。
心は人間の専売特許ではない。けれど、その人だけの感情は必ずある。著者がいうように、アンドロイドが日常のいたるところで活躍する日が遠くない将来にくるのだろう。そうなっても、余計な恐怖心や不気味さを抱く必要はなく、自分の心と付き合っていけばいい。「ロボットを鏡とする」ことで、より自分と向き合えるかもしれないと思った。