柿沼瑛子のレビュー一覧
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帯に書かれた「『私の身体はガラスでできている』と信じたフランス王」のような症例に対する野次馬的な好奇心から読み始めたが、妄想を抱いた彼らの生きた時代の背景や環境を深掘りしていくと、彼らと自分はたいして変わらないと思い知らされる。
特に、第6章で紹介されるマーガレット・ニコルソン。
18世紀のロンドンで内職をして暮らしていた彼女は、「自分は王家の正統な継承者であり、その財産を分け与えられるべきだ」と主張し、国王を襲った。
彼女のそれまでを見てみると、以下のようなことが分かる。
・事件当時、周囲からは「他人に迷惑をかけない、物静かで礼儀正しい人」だと思われていた
・教養があり、幼少期から高尚な文学作品に触れていた
・12歳でロンドンに出てメイドとして働き始め、優秀な働き手として自活できていた
・不祥事を起こし解雇されて以降、定職に就けず、裁縫の内職でやりくりしていた
・実の兄は「妹が頭がおかしくなったのはプライドのせいだ」と語った
現代日本に生きる自分に通ずる要素がありすぎる。
彼女の妄想は、能力を活かせば女性でも自立し社会的地位を築くことができるようになった18世紀のロンドンで、その地位から転落し、生活に困窮するようになったごく普通の女性による「自分を気にかけてほしい」という叫びであると著者は書く。
今は非常に運が良いことに、何不自由なく生活できているが、これができなくなったら。
本を読み教養を蓄える余裕があり、普通の会社員としてなんとか社会のレールに乗れて来てしまった自分は、その現実を受け入れられるだろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレハーレクイン人気作家によるクリスマスアンソロジー。
作風のそれぞれ異なる作家の作品が文庫本三冊のボリュームで、たっぷりと楽しめる。
☆情熱の聖夜と別れの朝 評価☆☆☆
偶然の出逢いが薄幸なヒロインに「クリスマスの奇跡」をもたらす。ヒーローが「俺様」ではないところも良かった。
☆愛と喜びの賛歌 評価☆☆☆☆☆
個人的には、この作品が一番良かった。不幸な火事で生涯、顔に癒えぬ傷を負った若き伯爵とうら若い孤児院長の純愛。
人の価値は美醜では決められないーとは、当たり前のように思えるが、現実にはなかなか難しい。伯爵の頑なな仮面や態度の向こうに潜む繊細で脆い傷付きやすさを察知したヒロインは、心が優しいだけでなく聡明だ。
互いに心に傷を負う二人が運命に導かれるように出逢い、結ばれるのは偶然なのか必然なのか。
読後に爽やかで優しい気持ちになれた。
☆再会のクリスマスから 評価☆☆
この二人が互いを想い続ける関係は、まさに「大人の純愛」にふさわしいだろう。
ただ、初恋に破れた(実際には違っていたのだが、ヒロインはそう信じ込んでいた)女性が別の男性と結婚し、夫の浮気で家庭が破綻、元彼と寄りを戻すというのは、ありきたりメロドラマ展開のように思える。
前の二つの作品が良かっただけに、私的には物足りなさを感じた。 -
Posted by ブクログ
マダムMは、周囲の人間が皆すり替えられた、とおもっている。
シャルル6世は、自分の体がガラスでできていると思っている。
レア=アンナ・Bは、国王に寵愛されていると思っている。
なんだ、頭がおかしい人間の話か、そう考え、話を単純化して終わらせてしまうなんてノンノン。
彼彼女らは本当にそうだと信じているのだ。
私が見る世界とあなたが見る世界が異なるように。
妄想は楽しい。
夢女子(アニメや漫画等のキャラクターや現実の人物のうち「推し」(好ましく応援したい者)を愛し空想の中で楽しむ女性のオタクの一)と何が違うのか?
マインドワンダリングとの明確な違いはあるのか?
私はそれを知りたいと思った。
本書で扱われるのは18~20世紀に実在した患者たちである。
序章にあるように、妄想はありふれた現象で、良識と信じるリアリティがいかに薄弱かを知らせるという。
例えば、冒頭で紹介したマダムMは離婚をした。
カトリックでは認められていなかったが、やっと制度が復活した頃のことだそうだ。
当時は、女性が男性と同じ立場で権利を主張することが難しかった。
彼女が逃げ込んだのは、自分が自分らしくいられる自由な世界だったのかもしれない。
レア=アンナは、自らが愛する人に愛されていると信じていた。
客観的にはそうではない。
彼女の行動は今ではストーカー行為と呼ばれる者、とするのが一般的な見方だろう。
しかし、ここで疑問が生じる。
誤った思い込みに基づく行動を正当化する理由は何なのか?
本書で紹介される人々は誰かに笑いものにされるためにここに収められたのではない。
これらの人々が信じた、あるいは住んでいる世界は現実世界の時代の移り変わりや抑圧など、社会の歪みをうつしている。
彼、彼女らを通し、何を感じ取るか。
それにより私たちは自分の心を深く探究し、他人の心を想像することが可能となるだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ話がますます大きくなって行きアクションも激しく、特に中盤の戦いのシーンは延々と続く。メラニー対保安官+ナタリー+ソール+黒人ギャング対FBIという熾烈な戦い。ただ文章だと何が何だか分かりにくい。それにいい加減バンバイアは簡単に死なないと分かってるんだから、狙撃すればいいのに、とか突っ込みが…。
なんと保安官が死んでしまうのは意外!
そして三カ月の時が流れそれぞれの旗色が鮮明になってくる。
バーラント+トニー+マギーvsナタリー+ソールvsメラニーvsボーデン、という不思議な戦いか?
筆力はあるからグイグイ読んでしまうが、時制は入り乱れるし、登場人物が次々に出てくるし、舞台は飛ぶし、細切れに場面転換がなされるので、切れ切れに読むには向いていない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「雪嵐」あたりに比べると文体も違って、こちらは「ハイペリオン」などのドラマに近い。
ストーリーはドラキュラ同志?の抗争によって巻き込まれた一般人の殺人事件を追う、保安官、被害者の娘、かつての被害者の3人の物語となる。
骨子はドラキュラものとなるが、そこがキングの様に壮大なドラマになり、クーンツの様に追うものと追われるものの戦いになる。
しかもドラキュラ側も二手に分かれ、人間側も様々な思惑でいくつにも分かれているので複数の視点で物語が同時進行しててややこしい。
時々戸惑うこともあるが、圧倒的な筆力でグイグイ引き込まれていく。
上巻だけでも相当なページ数でスカスカの日本の小説の3冊分くらいありそう。
逃げるドラキュラ、ドラキュラの組織、その殺し屋、保安官&被害者の娘、精神科医、FBI、モサド、が入り混じって雄大なストーリー。
ささげてある一人にクーンツの名前があるし、作中で主人公が好きなハードボイルト作家でウェストレイク、パーカーが上がってるの面白い。
映画の俳優の名前なども結構散りばめられてて豪華絢爛。