【感想・ネタバレ】妄想の世界史 10の奇想天外な話のレビュー

あらすじ

「私の身体はガラスでできている」
妄想――それはただの思い込みか、深刻な病か、
それとも、無限の想像力が編み出した究極の「生存戦略」なのか。
史実に見る、10の奇妙なケース。

「妄想」は当事者以外には奇妙でおかしなものだと思われがちだが、
過去の記録に注意深く目を凝らせば、驚くほど日常的で役立つことがわかる。
そこには実に巧妙かつ切実な、生き延びるための心理的作用が働いているのだ。
ファンタジックな世界への逃避に見えたとしても、本質的な意味においては逆で、
妄想とは、個人が現実世界と関わっていくための、必死の「戦略」なのである。
英BBCで10シーズン続いた人気ラジオシリーズ”A History of Delusions(妄想の歴史)”の制作者が、文化・社会・宗教・精神医学の観点から「妄想」を読み解く、壮大な歴史絵巻。
人間の歴史は、百花繚乱の「妄想」に満ちている――!

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Posted by ブクログ

マダムMは、周囲の人間が皆すり替えられた、とおもっている。
シャルル6世は、自分の体がガラスでできていると思っている。
レア=アンナ・Bは、国王に寵愛されていると思っている。
なんだ、頭がおかしい人間の話か、そう考え、話を単純化して終わらせてしまうなんてノンノン。
彼彼女らは本当にそうだと信じているのだ。
私が見る世界とあなたが見る世界が異なるように。

妄想は楽しい。
夢女子(アニメや漫画等のキャラクターや現実の人物のうち「推し」(好ましく応援したい者)を愛し空想の中で楽しむ女性のオタクの一)と何が違うのか?
マインドワンダリングとの明確な違いはあるのか?
私はそれを知りたいと思った。
本書で扱われるのは18~20世紀に実在した患者たちである。
序章にあるように、妄想はありふれた現象で、良識と信じるリアリティがいかに薄弱かを知らせるという。

例えば、冒頭で紹介したマダムMは離婚をした。
カトリックでは認められていなかったが、やっと制度が復活した頃のことだそうだ。
当時は、女性が男性と同じ立場で権利を主張することが難しかった。
彼女が逃げ込んだのは、自分が自分らしくいられる自由な世界だったのかもしれない。
レア=アンナは、自らが愛する人に愛されていると信じていた。
客観的にはそうではない。
彼女の行動は今ではストーカー行為と呼ばれる者、とするのが一般的な見方だろう。
しかし、ここで疑問が生じる。
誤った思い込みに基づく行動を正当化する理由は何なのか?

本書で紹介される人々は誰かに笑いものにされるためにここに収められたのではない。
これらの人々が信じた、あるいは住んでいる世界は現実世界の時代の移り変わりや抑圧など、社会の歪みをうつしている。
彼、彼女らを通し、何を感じ取るか。
それにより私たちは自分の心を深く探究し、他人の心を想像することが可能となるだろう。

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2024年09月11日

Posted by ブクログ

難しくてよく分からない部分が多い。
精神病や欧米の歴史に詳しい人ならより楽しめると思う。
でも説明が丁寧なのでド素人の自分でもなんとなく概要は理解できた気がする。

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2024年09月11日

Posted by ブクログ

ジャケ読。まあ、興味深いというか、。古い精神科の医師の記録の客観記録的なものに、当時の時代背景などを書き加えている。
1918年マダムM認知疾患、すり替えられた家族。1793年ジェームズ・デイリー・マシューズ、凄腕スパイ妄想。1640年ロバート・バートン、鬱文学者。1548年フランチェスコ・スピエラ、宗教的絶望。1382年フランス王シャルル6世全身がガラス化する、ガラス妄想。1786年マーガレット・ニコルソン自分が正統な女王という妄想。1793年医師フィリップ・ビネルが経験した、自分の首がギロチンで落とされたと妄想する人々が同地域で多数でた例。1831年あたり、ナポレオンの死後に多数出てきた、自称ナポレオンたち、複製ナポレオン現象。1874年否定妄想、悪魔憑依妄想、自分は死んでいる妄想。1920年レア・アンナ・B、エロトマニア

妄想を生み出す人の妄想が、ユニークではなく、その当時のそのエリアで多発していたり(逆に言うと珍しくない妄想)、逆に非常にユニークでありえないのに、リアルであるかのようなディティールまで設定されつくしていたりと、非常に興味深い。

ちょっと茶化したタイトルではあるが、
精神医学の昔のカルテの記録的な真面目さを感じる

A History of Delusions
The Glass King, a Substitute Husband
and a Walking Corpse
by Victoria Shepherd 2022

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2023年03月26日

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