猪木武徳のレビュー一覧
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匿名
購入済み音楽の嗜好性は多分に時代や社会の影響を受けていると思うので、そういった背景を学んだ上で鑑賞したい気持ちから本書を手に取りました。章によっては予想以上に深く難解で、再読の必要がありますが、著者の専門分野を活かした芸術論となっており読みごたえがあります。
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Posted by ブクログ
国民経済計算システムが精緻化すると軌を一にしてマクロ経済学が発展した。
フィールドリサーチは、計量経済学的方法に比べて形が作りにくく、手間と時間がかかる。
指南書『聞きとりの作法』『フィールドワークー書を持って街に出よう』
『経済学者、未来を語るー新「わが孫たちの経済的可能性』
リカード的悪癖=物事を単純化して仮定を積み重ねて考える。資本や労働がすぐに転換調整できることが前提=実際は規模の経済が働くか否に依存しているほうが自然。
「ヘクシャー=オリーンの定理」自由貿易の擁護論
イギリスの自由貿易はイギリスの利益になったから提唱された。世界経済のためではない。
アメリカは保護主義の砦と言われた。関税率は4~50%。関税が連邦政府の主たる収入。
世界大戦は、重要産業の自給体制が進んだ。
国富論は、外貨をため込むことを是とした重商主義を批判している。貿易を通じて生産と消費を拡大することが富の創造につながる。
日本資本主義論争=理論闘争は実りがある議論にならない。
レオンチェフパラドックス=ヘクシャーオーリンの定理通りにならない問題。
プロスペクト理論=毛沢東が朝鮮戦争に参加した理由。
差別と区別の違いは観察者による任意。過去のデータに従って判断することは、差別になるか正当か。保険で男女の差があることは正当、離職率が過去女性のほうが高いことを採用の参考にすることは正当か差別か。
教育の収益率は約7%ほどと報告されている。
「統計的因果推論」因果関係を抽出する方法。
シンプソンのパラドックス=新薬についての男女別と合計の結果が違うパラドックス。母集団の数が違うとそのような結果もありうる。『入門統計的因果推論』
適応的期待=今期の期待は、前期の期待とそれの実現度合いを足し合わせたもの。
ポリネシアの島々の発展度合い、ハイチとドミニカ共和国の発展の歴史は、経済の実験になっている。
月と雲の時代=月は解析性がある。雲にはない。両方が研究の調和に必要。雲の分野は科学の政治家が起きやすい。
競争は発見のための装置。競争によって最も優れた方法が発見される。発見のための手続き。 -
Posted by ブクログ
本書は今年の初めまでWeb中公新書に連載されていたものを加筆修正されたもの。ところどころ読んだ気がしたのはそのせい。全体で6章構成。
第1章 まずは控えめに方法論を
第2章 社会研究における理論の功罪
第3章 因果推論との向き合い方
第4章 曖昧な心理は理論化できるか
第5章 歴史は重要だ(History Matters)ということ
第6章 社会研究とリベラル・デモクラシー
第2章では牧野邦昭さんの『経済学者たちの日米開戦』でも援用されているプロスペクト理論について「興味深い分析」としつつも、理論の歴史的現実への適用には慎重であらねばならないと述べられている(p.80-83)。これは穏当な評価だと思うが、同じ第2章で大塚理論とグローバルヒストリーの方法を対比させながら、後者がややもすれば見逃しがちな国家」と「主体」の問題を大塚史学が鋭く問うている点を評価しているところ(p.67-69)などは流石である。この部分で「自由で健全な懐疑主義(healthy skepticism)」という本書の副題でも用いられれているキーワードが出て来ている点にも注意。
第3章の「統計的因果推論」の話が本書の中で一番わかりにくかったのは、自分自身が統計学などに疎いからにほかならない。勉強させていただこうと思う。最後に佐藤俊樹『社会科学と因果分析』(岩波書店、2019年)がウェーバーの方法と近年の「統計的因果推論」の方法の近似が指摘されていると紹介されていたので、その辺を取っ掛かりに。
逆に第4章はおなじみの歴史的事象にもふんだんに触れられており、わかりやすかった。米騒動の時の石橋湛山の分析や工業化における「ビッグプッシュ理論」、ジョンローのシステムや南海泡沫事件、ついでにフィッシャーの失敗など。
第5章は著者の本来の専門である労働経済学の観点から「日本的雇用」などの歴史的成立過程の事例を織り交ぜながら、わかりやすい話になっていた。経路依存性の話もハイチとドミニカの分岐の話は興味深かった。
第6章は全体のまとめにもなっているが、p.215〜230までのマーシャル、ハイエク、福沢諭吉(というか「競争」の訳語の話)とつないでいく展開は流石としか言いようがない。 -
Posted by ブクログ
本書の経済社会とは「経済的な関係が深くしみこんだ社会」のこと。宗教や伝統に代わって経済的な結びつきが社会の重心がシフトしているのが現代の特徴であり、それをどう見ていけばよいかが論じられている。
著者は著名な経済学者だが、本質論や演繹論のみで社会を切ることには懐疑的で、歴史からの学びや手間のかかるフィールド・リサーチの意義を高く評価している。社会には、統計的処理だけでは解決できない問題も多いことを強調する。その一方で、理論なんて不要といった極論にも与しない。リベラル・デモクラシーの下で問題を「解決」するには、パッチワークを重ねることで何とか問題解決に当たるしかない、「『抜本的改革』という掛け声には注意が必要だ」という著者の思想に裏打ちされた方法論が展開されている。 -
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経済学の基礎のキソが学べる一冊。本書は――書名とは裏腹に――経済学の「限界」を考察することで、逆に「可能性」を明らかにするというアプローチを採る。ただ、難しい理論の話は少なく、第1部は身近な話題(税金・インフレなど)から経済学を考える内容となっており、第2・3部は経済を行う主体である「人」について倫理・思想面から考察を行っている。
著者の結論は「経済学が力を発揮できるのは、その論理を用いて説得が可能な価値選択以前の段階までであり、それ以降は政治的な選択に任すほかない」(p.238)という、一見すると身も蓋もないものである。ただ、経済の主体である「人」が、矛盾した二つの欲求を望む「二重思考」から自由でない以上、その行動を理論化することには限界があるのは当然であろう。むしろ重要なのは、ある経済政策について、どこまでが経済学の「論理」に拠るもので、どこからが「政治的な選択」に拠るものなのかを見極める眼を持つことである。
本書は、何か斬新な主張を展開しているわけではないが、経済学に興味を持たせる様々な「キッカケ」を提供してくれる一冊であり、非常に勉強になった。 -
Posted by ブクログ
タイトルの通り、時間的には第二次大戦終戦から現在まで、空間的には米欧、日本、アジア、ソ連(ロシア)・東欧、アフリカ、南米まで全世界をカバーし、経済史を鳥瞰する試み。
著者自身、はじめに断っているように、厳密な通史の形はとっていませんが、わずか350頁ほどの新書で、これだけの広い範囲に亘る経済の変遷のイメージを大掴みできるだけのクオリティがあります。
あまりに対象範囲が広いので感想を書くのもなかなか難しいところですが、特に印象に残ったところをピックアップすると以下2点。
戦後、ソ連・東欧、中国をはじめ、世界中の多くの国・地域で計画経済を運営しようとの試みが実行されたが、全て失敗に終わった。
最終的にはソ連邦解体やベルリンの壁崩壊により終焉を迎えるが、それよりもずっと前の段階で破綻をきたしていた。
その根本的原因は、経済とは本質的に不確実なものであり、中央の計画当局がそれをコントロールすることは不可能であったということに尽きる。
現場の人間しか分かり得ない個別具体的な知識を中央当局は知り得ず、適切な資源配分は不可能となり、配分は政治的に決定される。
現場の個別具体的な知識を「価格」を媒介にして情報流通させるのが「市場」の役割であり、その意味で市場経済は万能ではないものの、計画経済に勝る理由があったのです。
もう一点。
現在、ドルの地位低下、基軸通貨としての資格喪失を論じるのがトレンドとなっています。
米国の、イラク戦争開戦を巡る横暴的な姿勢やサブプライム危機を招いた行き過ぎた金融資本主義に対する批判から、米ドルの地位低下を「ざまあみろ」的に歓迎する空気がどこか漂っている印象があります。
が、こうして歴史を振り返ってみると、戦後復興(とりわけ欧州復興)に果たした米国の役割は多大だった(マーシャルプランなど)。
また、米国は、意図的に適度な輸入超過を作ることで、諸国のドル不足を防ぐという、基軸通貨国としての責任を果たしてきた(もちろんそれを常に完璧にこなしてきたわけではなく、それゆえプレトンウッズ体制は崩れていったわけですが)。
そうした大きな役割を担うことで、米国自身見返りとしての覇権を得てきたわけではありますが、基軸通貨国の責任とはきわめて重いものであり、米国が凋落したとして、その代りを誰が担えるのか?
米国を嗤えば済むという単純なものではないということです。 -
Posted by ブクログ
著者は「経済学に何ができるか?」という問いに明確な答えは、出していない。重要なのは、経済政策における経済学の限界を知ることだ。現代のミクロ経済学の主流は、「合理的で独立した自由な個人」を想定することから出発する。しかし、これは人間類型のひとつを代表したモデルにすぎない。したがい、経済理論と政策の関係について、我々は常に用心深くあらねばならない。
そして、本書の冒頭に著者は「むしろ理論の役割を限定することによって、その力を適切に発揮できるようにするためである。理論は、我々に何を示し、実際の経済政策の運営のどの段階までの知恵を授けてくれるのかを反省することである」と断言する。経済学の限界を知ることによって、我々は経済学の役割を知ることができるのだろう。
本書は経済学者の猪木武憲さんが朝日新聞に1年間連載されたコラム「わかりやすい経済学」で取り上げたテーマを中心に、書き下ろされた新書。ただし、本書は、難解な部類に入る本と思う。
著者は「自分の仕事が人の役に立っているのだろうかとふと考えたことが幾度かあった」。したがい、本書については、経済学者の著者が経済学の限界を、どう考えているのか、そしてどう限界を克服するのか、その訴えに耳を澄まし理解することが、正しい読み方と思う。
1日1章のペースで読んだが、充実した読書体験だった。★4つ。
また、同じ著者の「戦後経済世界史」は★5つのお勧め。
なお、最近、インドネシアでは毎年の最低賃金をインフレ率と経済成長率の合計値で規定するという大統領令が発効し、労働組合は猛反発している。おそらく、定昇分とベアの理論から、政治家が安易に考えた足し算と思うが、これこそ、シュンペーターが「リカード的悪弊」と呼んだ「単純化され抽象化された理論をそのまま現実の政策に当てはめようとする安易な発想だ。 -
Posted by ブクログ
戦後(WWI後含む),世界で起こった経済に関わる制度や出来事などをほぼ全て網羅する本書.
TwitterやNaverでも"中公新書ベスト◯"でよくよく取り沙汰されていますが,確かにそれに見合うだけの内容を備えています.
戦後・現代史や経済について考える時にレジュメ・辞書的にも使える便利な本のようにも思います.
内容としては,経済から見た各国の戦後史という史学的なものから,経済における政治や統治機構の役割・関係という政治的な話,また第三世界やアジア・BRICsなど新興国の発展度合いや方法というように,あらゆる角度のトピックについて書かれてあるので,全て学びきるのは難しいでしょう.
ただ,一つ一つのトピックとして,歴史的事件と経済の関わりや国際的な問題など,キーワードとしては備えている知識を,互いに繋げてくれるという良さがあり,興味深く読み進められました. -
Posted by ブクログ
アダムスミスの道徳感情論やフランク・ナイトを軸に現在の経済の問題を考えていく。経済学の理論よりも社会学・哲学に理論の方が多いんじゃないかというくらい後者の方がよく引用されている。竹内洋先生が推薦する本だけあるなという感じ。
「順序立てた論理」(=経済理論)。これだけでなく、「気持ちよさ」など精神的な無形の要素(=善き経済政策)の必要性も説く。そして専門家は、(各々違うかもしれないが)モデルを通し、回答する。アマチュアは健全な価値観と判断能力を持ってそれを考える。もちろんここで対立や相克が生まれるのは避けられないが、両者、議論を持ってなんらかの合意に達する必要がある。このようにそれぞれの役割があり、いずれも文明社会に住む人間の義務と責任であるとも説く。
経済還元主義の不完全性をつく、そんな一冊。 -
Posted by ブクログ
経済理論と経済政策を峻別し、理論を現実に単純に当てはめようとしないことが重要である。経済政策は経済問題だけでなく、多分に政治的な要素から決められるからだ。また、経済学は社会の経済問題に一刀両断に答えられるものではない。むしろ明快な主張には用心すべきであると解く。
経済理論はもちろん重要であるし、学ぶべき順序もある。また、経済学は万事を経済変数で説明する(経済還元主義に基づく)学問ではない。経済還元主義と経済学的なアプローチは全く異なるものだ。人間の持つ理性、情念、倫理観といったものに目を向けるとともに、自由市場は尊重しつつ、市場の有効性について批判的に再吟味することが重要である。
現代社会の最大の問題点は、価値の相克であり、倫理の問題である。そして、社会問題の解決には、価値観についての合意が重要となる。経済学は、価値選択以前の問題について、理論的に分析することはできるが、価値自体を決めることはできない。その意味では、経済学の視点だけでは強い主張は行えないし、また、そのような主張をしない品性が求められる。 -
Posted by ブクログ
さまざまな「価値」がぶつかり合う、現代の自由社会。その結果、様々の難題が私たちの前に立ちはだかっています。
人間にとって正義とは、幸福とは。
著者は、経済学の基本的な論理を解説しながら、問題の本質に迫る。
デモクラシーのもとにおける経済学の可能性と限界を問い直す試みがなされたものである。以下、内容。
序章 制度と政策をめぐる二つの視点
第Ⅰ部 自由と責任
第1章 税と国債 ― ギリシャ危機を通して見る
第2章 中央銀行の責任 ― なぜ「独立性」が重要なのか
第3章 インフレーションの不安 ― 貨幣は正確には操作できない
第Ⅱ部 平等と偶然
第4章 不確実性と投資 ― 「賭ける」ことの意味
第5章 貧困と失業の罠 ― その発見から現在まで
第6章 なぜ所得格差が問題なのか ― 人間の満足度の構造
第7章 知識は公共財か ― 学問の自由と知的独占
第8章 消費の外部性 ― 消費者の持つべき倫理を考える
第Ⅲ部 中庸と幸福
第9章 中間組織の役割 ― 個人でもなく国家でもなく
第10章 分配の正義と交換の正義 ― 体制をいかにデザインするか
第11章 経済学的厚生と幸福 ― GDPを補完するもの
終章 経済学に何ができるか
*人の世をはかる尺度は百家争鳴ですが、自分が納得できる一つの思考パターン「型」を持っていれば、人間、この世を上手に生きれるのではと思います(笑)。