神林長平のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
読んだのは光文社版。多元平行宇宙横断探査機の、本体そのものではなく言語発生機であるところの、名づけて「迷惑一番」と呼ばれるもの。機械でありながら非常に脳天気な彼が多元平行宇宙を飛び回り言語記述していく物語と、彼の物語に巻き込まれた(と言える)脳天気な宇宙戦闘機パイロットたちの物語が、ごくごく軽いテンポで描かれる。よく考えたらシリアスな状況でありシリアスな設定なのに、“脳天気”をキーワードに軽く描かれているのが、しょーもなく楽しい。何より「迷惑一番」が可愛らしくて読んでいて気が抜ける(笑)。
言語発生機が編み出す言葉が現実を作る、というのはいかにも神林的な目線だが、そこに加えて、各多元平行宇宙に存在するそれぞれの言語発生機が作る物語はそれぞれに違う(から、ある宇宙で描かれた現実は、他の宇宙ではただの「お話」になる)という結論が面白い。冒頭ページの「生きている限りこの世はある この世の主人公はいつでも私だ」という言葉が、まさにこの作品のテーマなのだろう。ストーリーの軽やかさを楽しむもよし、テーマについて考えを巡らすもよし、神林エンタメらしい一冊。 -
Posted by ブクログ
神林長平、第二短編集。「スフィンクス・マシン」「愛娘」「美食」と、前半三篇はどれもじわじわと怖い話で、後味が悪いというか、読後もかなりダメージが残る。後半三篇も怖いと言えば怖いのだが、神林作品らしい“夢”のような雰囲気を持ったSFで、個人的にはこちらのタイプの作品の方が好み。特に、表題作「言葉使い師」は、二人称小説というスタイルの珍しさがまず印象的で、かつその二人称スタイルが腑に落ちるラストがとてもいい。
そして、どの作品でも非常に独特なSF的世界設定が敷かれているが、そのどれもが読んでいる内に違和感がなくなる自然な描かれ方で、いつものことながら凄いSF作家だなあと感じ入る。どの世界も、我々が生きる世界の未来の姿として十分にリアルで、実際にはこの世界はどの選択肢を選んで進んでいくのだろう?などと考えてしまったりも。