猪木武徳のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
取り扱う題材の範囲が広い本は、初学者が概要を把握するために詳細を省いたものと、習熟者が効率よく復習するために詳細を省いたものがあるが、本書は後者。
いくら戦後に絞ると行っても、世界の60年を新書一冊で語るのが難しいのは当然。因果関係が見えにくい政治と経済においてはさらに難易度が上がる。
例えばモルゲンソープランが東西対立の一因であったとかマーシャルプランが欧州を救ったみたいな、経済政策がストーリーを作ったと明確に語られるわけではないのだが、そもそも歴史をストーリー抜きで理解するのは難しい。
であれば、間違っている前提として乱暴なストーリーで概要を把握しつつ、その後各要素について詳細を抑えるのが良いだろう。
その意味で本書は、アルゼンチンやフランスの内情といった馴染みにくい部分の詳細は他に任せ、戦後日本の猛追や社会主義経済各国の没落、東アジアの成功とアフリカ大陸の停滞といったわかりやすい流れを抑えるには悪くないだろう。
ただし、間違っているという前提を忘れてしまっては痛い目を見るかもしれないので注意が必要。 -
Posted by ブクログ
経済学者が自由について書いた本。雑誌「考える人」に連載されたものを纏めたもの。自由について哲学的歴史的な分析、自殺、宗教、教育、言論、経済などいくつかの視点から簡潔にまとめている。理解しやすいところと理解できないところがあるが、雑誌に連載された内容だけに読みやすいものの、浅く広い内容となっており物足りなさもあった。
「現代では、自由以外の価値、たとえば平等が70~80年前よりもさらに重みを増している」p28
「(言論の自由(古代ギリシア))対話こそが真理に到達する主要な方法であるということを発見した。自由に語る権利は、真理への接近と善き社会の形成にとって欠くべからざる手段のひとつだと気付いたのである」p70
「名誉の毀損、プライバシー侵害、醜い自己顕示、虚偽の広告などの行き過ぎにより真理の核心が見えなくなれば、言論の自由は害悪を生む。自由と放縦の境界線は、言論の自由がもはや真理の手続きとして尊重されなくなったときにあらわれる」p71
「(自殺と自由)すべての権力と権力に伴う情操を奪い取られたまま生きながらえるペルセウスに対して、ローマ人の高潔さからしてみれば、どうしたら人はかような不運を我慢して生きながらえるほど卑屈な気持ちになれるのか了解に苦しむのである」p84
「「政治は汚い、政治とは関わりたくない」という言葉を耳にするが、そう言う人は自分だけが清く正しければよいという利己的な偽善者であろう」p112
「(オーエン)学問を修めれば修めるほど、ますます人間が単純で退屈になる」p153
「(ヘイト・スピーチ)ムチの一打は傷をつくらん、舌の一打は骨を砕かん(ベン・シラの知恵)」p164
「(大学の存在価値)技術変化の多い社会で直接必要とされる知識や技能は、大学教育によってではなく、実際の仕事を通して獲得されるものがますます多くなる。したがって、大学は、生半可な職業教育を施すのではなく、むしろ国際的な知的競争の場で求められる言語表現を中核とした教養教育に力を注ぐことによって比較優位を保つことができるであろう。そうであれば、古典を含む人文学や社会科学の遺産をよく学び、豊かな想像力をもって自らの考えを、まず母語で正確に豊かに語る能力、説得力のある文章を書く力を養うこと、そして数理的・論理的思考の基礎的訓練を施すことが、これからの大学の教養教育で重視されるべきだということになる」p231