【感想・ネタバレ】戦後世界経済史 自由と平等の視点からのレビュー

あらすじ

第二次大戦後の世界は、かつてない急激な変化を経験した。この六〇年を考える際、民主制と市場経済が重要なキーワードとなることは誰もが認めるところであろう。本書では、「市場化」を軸にこの半世紀を概観する。経済の政治化、グローバリゼーションの進行、所得分配の変容、世界的な統治機構の関与、そして「自由」と「平等」の相剋-市場システムがもたらした歴史的変化の本質とは何かを明らかにする。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

戦後世界経済史を経済学の発展、共生関係を螺旋階段のように描写している。戦争に至る大恐慌、マーシャルプランや朝鮮戦争の復興/有効需要の必要性、高度経済成長、オイルショック。スタグフレーションとマネタリスト、冷戦体制の崩壊、各種金融危機と中央銀行のより包括的な市場へのアプローチ。

0
2024年06月16日

Posted by ブクログ

2009年に出版された本です。
全体としてみると人間社会は良くなっているのかな、と思いました。
自由と平等の観点から、という副題のとおり、自由が行き過ぎれば平等が損なわれ、平等が行き過ぎれば自由が損なわれれるという感じなので、どのようにバランスをとるのか、というのが問題だと思いました。
市場で価格が決まる、ということがとても大事なことだとわかりました。

0
2024年02月16日

Posted by ブクログ

新書本ながら小さな文字で約380ページにわたり戦後の世界経済史について簡潔にまとめた本。戦後を10~20年ごと区切り、各地域を網羅しつつ、機械的にではなく適当なテーマを設定しつつ、わかりやすくまとめられている。私も大学で経済を学んだことがあるが、世界経済史については、さまざまな多数の書籍・文献を読んだ(読まされた)経験があり、苦労した思い出があるが、この本は、とてもわかりやすく、大事なところをうまくまとめていると思う。特に、全世界がほぼ網羅され旧社会主義国、東南アジア、アフリカまで言及されておりとても勉強になった。著者がむすびで述べている、「政治的安定、私的所有権の確立、法の支配が、経済的に豊かな社会の基本的前提となる。」が、この本における結論であろう。いずれにしても、戦後世界経済史の教科書といえる名著であると思う。

0
2018年12月08日

Posted by ブクログ

戦後経済史のまとめ。東側の復興についてはよう知らんかったのでありがたい。ハンガリー動乱に至る同期が政治的なモノだけでなく経済的なものもあったとは。副題の「自由と平等の視点から」は今後も重い命題

0
2018年10月14日

Posted by ブクログ

中公新書の2000番だけあって、かなりの力作で、読み応えがあり内容が豊かだが非常に読みやすいという、新書の手本のような本だった。

がしかし、新書ではなく選書や単行本といった形でグラフ等も省かずに書かれたものを読んでみたかった。


ちなみに中公新書の1000番目は入江 昭「新・日本の外交」です。

0
2013年05月12日

Posted by ブクログ

戦後世界経済史の概観をつかめる。一度読んですぐわかるわけじゃないけれど、ペンキを塗り重ねるように、何度も歴史に関する本を読むことで、だんだんとわかってきた気がする。

20世紀前半世界で最も高所得だったアルゼンチンが20世紀後半に財政破綻したり、国家破産した韓国の企業が世界を席巻したり、数十年あれば本当にいろんなことが起きうるんだなぁ

0
2013年03月10日

Posted by ブクログ

学者、教授としての著者の良心が凝縮された 名著と言って良いと思う。テキストとしての経済史としてもわかりやすい。著者はまず5つの視点、「市場と政府の折り合い」「グローバリゼーション」「所得分配の不平等」「経済統合 」「市場の信頼」を論じているが、これは読む側にとっては格好のガイダンスになると思う。戦後の様々な経済的事象を経済学者、政治家の意見とともに紹介、著者の理解も述べられ、読書の楽しみみを味わえた。ただし、平等化と自由への侵食の議論は消化不良だったようにも思える。いずれにせよ必読の★5。

0
2013年02月10日

Posted by ブクログ

タイトルの通り、戦後から現代までの、世界各国の歩みを経済史の視点で概観している。扱う地域は非常に広く、社会主義国、アフリカや南米などの新興国も取り扱われている。また、著者がこの広汎なターゲットをいかに見るか、という定まった視点が冒頭にきちんと提供されている。扱うテーマの性質上、地域や時代が点々とするが、決して教科書的な記述に終始せず、著者の与えた視点でもって経済史として概観することができる。
5つの視点とは、下記である。
・市場化と公共部門の拡大のせめぎあい
・グローバリゼーションの進展と、それによる変化
・平等/公平性、富の分配に対する考えの変化
・世界的な統治機構の果たした役割・機能
・市場システムのデザインとその変容

概観であるがゆえに、細かな議論は前提知識の足りない評者には、理解できない点も多くあったものの、本書を通し、『点』でしか認識していない事象を、同時代の他の地域と横串で見たり、前の時代とのつながりを概観することで、これまでよりも少し視野が広がる思いがする。
・同じ戦後からのスタートを歩んだ国々でも、南米ではハイパーインフレ、アフリカでは貧困、アジアは急成長。その歩みの違い。
・社会主義経済と欧米の市場主義国が相互に影響しあうことで、市場主義国の市場システムも、社会主義国の統制体制もそれぞれゆらいできた。
・戦前の不況、戦後の低迷、アジアの通貨危機、きっかけや経緯の比較。

読みとおすのは気力を要するが、それ以上の価値は十分にある。

0
2012年03月31日

Posted by ブクログ

非常に素晴らしい内容の本です。
新書としてはボリュームがあるので、読むのに時間がかかりました。

戦後世界経済史を非常に簡潔にまとめており、専門用語も少なく門外漢の自分でも難なく読むことができました。

戦後の世界経済を様々なポイントごとに解説しており、その際の各主要国や地域ごとに具体例から解説は分かりやすいと思います。

経済史に興味のある方は是非読まれると良いかと思います。
また、内容的にも大学等の高等教育の一般教養として知っておくべきことであるとも感じました。
#私の場合、学生時代に受けた経済の下らない講義より全然ためになりました。

0
2011年10月14日

Posted by ブクログ

非常に良い本です。

中学生とか高校生とか、最低でも大学の教養課程で取り上げて貰いたいレベル本ですね。理系だからとか文系だから、経済史は研究の対象ではない…とか言わず、教養・常識の範疇として知るべき近代史が経済の観点から綴られている良書です。

戦後の経済発展について、少なくとも日本人の一般的な知識に反することが沢山載っています。例えば東ドイツの経済力、西ドイツに対する政策の変遷、日本の経済成長率と他国の比較、東西ヨーロッパからラテンアメリカ、アフリカ、アジア全域に到るまで、戦後の経済政策、内政・外政、その経済的な解釈や統治・成長の軌跡などなど…学ぶことが非常に多いです。

370P程ですが、非常に詰まっているので一回読むだけで使える知識にするのは難しいでしょうが、これを理解することで近代史の流れを掴む助けになるでしょう。

また、この自由と平等の観点から、というタイトルにするまとめが最後に綴られています。本書では常に社会主義・市場主義、政府と市場の関係性とその解釈、歴史的結果について触れており、戦後経済の広範囲な実験結果を俯瞰し、筆者は、自由と平等の二律背反について意見を述べています。

政治家は全員、この程度の知識を持っているべきなのでしょうが…どれぐらいがこの本れべるの知識を習得しているのか。

0
2011年07月07日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦後の世界の経済の概観。新書にしては、非常に読み応えのあるボリュームと内容だ。地域的には、日米欧のいわゆる先進国・旧社会主義経済圏・アジアやラテンの新興国・旧植民地、出来事的には、戦後復興・オイルショック・東アジアやASEAN等の新興国の発展・社会主義経済の破綻・金融破綻、等を扱っている。筆者は学者であり、これらの変化や出来事に対して、理論的なアプローチを試みる立場にあり、実際に、いくつかの学問的な立場を紹介したりもしている。素人的には、今日のグローバル化された経済が相互に深く関係していること、また、経済が今日の姿になる経緯というのが、一言では紹介できないほど、複雑な相互関係の中から生まれてきたことものであること、それをシャープな切り口で分かりやすく説いてくれている、という意味で、興味深い本であった。

0
2011年07月25日

Posted by ブクログ

タイトルの通り、時間的には第二次大戦終戦から現在まで、空間的には米欧、日本、アジア、ソ連(ロシア)・東欧、アフリカ、南米まで全世界をカバーし、経済史を鳥瞰する試み。
著者自身、はじめに断っているように、厳密な通史の形はとっていませんが、わずか350頁ほどの新書で、これだけの広い範囲に亘る経済の変遷のイメージを大掴みできるだけのクオリティがあります。

あまりに対象範囲が広いので感想を書くのもなかなか難しいところですが、特に印象に残ったところをピックアップすると以下2点。

戦後、ソ連・東欧、中国をはじめ、世界中の多くの国・地域で計画経済を運営しようとの試みが実行されたが、全て失敗に終わった。
最終的にはソ連邦解体やベルリンの壁崩壊により終焉を迎えるが、それよりもずっと前の段階で破綻をきたしていた。
その根本的原因は、経済とは本質的に不確実なものであり、中央の計画当局がそれをコントロールすることは不可能であったということに尽きる。
現場の人間しか分かり得ない個別具体的な知識を中央当局は知り得ず、適切な資源配分は不可能となり、配分は政治的に決定される。
現場の個別具体的な知識を「価格」を媒介にして情報流通させるのが「市場」の役割であり、その意味で市場経済は万能ではないものの、計画経済に勝る理由があったのです。

もう一点。

現在、ドルの地位低下、基軸通貨としての資格喪失を論じるのがトレンドとなっています。
米国の、イラク戦争開戦を巡る横暴的な姿勢やサブプライム危機を招いた行き過ぎた金融資本主義に対する批判から、米ドルの地位低下を「ざまあみろ」的に歓迎する空気がどこか漂っている印象があります。
が、こうして歴史を振り返ってみると、戦後復興(とりわけ欧州復興)に果たした米国の役割は多大だった(マーシャルプランなど)。
また、米国は、意図的に適度な輸入超過を作ることで、諸国のドル不足を防ぐという、基軸通貨国としての責任を果たしてきた(もちろんそれを常に完璧にこなしてきたわけではなく、それゆえプレトンウッズ体制は崩れていったわけですが)。
そうした大きな役割を担うことで、米国自身見返りとしての覇権を得てきたわけではありますが、基軸通貨国の責任とはきわめて重いものであり、米国が凋落したとして、その代りを誰が担えるのか?
米国を嗤えば済むという単純なものではないということです。

0
2019年01月06日

Posted by ブクログ

戦後(WWI後含む),世界で起こった経済に関わる制度や出来事などをほぼ全て網羅する本書.
TwitterやNaverでも"中公新書ベスト◯"でよくよく取り沙汰されていますが,確かにそれに見合うだけの内容を備えています.
戦後・現代史や経済について考える時にレジュメ・辞書的にも使える便利な本のようにも思います.

内容としては,経済から見た各国の戦後史という史学的なものから,経済における政治や統治機構の役割・関係という政治的な話,また第三世界やアジア・BRICsなど新興国の発展度合いや方法というように,あらゆる角度のトピックについて書かれてあるので,全て学びきるのは難しいでしょう.
ただ,一つ一つのトピックとして,歴史的事件と経済の関わりや国際的な問題など,キーワードとしては備えている知識を,互いに繋げてくれるという良さがあり,興味深く読み進められました.

0
2015年06月15日

Posted by ブクログ

戦後世界史というものすごい広い分野について書いてある。主軸は、保護主義の台頭、社会主義の失敗、グローバル化の波、といった大きな歴史的社会体制の流れに対して、個々の国がどのように巻き込まれ、そして対処していったかということ。もう一回読みたいね。

0
2013年10月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

        -20090731

自由と平等の視点から、と副題。第2次大戦後の60年はかつてない急激な変化を経験した。そのKeywordは民主制と市場経済。本書では「市場化」を軸にこの半世紀を概観、経済の政治化、Globalizationの進行、所得分配の変容、世界的な統治機構の関与、そして自由と平等の相剋―市場Systemがもたらした歴史的変化の本質とは何か。

0
2013年03月29日

Posted by ブクログ

第二次世界大戦後の世界経済を概観するという、ある意味では恐ろしく挑戦的な内容の一冊。非常にまっとうな視点から書かれているので、安心して読み進めることができる。ただ、残念ながら、2009年の世界経済と、2012年の世界経済は、あまりにも多くの点で異なってしまっている。今となっては、やや古いか。

0
2012年03月04日

Posted by ブクログ

自由主義経済と社会主義経済の比較を中心に、広く浅くまとまっていると思う。しかしながら、この分野についての知識が非常に乏しいため、特に導入部分が難しく感じた。おそらくかなり噛み砕いてわかりやすくまとめられているのだろうが…。

個別の事象について、いくつか専門書にあたってからもう一度読み直してみたいと思う。

0
2012年03月01日

Posted by ブクログ

 参考文献の紹介だけで20ページが割かれている点からだけでも、本書が分厚く、十分な根拠に基づいて書かれていることが読む前からでもわかる。
 実際の内容自体、そのタイトルが表す通り、戦後経済関して、日本、アメリカ、中国、ヨーロッパ、東欧、東南アジア、南米等、世界中の主要国に焦点を当て、戦後から現在にかけての経済の変化について客観的に説明されている。
 戦後の世界経済を理解する上で、必要最低限の情報を本書は提供している点で、世界経済を学ぶ入門書として推薦したい本である。

0
2012年02月03日

Posted by ブクログ

これ読めば、世界の状況がつかめると思う。あと、マクロの知識がない人はこの本とマクロ入門書を読み合わせれば、すぐに頭に入ると思う。ただ、マクロの知識があった方が面白く読める。

FXトレーダーの視点から役に立つ部分も一部ある。

でも最後の章はイマイチだったので読み飛ばした。

0
2012年01月14日

Posted by ブクログ

戦後の世界経済がどのように変遷していったのかを簡潔にまとめてあるので非常に良かった。大学の教養過程で経済史を学ぶならばそんなに専門的な知識はいらないのでオススメだと思う。
自分が暮らしてる国の政治や経済のことを考えるときに土台として知識や情報が不可欠であり、発展していった国は人的資本のレベルが高く、結局は国の未来を考えるとき教育ってのは外せないことだと実感。

0
2012年01月10日

Posted by ブクログ

 クルーグマンがアジアを全要素生産性から見て、アジアの成長は資本投資によるものではなく、停滞を象徴しているとしていた分析は、誤りであるとの指摘は筆者も同意する。著者による、この指摘は、鋭いと思うし、またノーベル経済学賞を採ったからといってすべての見解が正解ではないということにも通じる。
 
 野口旭、竹森俊平、高橋洋一などによるとアジア通貨危機は、国際経済の通貨の安定(固定相場)、金融政策の自由、資本移動の自由の三つは、経済原則として、同時に実現できない。通貨の安定のための金融政策は、外貨安の場合、外貨を外国証券を購入する形で外貨準備高を引き上げるための政策に割り当てられ、金融政策の自由は拘束される。通貨の供給が増えて、これにより市中通貨供給量が増え、国内景気は過熱、インフレも過熱する。固定相場制を採用すれば、資本移動の自由を諦める、資本移動の自由を禁止する以外には金融政策の自由を採用できない。中国は固定相場制、金融政策の自由を確保するために、資本移動の自由の禁止を採用している。
 しかし、資本移動の自由の禁止政策は、国内的には禁止、規制の網をかいくぐるブラックマーケットが反社会的集団によって官僚組織との結託によって生まれる。国外の投資、投機筋の資本流入の圧力が、大きくかかることになる。なぜなら、中国は貿易黒字国であり、その額と同等の額が年間ベースで資金流入があるからである。貿易黒字とは、国内の総供給が総需要を上回るときに起きる現象で、供給量が余ったときに海外に輸出されるからだ。

 話題がずれたが、新書の形で手軽に読める割に、非常に大きな視点で描かれている処が非常に面白かった。たまにはこういった類の経済史を読んでみるのも気晴らしにはいい・・・。
 
 

0
2012年03月20日

Posted by ブクログ

戦後経済の5つの特徴
・公共部門の拡大
・グローバリゼーション
いかなる産業も集積のメリットが実現する方向へ動くが、その利益を阻む最大の障害は「距離」。地球が小さくなったり、言語が同一になったり、歴史を完全に共有しない限り、グローバリゼーションは必ずしも世界の均質化をもたらすものではない。
・所得格
日本では年代内格差よりも世代間格差のほうが大きい。
・グローバルガヴァナンス
・市場の設計と信頼
人類は知恵を用い、技術を開発しながら巨大な富を築いて来たが、我々の視野は狭くなり、お互いの信頼感を弱めるような風土を作り上げた。信頼をベースにした自由な経済活動こそ、いつの時代も健全な経済発展に重要だ。

戦中の公の利益のみの追求から、戦後の経済発展と個人主義の拡大により、公共精神の重要性への意識が希薄化していった。
戦後ドイツへのモルゲンソープラン→ドイツの非軍事化と重工業の撤去による懲罰的対独政策
マーシャルプラン→戦後欧州経済の立て直しを目的としたアメリカの経済・技術援助プログラム
戦中既に、金本位制の硬直的、デフレデバイスがはっきりと現れ始め、保護貿易主義で分断されてしまった世界貿易を、いかに自由で多角的な通商システムとして改革するかが検討された。

戦後アメリカのインフレーションは、福祉プログラム実現(アメリカの中に貧困層が存在することを示唆する論文の流行から、この政策が打ち出された)のための巨額の財政支出、ベトナム戦争への財政負担によって進行した。このときの米国は既に資源の完全雇用状態にあり、政府支出の上昇に割り当てられる貨幣供給の増加が生まれなかったため、インフレが進行した。
このインフレが、固定相場制に基礎を置くブレトンウッズ体制の終焉を招く。ブレトンウッズ体制は、米国を国際収支赤字国にしながら、米ドルを世界に安定供給し続けるシステムとして機能していたが、米ドルのインフレによってアメリカ国内のドルが過大評価され、価値の固定が成り立たなくなるからだ。
さらにアメリカの貿易収支が悪化し続けると、米ドルの信用が無くなっていく。

戦後西ヨーロッパは驚くべき速さで経済の回復を果たした。西ドイツの通貨改革による価格統制の撤廃、自由市場での取引が活発化したからだ。
イギリスは、サッチャーが登場する前までは、市場経済を重視しつつも公共サービスの提供を重視する混合経済体制(主要産業の国有化と国民皆保険制度)へ移行する。いわゆるケインズ理論だが、これがうまく行かず、拡張政策によりインプレを招き、輸入が増加、国際収支の悪化を退治するために緊縮財政を招くという悪循環を生み出し、サッチャー登場前までのイギリス経済の低迷を招く。
フランスは、支持的計画システムから来る国民の一体感のもと、60年代まで効果的に成長を果たす。
スウェーデンは古くから福祉国家として、自由な経済活動と手厚い社会保障制度の国として機能してきたが、そうした労働条件と処遇の良好さを支えているのは、とんでもない税金の高さと、社会主義国家顔負けの再分配システム、人種の画一性にあった。
このスウェーデンモデルも、石油危機に対しては無力であり、インフレーションの進行によって高福祉高負担システムの問題点が表面化し始めた。

農地改革は、戦後の経済発展にとってきわめて重要である。耕作地が自分の所有地になり農民の営農意欲を刺激することで、利潤を生み、それがいずれ軽工業への労働力移動→重工業の発展につながるから。
戦後、東アジアの国の中で、西欧の植民地となった国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、北朝鮮)はいずれも社会主義体制を取り、ならなかった国(日本、タイ)は資本主義要素が強かった。

社会主義経済学下では、消費財産業を犠牲にして重工業化を強要するきらいがあり、国民の生活水準が上がらないまま無計画な投資を断続的に行う傾向にある。
経済的な地位改善と政治的決定権限の癒着が強すぎるのだ。
また、あらゆる規模の経済においても不確実性は存在し、変化は常に起こっているため、現場の人間が有する具体個別の知識を、中央が完全に把握することはできない。そして、市場経済では、その変化と不確実性を全て知る必要がないメカニズムーー価格によって自主計画を組むことができるのだ。

【中南米】
中南米経済は、土地や富、所得の分配の不平等が目立つ。原材料の輸出国から、保護主義下で企業を国有化し、工業国を目指すというプロセスが多い。

【アフリカ】
植民地国が多く、ほとんどは経済の政治化、悪しき政治により進歩が阻害されている。宗主国から経済や社会制度を移入し統治した国のほうが、収奪するために支配された国よりも、経済発展が早かった。

石油危機の勃発
イスラエルとの戦争をしていたアラブ諸国が、親イスラエルである米国と西欧諸国への原油輸出価格を釣り上げた。西欧諸国だけでなく、コメコン諸国にも波及する。世界的なスタグフレーション(インフレと高失業率)により、世界経済の停滞を生んだ。

この石油危機後、世界各国は小さな政府へと舵を切り始めることになる。
女性が長期にキャリア形成する仕事につくという動きは、70年代以降から急速に広まっており、そこまで昔からの現象ではない。

いかなる経済も、投資をファイナンスできるだけの貯蓄があるレベルに達すれば、「何らか」の契機を得て、自然と経済は上向きになり始める。
アジアNIESの経済成長の一つは、自由貿易体制化での工業製品の輸出によるものだ。農業・軽工業で獲得した外貨を重工業向けの投資に割り振り、輸出を志向していく戦略である。日本が主導して行った直接投資もこれを後押ししている。

ベトナムや中国といった社会主義国家は、農地改革や市場重視の政策によって高度経済成長を得た。

1980年は、石油危機後の調整期間を経て、世界の経済活動の枠組みが新自由主義に大きく転換する。規制緩和・民営化・税制改革(個人・法人税率の引き下げによる労働意欲を高める)などだ。

1980年代の途上国の債務危機は
→国際的な民間銀行が、途上国に金を貸し、輸出部分の拡大を図る
→外貨で返さねばならぬため、輸出不振になると返すため更なる借り入れに陥る。

政治的平等化の進展は、ある点を過ぎると、結果として自由が損なわれ、経済発展にもはやプラスの影響をもたらさなくなる。
人的、物的資本への投資から経済成長へ、そしてデモクラシーなどの政治制度の整備、確率への展開のほうが因果関係として重要。

0
2020年06月18日

Posted by ブクログ

取り扱う題材の範囲が広い本は、初学者が概要を把握するために詳細を省いたものと、習熟者が効率よく復習するために詳細を省いたものがあるが、本書は後者。
いくら戦後に絞ると行っても、世界の60年を新書一冊で語るのが難しいのは当然。因果関係が見えにくい政治と経済においてはさらに難易度が上がる。
例えばモルゲンソープランが東西対立の一因であったとかマーシャルプランが欧州を救ったみたいな、経済政策がストーリーを作ったと明確に語られるわけではないのだが、そもそも歴史をストーリー抜きで理解するのは難しい。
であれば、間違っている前提として乱暴なストーリーで概要を把握しつつ、その後各要素について詳細を抑えるのが良いだろう。
その意味で本書は、アルゼンチンやフランスの内情といった馴染みにくい部分の詳細は他に任せ、戦後日本の猛追や社会主義経済各国の没落、東アジアの成功とアフリカ大陸の停滞といったわかりやすい流れを抑えるには悪くないだろう。
ただし、間違っているという前提を忘れてしまっては痛い目を見るかもしれないので注意が必要。

0
2020年03月29日

Posted by ブクログ

戦後世界経済学史と勘違いして、気合を入れて読んでいたら、よくみたら戦後世界経済史だった。網羅的に書かれていて、新書の割にはページ数も多かったのだが、読みやすかった。社会主義的、計画経済的な体制なり政策は失敗するということが戦後世界各地で多く見られたと言うのが総括だろうか。

0
2021年08月08日

Posted by ブクログ

戦後の世界の経済がいっきに判る気がする。難しい話なのだが、意外とすいすい読めた。この後も、世界の経済は激変してきているが、これまでの流れを知る上でも良い。

0
2018年02月10日

Posted by ブクログ

流読。
世界経済の主要な出来事、流れ、各地域、各国の経済発展の流れが一通り眺められる。

理解するには個別理解が必要。

20世紀の課題については現在に通じるもの、この時点では現れていないものがある。

0
2017年05月20日

Posted by ブクログ

タイトル通り、戦後の世界史を経済面から通観する内容。
政治の安定が経済発展にとっての大前提であること、経済における自由と平等を追い求めた各国の苦闘の歴史。

0
2014年03月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この1年で出た経済本の中ではかなり新自由主義に寛容な立場と受け止めた。「貪欲を批判するだけでは始まらない」と。それはそうかもしれないが、だからといって、貪欲を批判しなくてよいことにはならないだろう。それにしても、の貪欲さを見せ付けられるとどうにも説得力が無い。

0
2014年01月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

題名の通りの内容で、世界経済を俯瞰して理解するにはいいと思う。経済の専門家でなければ、あまり深く考えずに、ざっと流し読むくらいでちょうどいいかな。自由と平等が両立し難い点は難しい問題だ。

0
2013年06月05日

Posted by ブクログ

ようやく読み終わった~。世界の状況を経済面から概観・俯瞰できるよい本でした。ところどころ理解できず、己の浅さを知りますが。

0
2011年12月11日

「ビジネス・経済」ランキング