あらすじ
機能的・哲学的に難解なロボットの諸問題を、SF映画の話題作を通して分かりやすく論じる。複雑なロボットの骨格を学ぶには『ターミネーター』を、ロボットと我々の間に生じる「哲学的な障壁」の教本は『A.I.』『サロゲート』、C-3POとR2-D2はロボットの社会における役割を教えてくれる。さらに、人間とロボットの境界は『攻殻機動隊』における「電脳」「義体」を通して考える、というわけだ。現代科学はSF映画に近づき、境界があいまいになっている。例えば、サイズが小さい「トランスフォーマー」ならばすでに作られているし、「電脳」のように脳を直接コンピュータにつなげる技術も発達を遂げている。今後、果たしてロボットは「こころ」を持てるのだろうか? 2006年、自身がモデルのアンドロイド「ジェミノイドHI-1」を作り、世界から注目を集める、知能ロボティクスの第一人者が考える近未来が見えてくる。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
様々なSF映画を題材にして、ロボットと人間や社会との関わりを考察している科学新書。大して分量もないので読みやすい。
著者は、いきなりプロローグで「人間とロボットのあいだに明確な境界はない」と言い切ってしまう。生き物を勉強してきた自分にとっても、「人間が核酸とタンパク質のロボットである」と言うことに抵抗はない。それならば「ロボットが金属の人間だ」と言ってしまうことも、十分うなずける考えである。
もちろん人間とロボットは違うモノだと考える人もいると思う。そこで特に言われるのは、感情の欠落だろう。しかしむしろ著者は「アンドロイドだから、いくらでも表情を豊かにすることができる」と述べている。あらかじめ様々な表情と身振りができるようにして、さらに言葉も表現力豊かなものをアーカイブしておけば、表現することに関して人間が敵うはずがない、という訳である。これは全くその通りで、人間であれば「あの時こう伝えられたら良かったのに」という場面は、ロボットから無くすことができるはずである。逆にその不完全さにこそ人間性があるのだと言われたならば、ある程度ロボットの機能を落とせばいい話なのだし。
それは不可能だ、と思われるかもしれないが、実際それは現実になってきているように思う。例えば質問をすると答えてくれるSiriは、データベースから言葉を紡ぐことができるという証明である。それに、自分はあまり知らないのだけれど、仮想の彼女を作るという某携帯ゲームにハマって、ゲーム機片手に一人でデート旅行するような人もいたらしい(今もいる?)。これなんかはまさに、人間が錯覚してしまうほどに、造られた感情が本物の感情に近付いてきている現れではないだろうか。
しかし、だからこそ著者は「人間は何をやるべきか」「人間とは何か」と何度も問うている。冒頭で「人間とロボットのあいだに明確な境界はない」と宣言した人物が、実は最も人間とロボットが違う存在なのだと信じたい人間なのかもしれない。
Posted by ブクログ
ロボット研究をここまで哲学的に見ることができるのが石黒教授のすごいところであろう.たくさんのロボットに関連した映画がネタに出てくるが,映画の見方も一味違う.
Posted by ブクログ
アンドロイド製作者の話を、初めて読みました。
やはり、アンドロイドをつくっていくうえで、人間とはなんなのかという考えに行き着くのが自然なことだと思いました。
「怒りたくても怒れない。怒っている人を見ると不思議になる。」といった、共感できるところも多く、さらに石黒浩さんのことを知りたくなるきっかけになったと思います。
Posted by ブクログ
遠隔操作で動かせるロボットを作っている博士の本。
ロボットとは何か?というより、「人間と(人間が使うものとしての)ロボット」の関わりを重視している。
コレを読むと、ロボットはモノなんだなぁとしみじみ感じる。ロボットが何が出来るか、ではなく、人がロボットに何を投影するか、という視点が興味深い。
面白かった。
Posted by ブクログ
映画の中のロボットの描かれ方を通して、
研究につながるリアルさ、人間を問う視線のありかたなどを検証。
「社会のループ」に入れれば、
ロボットであっても人間と同じ、
コミュニケーションの取れる存在として認識される。
人間にしたって、その心が本当にあるのかどうかを
検証することはできないのだから。
ジェミノイドのスイッチを切ることで、
普段は目にすることのない「死」を感じるというくだりは
ちょっとショックだったなー。
ロボットに競争心を持たせることの可能性には、
危ない部分もはらんでいると思うが、
なかなか興味深い視点だと思った。
「マトリックス」「サロゲート」ちゃんと見てみようかな。
Posted by ブクログ
SF映画と現実のロボット技術との対比の中で、「ロボットとは何か?」「人間とは何か?」を考察していくという内容。
何かについて考察するときは、それに非常に近いものとの対比することで、「その差はどこから生まれているのか」を考えるというのが一番ストレートなやり方になる。
ほとんど人間の代わりになるロボットが出てくるSFの世界では、「じゃあ、ロボットと人間の線引きはどこになるんだろう」という疑問を考えずにはいられなくなる。それは、やはり私たちが人間であり、人間に近いものに注目し、その差を意識する、という性質を持っているからだろう。たぶん究極的に言えば、それが人間かどうかを気にするかどうか、というのが「人間らしさ」なのかもしれない。
あげられている映画の内容について結構触れられているので、できればある程度映画は見てからの方がより楽しめるだろう。
「アイ、ロボット」「ブレードランナー」「サロゲート」「マトリックス」あたりはチェックしておきたい。
あと、もちろん「攻殻機動隊」も。