遠山美都男のレビュー一覧
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終章にて著者曰く(241p.)、
「江戸時代に始まった国学は、『古事記』『日本書紀』や『万葉集』などのうち、とくに『古事記』を読めば(徹底的に読み込めば)、中国の思想や文化の影響をこうむる以前の日本の真の姿が明らかにできるのだと考えた。だが、本書において『日本書紀』の前半部分の叙述を取り上げ、いろいろと検討を加えた結果、国学者には残念ながら、ことに『日本書紀』は、それをいくら読み込んでも、歴史的な事実のかけらや、中国の思想・文化の日本固有の姿を拾い上げることはほとんど不可能であることが明らかになった。むしろ、『日本書紀』という歴史書は、中国の文化・思想の受容と摂取なしには、その骨格すら成 -
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本書は2003年から2004年に雑誌「エコノミスト」に連載されたものを書籍化したので、日本の歴史を「人事」を通して考えようとするもの。自分も何年かに一回は異動になっていたし、上司・部下にどのような人物が来るかで仕事のやり方が変わってくるので、組織人であれば誰しも人事にそれなりの関心を持たざるを得ないであろうから、テーマとして面白い。
良く知らなかったこと、特に興味を惹かれたもの
・「再就職」が厳しい中高年豪族~郡司の任命制度、試験プロセスが理解できた。
・「学閥」出身者の悲劇~菅原道真失脚について、他の学閥の嫉妬が原因であった。
・「実力主義」を育てた乱世~朝倉孝景と朝倉孝景条々の内容が -
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「武の人」であるとともに「文の人」でもあるという、われわれによく知られている天智天皇像が、持統天皇によってつくられたという著者の主張が語られている本です。
本書の前半では、『日本書紀』と『鎌足伝』にえがかれた天智天皇像について、批判的な検討がおこなわれており、あらためてわれわれの知っている天智天皇のイメージに対する疑問を提示するとともに、そうしたイメージがだれによってつくられたのかということを明らかにする必要があると主張します。
後半では、持統天皇の生涯をたどるかたちで、天智天皇の事跡がどのようなしかたで継承されていったのかということが論じられます。持統天皇は、夫である天武天皇から政治の手 -
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ネタバレ[ 内容 ]
神武以来、連綿と続く万世一系の皇統の歴史を綴った書物として尊重されてきた『日本書紀』。
戦後はそれに徹底的な批判が加えられ、王朝交替という、万世一系とは対立する古代史が提唱されるに至った。
本書は『日本書紀』の神武天皇から武烈天皇までの物語を精細に読み解き、その叙述を貫く主題・構想や歴史認識を鮮やかにあぶり出す。
律令制国家として新生した日本が描こうとした天皇と国家の歴史とはいかなるものか。
[ 目次 ]
序章 万世一系と王朝交替と
1 律令制国家と天皇―その誕生の物語(イワレヒコの東征―神武天皇;神々のむすめとの蜜月―綏靖天皇~開化天皇(欠史八代)
ハツクニシラス天皇―崇神天 -
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ネタバレ[ 内容 ]
聖武天皇には三人の娘がいた。
生涯不婚を定められ、孝謙天皇(重祚して称徳天皇)となって権力を振るった阿倍内親王。
光仁天皇の皇后でありながら、夫を呪詛したとして大逆罪に処された井上内親王。
恵美押勝の乱に加わった夫を失った後、息子たちの謀反に連坐、流罪とされて没年すら伝わらない不破内親王。
凄惨な宮廷闘争の背景にあったのは何か―。
皇位継承の安定のために人生を翻弄された三人の皇女の物語。
[ 目次 ]
序章 松虫寺の墓碑銘
第1章 三姉妹の誕生
第2章 それぞれの出発
第3章 塩焼王流刑
第4章 遺詔
第5章 道祖王、杖下に死す
第6章 今帝、湖畔に果つ
第7章 姉妹の同床異夢 -
ネタバレ 購入済み
結論は終章
終章から読むことをお勧めします。結論がそこにあり、それ以外は結論を強化する部分です。
古代天皇が実在したか?という質問に、それに答えることの意味を見出せないという点に共感しました。ときの国家が国書を編纂し、そこには当事者にとって一見不都合とも思える記述を記す?否、不都合だと感じることが現代の価値観に縛られている証拠だと本書は論じていると思う。国書=自国の正統性の主張に他ならない、との観念に従えば、その含意を読み解ける。本書の主張が証明される日が来るといい。