加藤文元のレビュー一覧
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この証明が認められない論点も知りたかった
望月さんのABC予想の証明を一般向けに書いた本.出だしの部分は望月さんのABC予想証明の経過や,それがいかに革新的であるかが思い入れ満載で綴られている.その次は,ABC予想の問題そのものと,群論とかの簡単な予備的なお話が続き,最後に宇宙際タイヒミューラー理論の片鱗に触れるという構成.
普通は,本書では舞台に例えられている宇宙というものが違うと証明に使えないというのが私の理解だ.互いに相反する公理を含んだ公理系という認識でいる.それが,十分に複雑で群の対称性が一致していれば,宇宙をまたいで対応付けができるというのが宇宙際タイヒミューラ理論というものだと思った.著者は,多くの前提知識を必要とする話を,それらをすっ飛ばして,例え話で工夫して要点を伝えようとされてるので,十分に理解できかどうかはだいぶ不安ではあるのだが…
以上の理解の下で,この理論は,ヒルベルトが数学の証明が正しいということを,公理系から導出できることと定義して以来の,数学のルールの変更の提案なのではないかと思った.普通は変数記号が等しいと同じものと見なすけど,それを分岐して分かれた公理系間で同じ性質のものを同じものと見なすというふうに拡張しているのではないかと.現状のルールではなく,ルール変更の提案なので,受け入れられるかどうかが分かれているように思えた.これがその論点かどうかは分からないのだが,学会で論点になっている部分がきっとあるはずなのだけど,そのあたりについても知りたかった.この点で★を一つ差し引く.
上に書いたような私の理解が正しければ,現状のヒルベルト以降のルールの下では認められるのは難しいという印象をもった.一つは,同一性という一階述語論理の枠組みに対する変更であること.もう一つの基本の集合の公理は カントール→ZF→ZFC と変更があったが論理の部分に手をつけたことはないように思う.二つ目は,同じ対称性だったら同じとみなすとかは,ものの類似性を扱う位相とか距離とかの概念と関連するように思う.私はろくに開集合・閉集合も分かっているとはいえないへっぽこではあるのだが,別枠で考えられているそういう考えを,根本の論理のところで変えるというのも,受け入れるのが難しそうな気がする.
数学は純粋に数や量の学問というだけでなく,科学のリンガフランカとう側面もある.ヒルベルトのルール変更は,物理から生じた微積分を問題なく扱うという要請が背景の一つにあると思っている.科学の言語として使ったときに,何かこの新しいルールの下での数学に利点があるとか,そういう点を探して,根本ルールの異なるメタ宇宙みたいな感じのものとしてプレゼンテーションした方が,興味をもってくれる人が増えそうな気がした. -
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ネタバレ●iut理論
NHKで放送された内容が興味深かったため読んで見たくなった。望月先生の監修があるというのもよんてみたくなったポイントである。 数学の本とは思えないくらいスラスラ読める内容で、加藤先生がとても丁寧に説明されており、こういう本がわかりやすい本っていうんだなあと実感。 まずは設定から説明。そして背景、数学界について触れ、前提条件をしっかり説明した上でIUT理論の説明に入る。一つの数学の式の証明が書かれたような一冊。読んでいてワクワクだらけであった。「数学とは論理的で、直感的な学問である」衝撃であったが、とてもふに落ちた。B**** -
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鳩に数学ができるかどうか考えたことがある。人間とは異なる概念を持っていると考えていたのだ。しかし、鳩にはメタ認知ができないと耳にしたことがある。メタ認知ができないと数学はできないらしい。だから、鳩には数学ができないことになる。
デカルトの格言「我思うゆえに我あり」はメタ認知とは関係がないと思っていた。でも、読みようによってはそう読めなくもない。
計算機も昔とはだいぶ変わってきている。計算機が次に数学ができる存在になるのか?彼らの数学をどこまで理解できるのか?
ウィトゲンシュタインの規則のパラドクスというものがある。あるけど、どうしてもパターンがあるように思えてしまう。しかも、大抵はただひとつのパターンに感じる。でも、これは半分嘘だ。パターンを発見するのは実は難しい。
数学は無味乾燥したものだと誤解されることが多い。でも、そこには驚きがある。繰り返し、驚き続けることができる何かがある。これが本当の数学だ。 -
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まず。数学苦手でも読めます。
映画「レ・ミゼラブル」のクライマックス、ラ・マルセイエーズ響く七月革命のシーンがものすごく印象に残っているので(直接的に七月革命に参加しなかったにせよ)、あの前後を生きていたんだなぁと思うと、感慨深いものがある。
では、父が自殺をしていなかったとしたら。エコール・ポリテクニークに合格していたとしたら。フーリエが亡くなっておらず、アカデミー大賞を受賞していたとしたら。
ガロアは20歳で亡くなることはなかったのか。
色んなイフが考えられるけれど、結局それは、語り得ないことであって。
ただ、彼がいたからこそ、繋がった世界がある。
今なお、彼を理解しようと試み、憧れる人が世界中にいるというのは、なんだか面白い気がする。
「ガロアは代数方程式論を通してまったく新しい音楽を聴きだしていた。それが斬新なメロディーや和音に満ちあふれていただけなら、ルジャンドルの本のような古典的な形式に整えて一つの楽曲に仕上げることも可能だっただろう。しかし、ガロアの音楽はそれらのどの形式によっても適切に表現できない種類のものだったのである」
四則演算と平方根で、解の公式を導くことのできた四次方程式までと、五次方程式ではそれが出来ないと論じたガロアのアプローチを理解するのは、私にはなかなか難しい。
そもそも言葉や記号の定義を辿っていくだけで、迷路に嵌まり込んでいく感じがする。
ただ、当時の数学者でも見逃してしまうような、ガロアの発想の転換、問い直し方には、すごく魅力を感じる。
そして、今を生きている。
その世界にもう少し近づけるといいんだけどなー(笑) -
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2007年初版の増補版ということで、元の版の方は知らなかったが、こんな数学の本を読みたいと思っていた。とはいっても、数学が苦手なこともあり、全部がよく理解できたというわけではない。しかし、数学の歴史と、時代の変遷に伴う数学の枠組みの変化といったものがコンパクトかつ面白く記述されている。例えば、冒頭に出てきた2乗と3乗の2項展開を平面や立体の図形として理解するというのは、なるほどと目から鱗が落ちる思いがした。本書を読んでいると、数学は一般化の歴史という気がする。例えば、古代の人は自然数や有理数しか知らなかったらしいが、整数、実数、そして虚数へと数の概念は進化していき、自然数や有理数は、今では、実数や虚数を含む数の一部分であったと分かる。そこには、人が見聞きする数量としての数を超えて、理論的な概念として数に至っても、それまでと同じ法則が成り立っていたりする。そんなことを本書は教えてくれる。
時間を置いて、じっくり再読してみたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
古代バビロニアで粘土板に二次方程式の解法が刻まれてから四千年、多くの人々の情熱と天才、努力と葛藤によって、人類は壮大な数学の世界を見出した。
通約不可能性、円周率、微積分、非ユークリッド幾何、集合論―それぞれの発見やパラダイムシフトは、数学史全体の中でどのような意味を持ち、どのような発展をもたらしたのか。
歴史の大きなうねりを一望しつつ、和算の成果や19世紀以降の展開についても充実させた数学史決定版。
[ 目次 ]
第1章 数学の芽
第2章 数学の始まり
第3章 西洋数学らしさ
第4章 古代から中世へ
第5章 カメに追いつくとき
第6章 計算する魂
第7章 曲がった彫刻
第8章 見えない対称性
第9章 形に対する悦び
第10章 感性の統合
第11章 フェルマーの最終定理
第12章 空間と構造
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]